卵の孵化と誕生祝い
研究所にて。
孵化装置の内部温度が急激に上下する様子を俺たちは眺めていた。
牙城と這崎はモニターに釘付けになり、残りの部隊のみんなは孵化装置を眺めている。
孵化の時は近い。
「これくらい活発になっていれば、殻を破るのももうすぐだ」
「ようやく生まれるのね」
二人もようやくモニターから目を離し、卵の実物のほうを見る。
誰もが今か今かと待ち構える中、ドラゴンの孵化が始まった。
殻を内側から叩いたり、ひっかいたりする音が聞こえ、卵自体が揺れ始める。
音と揺れは次第に激しくなり、その内側から外に出ようとする者の力強さが見て取れた。
そしてついに殻は破れ、砕けた卵殻の破片が散る。
バキバキと音を立てて卵から孵化したのは、小さくとも悠然とした姿を見せる一体の龍。
ドラゴンベイビーがこの世に誕生した。
「凄いわね、生命の誕生って」
「えぇ、そうね」
「とっても素敵ですー」
生命の神秘に誰もが見とれていた。
「クアアァアァア」
あくびをするように雄叫びを上げ、ドラゴンベイビーは俺たちを見渡した。
そしてここから出たいとでも言いたげに孵化装置に爪を立てる。
「あら、大変」
牙城が駆け寄って孵化装置を開くと、ドラゴンベイビーは勢いよく飛び出してしまう。
小さな翼を広げて羽ばたき、俺の元まで飛んでみせた。
「おっと、なんで俺の所に」
「そりゃ同じ力を持ってるからだろ?」
「惹かれ合ってるのね、興味深いわ」
「クアァアアァア!」
「そういうこと」
俺のうちにあるドラゴンの気配に誘われたか。
「なぁ、この子の名前は?」
「あぁ、もう決めてあるの。アイルよ、翼って意味」
「なるほど、アイルか。いい名前だ」
下顎を撫でてやると、気持ちよさそうに目を閉じる。
「ほら、返すよ」
そのままアイルを牙城に渡し、一息をつく。
「よし、孵化は終わった。この後は氷龍の肉でパーティーだ」
「ドラゴンの孵化祝いにドラゴンを食べるの?」
「いいだろ? それはそれ、これはこれだ。さぁ、移動しよう」
こうして今回の件も一件落着、幕が下りる。
「そうだ。この件の論文を書いたら、あなたの名前を載せるわ。いいでしょ?」
「あぁ、光栄だ。有名になれる」
有名になればあいつが向こうから見つけてくれるかも知れない。
今はまだその時じゃないかも知れないけれど、きっといつか再会できる。
その日がくるのを信じて、今はパーティーに向かおう。
それでまた一歩、再会に近づける。
「どうかした?」
「いいや、今行くよ。日下部」
そうして俺はこの場を後にした。
お疲れ様でした。
近いうちにまた新作書きます。
その時は読んでいただけると幸いです。




