Lastステージ4:虎ノ国【タイガーランド】③
【白虎殿】ーーーそこでは、毎夜毎夜盛大なパーティが開かれるという。
そして、そこに招待されるのは、様々な種族の王族だったり、有名な戦士だったりする。
まあ、実際は政治的な背景もあるので、各種族ごとに強固な連携を築き上げておきたいというのもあるのだろう。
中でも世界魔法連合のTOP陣クラスの人脈を知人に持つ者というのは、特に好かれる傾向があるようだ。
それだけ、世界魔法連合という組織は巨大な組織だということを改めて思い直すのだ。
いや、まあーーーかつての儀長たちのような横暴な政権は無かったことには出来ないのだけど、だからこそ今の組織はほぼ完成形と言ってもいいほどの機能なのだ。
さて、そんなパーティに参加するにはどうするかと言えば、招待される……または、1日1度行われるコロシアムにて優勝するしかないらしい。
そんなこんなで、俺たちはコロシアムの会場へと向かうのだった。
「いや~しっかし、コロシアムで戦いとは……世は平和になっても、人々の娯楽からは戦いが離れられないのかね……」
「まあまあ翔琉。今回のは、相対的に見て強いものをスカウトするって思惑もあると思うから、そんな娯楽ってよりかは、就職活動みたいなものなんだと私は思うわよ」
「ふーん……なるほどな」
政治的な背景があるのならば、逆を言えば自らをアピールできるチャンスでもあると言うことか。
一攫千金もあながち夢でもないーーーそういう風に思わせているこの大会事態があまり好きとは言いがたいな。
1度に大量の贅沢は、心を持った者をダメにする。
たまにあるから、本当に大切に思える。
それを、分からなくなったとき……心ある生物は心を奪われた化け物に成り果てるのだと、俺は思うね。
「さて、着いたわね。コロシアム会場」
目の前にあったのは、巨大な闘技場。
まるでコロッセオのようなその出で立ちだ。
まさに、闘技場ーーーという感じだ。
「さてと、受付は……あそこだな」
正面入り口のすぐそばに、大々的に受付現場が設けられていた。
だが、あまり人がいないなーーー。
「やっぱり、参加する人少ないのかな?」と俺は言うが「うーん、どうだろうね。まあ、とりあえず行ってみるか」と、ボルは言う。
まあ、実際に行ってみないと分からないものか。
「俺が参加してくりゃいいのか?」
「まあ、そうね……翔琉なら確実だな。招待状は1度に5人まで入れるから、問題はねーしな」
「分かってると思うけど、神魔法は使用禁止だからね!」
「はいはい……」
そんなこんなで、俺はディルの発言を簡単に流して、受付へと向かうのだった。
「すみません、参加したいんですけど……」
と俺が言うと、ギロリと一瞬睨み付けた虎獣人は、急にデレッとした顔になって頬を赤めた。
「あ、あ、あ、はい……えっと、お名前をここに……」
「名前をここですか?うーん……書くもの持ってないんだよな……」
「でしたら、私のを使ってください♪」
そういって、紳士にペンを受付の虎獣人は貸してくれた。
なんか、やたら手をベタベタ触られたんだけど……。
「えっと……」
流石に本名で天野翔琉って書くとダメだよな……。
偽名か……。
まあ、女子の名前っぽいからって理由で、イミナの名前でも借りとくか。
イミナ……っと。
「はい、これでいいですか?」
「は、は、は、はい‼ありがとうございます‼」
「試合開始は何時からですかね?」
「試合開始は、あと2時間ほどーーーつまり、15時ですかね。開始10分前には会場入りしていただければ、問題ありませんよ♪」
「あ、はい。ありがとうございます。では……」
と、俺が立ち去ろうとすると、虎獣人はガバッと座っていた椅子から立ち上がって、俺の手を掴んだ。
「あ、あの……もしよければ、このあとお茶でも……」
この発言を、遠くから聞いていたディルは笑い、そしてライとボルはぶちギレていた。
ボルはずかずかとこちらに向かって歩いてきて、俺と虎獣人の繋いでた手を振りほどいて「うちの嫁になにか?」とギロリと睨み付けた。
負けじと受付の虎獣人も「口説いてんだから邪魔すんじゃねーよ」と、逆ギレして応戦する。
なんだこの修羅場は。
「うちの嫁にちょっかいかけるのやめてくれねーかな?」
「なにを!俺はイミナさんに一目惚れしたんだから、寝とるって決めたんだ!」
「てめぇ、旦那の前で寝とるとか発言するの最悪だからな?てめぇは、俺をキレさせた……覚悟しろ」
「やれるもんなら、やってみやがれ!」
うわ、ヤバイ。
喧嘩が今まさに始まりそうだったので、俺は思わず二人の間に立った。
そして、ここはあえて女の子らしく、あえて女の子らしくこの発言を言ってみた。
「私のために喧嘩するのやめて‼」
案外女子でも中々言わない台詞を俺は言ってしまった。
男なのにーーー。
その発言を聞いたディルは、余計に爆笑していて、ライは鼻血を流して倒れている。
そして、ボルと受付の虎獣人は顔を真っ赤にして、デレッとした顔をして俺を見ていた。
なんだろうな……俺って虎にモテるのか?
周りの受付の虎獣人もデレッとした表情をしていたし、通行していた虎獣人も思わず立ち止まってまじまじと俺を見てたし。
なんなんだろうね。
「申し訳ありません。主人がおりますので、お気持ちだけ受け取っておきます。じゃあ、失礼しますね」
にこりと、受付の虎獣人に微笑んで、俺はデレッとした表情をしているボルを連れて、ディルたちのところへと戻るのだった。
「……絶対寝とってやる……」
なんて、怪しい言葉聞こえませんでした。
気のせい気のせいーーー。
【ーそして2時間後ー】
「そろそろ時間だね……んじゃ、行ってくるわ」
俺はディルに貸してもらったドレスのまま、あの戦いの舞台へと向かうのだった。
女装姿で戦闘とか、なんか言いたいこといっぱいあるけど、ジンライを救うためだ。
我慢我慢ーーー。




