5thステージ43:邪神の最期
ビッグバンとビッグクランチ……。
机上の空論同士の衝突は、予定通り筒がなく行われ、発動と同時に互いに互いを殺して、消滅した。
世界崩壊は、見事見事に成功した。
良かったと喜ぶべきなのだろう。
だがまあ、俺は目の前の光景のせいで素直に喜べなかった。
何故ならば、俺を殺そうとした邪神アマギは、自身の父であるヨルヤ=ノクターンによって、後ろから刺されて、瀕死だったからだ。
ポタポタと、生温かい血が俺の顔に流れ落ちる。
 
「くそ親父……」
「許せ息子よ……これが父からお前に与える最初で最後のしつけだ……」
「……初めて、あなたに……こうして……何かを……教えてもらった……かもしれない……」
邪神は笑っていた。
血が流れ落ちる中でも、平然とにこにこと。
その様子を、始まりの神ファーストは、涙ながらに見守っていた。
そして、ヨルヤ=ノクターンも……涙を流していた。
「許せ息子よ……俺のせいで、お前を歪めてしまった……俺のせいで、お前は愛を知らずにここまで来てしまった……」
「くそ親父……いや、お父さん……安心して……もう、俺は死ぬから……」
「ファースト‼母親として、お前もなにか言え‼」
「……アマギ……」
ファーストは静かにアマギに寄り添う。
そして、ヨルヤ=ノクターンは、差した腕をゆっくりと抜き、そのままファーストに息子アマギを引き渡す。
静かに……静かに……アマギは、母親に抱き抱えられたまま、その表情が柔らかくなっていった。
「お母さん……ごめんなさい……こんなことになってしまって……」
「本当よ……反省してるなら……反省してるなら……生き延びなさいよ、アマギ……ちゃんと……ちゃんと、今度は家族みんなで、暮らしたいんだから……今度こそ、1からあなたのことをちゃんと見て育てたいんだから……生きてよ……」
「あは……ははは……うん……そうだね……」
「……アマギ……」
始まりの神ファーストの母心、悪魔神ヨルヤ=ノクターンの初めての父心。
子心的に、その心が通じているのか分からない。
だけど、少なくともアマギは、嬉しそうだった。
父親に貫かれてしまったけど……母親に説教されたけど……それが、幸せだと言わんばかりに。
反抗期の子供の、長い長い反抗期はこうして終わりを告げた。
そして、アマギの邪神としての役割も……これでおしまいだ。
邪神の最期……それは、母と父に看取られながら、静かに迎えたのだった……。
さようなら、邪神アマギ……。
 




