5thステージ40:仲間の力
考えても考えても、そんなこと思い付かない。
だって、そんなのは過去の事例にも無いことだ。
人間は未だにビッグバンの謎を解明できていない。
何が初めで、何が起こったのかーーーそれを具体的に、要点を細かく取りまとめ、誰かに教えてもらいたいと思うところだ。
「ざっと、残り30分……ビッグバンが、始まるまでの時間を、楽しもうぜ、天野翔琉♪」
と、アマギは笑っている。
狼狽して怖がっている俺にーーー。
落ち着け俺。
焦ったら負けだ。
それも、世界ごと……。
そうだよ……残り30分もあれば、なにかできるはずだ。
考えろ、考えろ俺。
「だから、自分一人で考えるなっていったでしょ?翔琉……」
そう言って俺の肩に手を置く人物がいた。
後ろを振り向いたとたん、それが誰の手なのか、分かった。
いや、それ以前に俺はこれが誰だか分かっていた。
そんなことを言ってくれたのは……叱ってくれたのは、思えば彼女だけだったかもしれない。
時空間魔法の使い手にして、時の監視者という役割を使命として与えられた少女ディル。
そして、その後ろには、俺が守りたいと思って絶対神域をかけておいた場所から出てきていた、俺の仲間たちがいたのだった。
「翔琉……あなたには、私たちがいるじゃないの」
ディルのこの言葉に俺は涙が溢れそうになった。
どうして俺は、毎回毎回自分一人で背負い込もうとするのだろうか。
どうして俺はーーー彼らを頼ろうとしなかったのか。
天野翔琉という愚か者を慕う仲間たちを、愛しいと思うからなのだろうか。
愛しいと感じて、大切だと思うからこそ、彼らをみすみす危険な目に合わせまいと思ったのだろうか。
なんて傲慢で、なんて間抜けな話なのだろうか。
中学1年生の分際で、偉そうな気になっていた。
彼らのこれまでの役割や、その生き方を否定していたーーーそんな気がしてたまらなかった。
俺は帰りたいと願っていた。
だけど、中々帰れなかった。
それはなぜなのか……。そりゃあ、邪魔が何度も何度も入っていたからだ。だが、そのお陰で仲間が増えていった。そのお陰で、新しい発見もできた。そのお陰で、実験以外に楽しいと思えることに出会えた。
俺の夢は【不老不死の薬】の開発だった。魔法に頼らず、能力に頼らずーーー化学の力でなし得て見せる。それが、俺の願いだ。
だが、俺はその夢を断念した。
それは、異世界での出来事がきっかけだったからだ。
不老不死の薬の開発によって、地球規模の戦争にまで発展してしまい、多くの死者、多くの犠牲者、多くの悲しみを見てしまったからだ。
異世界ーーーいや、もしも不老不死の薬が開発されていたらの世界だ。
つまりは、未来の話なのだ。
そんな未来を変えたくて、俺は夢を断念した。
違う目標を設定したかったけどーーーこれまでの夢が根底から破れたショックというのは、意外と心にダメージを与えていた。
だから、心のどこかで、この世界はどうなってもいいなんて思っていたかもしれない。
一人で悩み、一人で苦しみ、一人で失敗した。
それなのに、彼らは優しく手を差し伸べてくれている。
こんなダメでどうしようもない、ワガママで傲慢で偉そうな若僧な人間にーーー。
「翔琉‼」
「翔琉ちゃん‼」
「翔琉さん‼」
「翔琉くん‼」
「「翔琉‼」」
みんなが俺を呼んでくれている。世界崩壊へ魔方陣を発動させてしまった、俺なんかを。
俺は本当に馬鹿だな。
仲間を守ろうとして、結果として守られてるじゃん。
最初から、対等な立場で話をしてくれてる仲間なのにーーー友達なのに、俺は上から物を言っていたんだな。
「みんな!ごめん!俺のせいでこんなことに……謝って許される事じゃないと思うし、みんなに今まで偉そうにしていたことも謝る……勝手で悪いけど、いつもワガママばかりいってるけど、みんな……俺に、力を貸してくれ……」
「「「当たり前だ‼」」」
こんなに優しい仲間たちを、俺は絶対に救って見せる!
一人でじゃない……みんなでだ!
もう、邪神相手に敗北とかそういうのは気にしない。
無様に負けても、完全敗北に終わってもいい‼
だけど、この世界を終わらせるのは嫌だ!
みんなと仲良くしていたいーーーみんながいるこの世界を守りたい‼
さあ、俺の過ちを正そうーーーみんなで!
あの魔方陣を阻止する‼
そして、邪神との因縁を終わらせよう。




