5thステージ39:天野翔琉vs邪神アマギ⑤
世界崩壊。
それは、ファンタジー作品としては王道なのだろう。
だがまあ、もっとも定番なのは、ラスボスが世界征服がうまくいかないからぶっ壊してしまえって感じなオチであったり、某無が大好きなラスボスのように、単純に世界を無にしたかったから崩壊させたとかーーー。
だから、今回のようにーーー物語の勇者的なポジションであるところの俺が、誤って世界崩壊への鍵を解いてしまったことについては、定番なのだろうな。
「……なんて、呑気なこと考えてる場合じゃねぇ‼」
先ほどの魔方陣……あれは、世界崩壊のための儀式だったということか?
世界を崩壊させて、いったいなんだと言うのかーーーあ、そうか。
あいつは、諦めたのか……俺に勝つと言うことをーーー敗北の運命から抗えないという現実に。
あいつは、投げ捨てたんだ……自身の命を、そして未来を。
「とか思っちゃっても、発動させたのはお前なんだぜ、天野翔琉……」
にやにやとへらへらと笑みを浮かべている。
そりゃそうだろう。
自分の策略によって、一番嫌いなやつが一番嫌いそうなことをやらせたーーーそりゃあ、ご満悦だろうな。
大嫌いなやつが破滅して、破綻して、なにもかも世界と共に崩れ落ちる……。
それが、邪神アマギが考え付いた【残酷な勝利】なのだろうな。
主人公によって世界が終わる……これほど、バットエンドというものも無いだろう。
「アマギ……さっきの魔方陣は、攻撃魔法でも、防御魔法でも、回復魔法でも、なんでもなかったんだな……」
「ふふん♪その通り♪さっきの魔方陣はさ、この全ての世界が誕生したときに……否、全ての始まりとも言える【ビッグバン】を発生した時の魔法でね……そこで、回復中の俺の両親が、全てを生み出したときに使った魔法の技法だ。別称は、創造魔法……全てを1から作り直す魔法なのさ♪いやー、助かったよ天野翔琉。実は、あの魔方陣の数列がどうしても解けなくてね♪どうしても俺には、知識が足らなすぎるようだ。人間の数学さえ理解していれば、解ったのかもしれないけど、そんな底辺の生物の知識を応用したとあっては、神も名折れと言うものでしょ?まあ、あと少しで世界は全て消えるわけだけど……崩壊予告みたいなもので、この世界の一部をそれらしく壊していってるよ♪すごいでしょ!すごいでしょ!」
「……元・全知全能の神の癖に、そんな問題も解けないなんて滑稽だね」
「でも、そのお陰で天野翔琉が、この全てを1から作り直す魔法を発動させてくれたならば、こちらとしてはうれしいのだよ♪お陰で、俺の勝利は確定した♪というか、俺はお前に勝てた♪見事に罠に嵌めて、見事に勝ち誇った♪ざまあみあがれ、天野翔琉。お前は負けたんだ。お前のせいで、世界は終わるんだ。世界が終わるのはお前のせいだ。ざまあみあがれ、ざまあみあがれ、ざまあみあがれ、ざまあみあがれ、ざまあみあがれ、ざまあみあがれ、ざまあみあがれ、ざまあみあがれ、ざまあみあがれ、ざまあみあがれ、ざまあみあがれ、ざまあみあがれ、ざまあみあがれ、ざまあみあがれ、ざまあみあがれ、ざまあみあがれ、ざまあみあがれ、ざまあみあがれ‼」
反論できなかった。
情状酌量の余地もなく、俺が悪いのだ。
魔方陣を発動させたのはアマギだった。
だが、その魔方陣を稼働させてしまったのは俺だ。
むやみに、解いてしまった問題が、世界を崩壊させるものだったというだけだ。
ざまあねえな、俺。
無策に、アマギに敗北を認めさせようとして、まんまと策略に踊らされ、溺れさせられ、そして俺はとんでもないことをしてしまったわけだ。
「そうだ、勇敢の能力を……」
勇敢の能力ーーー【不可能】を【可能】にする能力だ。
だが、発動しなかった。
つまり、これは、回避することが【可能】ということなのか?
ビッグバンを阻止することも【可能】ということなのか?
いや、考えろ俺。
ビッグバン発動を、世界崩壊を阻止する方法をーーー。




