5thステージ26:悪魔は暴かれる
ジンライ。
彼は俺の最愛の子供だ。
まあ、お腹を痛めて産んだ訳ではないのだが、それでも俺の子供に変わりはない。
俺は子供が大好きだ。
純粋で何者にも侵食されていない、無邪気な心ーーー生まれもって人間と言う生き物は案外科学者向きなのかもしれない。
いや、他の生物もそうだと俺は思う。
初めて見るもの、初めてやること……それらに対して興味や意味を考える姿勢……大変素晴らしく思う。
何事にも挑戦していく姿勢と言うものを見ているだけで、やっているだけで俺は心踊る。
試行錯誤って言葉がこの世で一番素敵な言葉だと俺は思うよ。
「さて、では神様たち相手に、装備なしで挑んで勝つって言うことを試行錯誤しますかね」
俺は、子供を守らなければならない。
そのために、彼らを倒すと言う作業をしなければならない。
すまないな……ボルたち。
悪いけど、勝たせてもらうよ……‼
「ジンライ……手を貸して」
「いいよ、ママ……」
「絶対滅亡操作」
「‼」
光に包まれたジンライは、本来の力を取り戻した。
つまり、戒めの呪いを解除したのだ。
「■■ママ?魔法使えないんじゃなかったの?」
「あー、これ?うーんと、残ってた最後の力を使ってギリギリ発動できただけだよ?」
「相変わらずチートかよ……」
「でも、これで本当に俺は魔法は使えなくなっちゃった。でも、ジンライは魔法が使える……それも、神魔法が……」
「でも、俺……邪神魔法を発動させちゃったから……」
「大丈夫だよ、ジンライ。そのために、俺は冥界から戻ってきたんだ。ヨルヤ=ノクターンを脅し、ルシファーの死の罠から逃げてきたんだ……」
「■■ママ……」
「さあ、ジンライ……一緒に行こう……」
「……違う……」
え?
「違う……お前は、■■ママじゃない……」
「どうしたんだ?ジンライ……急にそんなこと言うなよ……悲しいじゃないか……」
「なんのつもりだ‼マクスウェル‼」
マクスウェル?この俺が?
「どうして……そんなこと言うんだよ……ジンライ……」
「お前が奪った■■ママの記憶……確かに、失っていた。だけど、分かったよ……お前は翔琉じゃない……‼」
「あーあ……バレちゃったか……」
うまく演じてたつもりだったのにな……。
「そうだね。ご存知、記憶を司る悪魔マクスウェル……それが俺の名前だ。よくわかりましたね、ジンライ様……」
「当然だ……俺が翔琉ママの事を間違える訳がない……子供の力を舐めるなよ、悪魔風情が……」
おっと、手厳しいね。
まったく、いつから成り代わっていたことに気がついたんだか……。
「ジンライ様。1つ伺います。あなたは、いつ気がつかれたのですか?私が、天野翔琉と代わっていたことを」
「最初からだ……。最初から、翔琉ママではないと思っていた。翔琉ママならば、まずここに来るより先にお前を探すはずだマクスウェル……だが、お前はボル伯父さんに連れられここに来た……俺の知る翔琉ママならば、そんなことはしない。まず、目標、標的を優先させる……それが、科学者だと俺は教えられたーーー翔琉ママからな‼」
「あーあ……残念だよジンライ様。このまま、騙されてここの仲間たちを倒して、私に着いてきてくれれば、そのまま冥界の方へと誘ってあげたのですがーーー仕方ありませんね。ここからは力ずくで連れていきますよ。我が主であるヨルヤ=ノクターン様の元へと連れていきますよ……天野翔琉の御子息よ……」
さあて、ジンライ……お前を、適当にぶちのめして……あわよくば、ヨルヤ様の御子息を復活させていただきますよ。
邪神と呼ばれた神……アマギをね。
一方、本物の天野翔琉はといえばーーー。
「あ、翔琉くんごめんね」
「ファースト!お前、俺の翔琉になんて事を!」
門の向こうに飛ばされた天野翔琉……といっても、門の向こう側というのは、単純にどこにも通じていない扉の向こう側……つまり、冥界のままだということだ。
そして、運悪く門の向こうには、石で出来た柱に勢いよくぶつかってしまって天野翔琉は、鼻血を出してその場に倒れていたのだった。
天野翔琉、冥界からの脱出ならず!




