5thステージ14:復讐の光
閃光矛……これさえ、これさえ発動してくれれば……。
そう俺は願うが、うんともすんとも言わず……俺は、無情に迫る色欲の悪魔ーーーアスモデウスに、いたぶられるのだった。
「おらぁ、おらぁ‼ヨルヤ=ノクターン様をガキ扱いしやがった、地罰よ‼おらぁ、おらぁ」
「うぅ…うぅ…‼」
腹を蹴られ、顔を蹴られ、腕を蹴られ、足を蹴られ、胸を蹴られ、みぞおちを蹴られ、背中を蹴られ……次第に、痛みさえも感じなくなってきた。
ぐったりと、その場に這いつくばって、今にも死んでしまいそうな位、心臓の音が耳に響く。
周りの音が、やがて聞こえなくなってきて、だんだん身体も冷たくなってきた。
神魔法【光天神】からの光治を使いたいのだが、それすら許してもらえず、未だに色欲の悪魔は、俺をいたぶる。
「■■■■■■♪■■■■■■♪」
もう、声さえも判別できない……。
翔琉ママ……。
なんで、助けてくれないの?
息子の俺が、こんなに瀕死なんだよ。
いつもなら、颯爽と現れて、飄々とした態度で相手を打ち破って、優しく俺を撫でて、傷を癒してくれるじゃないか。
翔琉ママ……。
助けて……。
俺を……助けてくれ……。
そう思い続ければ、翔琉ママが助けに来てくれると思っていた。
だが、翔琉ママが俺を助けにくることはなかった。
そりゃそうだ……冥界に監禁されてるのだから。
閃光矛……神魔法……。
どれもこれも、親の力を頼ってばかりいた、自分の弱さの象徴だ。
なんで、俺はこんなに弱いんだ?
弱さなんかいらない……翔琉ママさえ……翔琉ママさえ、居れば、俺はそれだけでいい。
翔琉ママが誘拐され、監禁されてるのは誰のせいだ?
悪魔たちに対して、優勢にさせてしまっている弱者は誰だ?
弱さなんかいらない。
強さがあればいい。
翔琉ママを助けて、守るためならば……。
あぁ……目の前のこの悪魔が憎い。
醜い顔の癖に……醜い身体のくせに……醜い悪魔のくせに……何で俺をいたぶってやがるんだ?
何を我が物顔で、余裕綽々にしてんだ?
憎い……憎い……憎い……憎い……。
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い‼
その瞬間……俺の身体は、黒い光に包まれた。
色欲の悪魔は、恐れて後ろに下がるが、その必要はもうないかもしれない。
何故ならばーーーその色欲の悪魔は、黒い光に貫かれて、瀕死になったのだから。
グサッと……貫いた黒き光の刃に、身体を奪われたのだから。
「……その、魔法は……」
と、言い残し……アスモデウスは死んだ。
そして、黒い光は消えて、俺の意識も失われたのだった……。




