5thステージ12:夢は悪の手の内
「始まりの神に会おう」
そう俺がーーージンライがたどり着いた答えは、天野翔琉……つまるところ、今回誘拐されてしまった母親が出てきたあの夢を信じることにした。
翔琉ママが、他人を頼るなんて事をーーーいや、身内か。
身内を頼る……ましてや、息子である俺を頼ってくれるだなんて、本当に珍しいことなのだが、なんだかうれしい限りではないか。
やっぱり、俺と翔琉ママは運命の糸で結ばれた家族なんだな。
「そうと決まれば……」
と、俺は部屋の外へとこっそりと出て、ライたちがいる居間をどうにか通り抜け、外に出た。
久々の外の空気は、清々しいとは思ったが、やっぱり翔琉ママがいないからか、爽快感というか、解放感がなかったなーーー翔琉ママがいてこその、俺の世界なのだから。
「さて……んじゃあ、行くか……始まりの神が眠るあの土地へ……」
俺は空間魔法を使って、始まりの神が眠る場所ーーー創始神墓地へ。
上空に浮かび上がるピラミッド。
そして、辺り一面の花畑と、ピラミッドの下にある湖ーーー。
ここは、創始神墓地という始まりの神という、この世界を……この世界全てを生み出したとされる神が眠る場所だ。
眠る場所……とはいっても、始まりの神は別に眠ってはいない。
湖の反対側にある裏の世界にいるだけだ。
鏡のような、全てが逆になる世界ーーー。
というのも、始まりの神は、生前に戦った【パラノイア】という化物と相討ちになった際に、自身の遺体を……御神体を、悪用されまいと、上空に浮かび上がるピラミッドへと隠したのだが、実際は、湖に見せかけた裏の世界へと逃れていただけだったのだ。
だが、まあ……パラノイアにやられた傷は相当深いものだったらしく、胸に穴が空いてしまった状態で、回復の時をーーーまたは、別の肉体に移る機会を狙い、結晶の中で眠りについたそうだ。
でも、つい先日、その眠りから覚めた。
裏の世界でのルールを応用した、とある女性によって、始まりの神の眠りは覚めた。
なので、今現在……始まりの神は、この裏の世界で絶賛活動中ということなのだった。
「よし!始まりの神に会いに行こうか」
と、俺が湖にいざ行かんと言わんばかりに飛び込もうとしたその時、始まりの神が偽装埋葬していたピラミッドが粉々に爆発した。
俺はあまりの衝撃的な出来事に、目を見開いて、ただただその場に、飛び込もうとしたポーズで固まってしまっていた。
だが、すぐにそのポーズは、戦闘体勢のポーズへと変わった。
何故ならばーーー粉々になったピラミッドが、ついさっきまであった上空に……恐ろしい気配をした悪魔がいたからだ。
「あらん?あなたが、天野翔琉様の息子のジンライ様かしらん?」
と、悪魔は言う。
爆煙のせいか、姿はよくわからないが、しゃべり方では女性か?
女の悪魔……悪魔の女?
どの表記でも、すげぇ恐い感じな気がする。
「お前は誰だ?」
と、俺が問うと、その悪魔は爆煙から飛び出て、その姿を現す。
???
悪魔……なのか?
前身真っ白の、純白のスクール水着を着た、金髪の少女がそこにいた。
「私はん、ヨルヤ様にお仕えする、冥界四大鬼族の1人……アスモデウス。よろしくねん、ボウヤん」
「アスモデウス……確か、翔琉ママのいた世界では、色欲を司る悪魔だったかな?」
「あらん♪よくよく、ご存じねん♪誉めてあげるん♪」
だから、あんな格好してるのか。
どっからどうみても、変態にしか見えないからなーーー。




