5thステージ7:冥界四大鬼族
お前は誰だーーーディルは確かに翔琉ママに……いや、翔琉ママの姿をした人物にそう言った。
翔琉ママ……いや、翔琉の姿をしたそいつは、やがて自らの姿をグニャリグニャリと、ごきごきと、ぐちゃぐちゃと変形させて、白い髪にロン毛長身長の悪魔に変身した。
「おやおや、視覚と思考を弄っていたのに……よくぞ、見抜けましたねーーーと、誉めておくべきなのでしょうね」
そう言ってペコリと、お辞儀をした。
だが、こんなにも礼儀正しい態度をとったところで、彼女のーーーディルの質問には、いっさい答えていない。
今ので分かるのは、こいつは、翔琉の振りをしていたことと、視覚と思考を操る事ができるってことだけだ。
「もう一度聞くーーーおまえは、誰だ?」
「これはこれは、麗しのお嬢さんに何度も同じ質問をさせてしまうとはーーー始めまして。私の名前はマクスウェル。冥界四大鬼族の1人……いや、悪魔と言っておきましょうねーーー」
「……私の名前はディル……時の監視者ディルよ」
「おやおや、あなたが彼の、ヒョウ御嬢様が仰っていたディル様だとは………では、その後ろの獣どもは、もしや天野翔琉様の御子息と義理の弟ぎみで?」
「……それより、本物の翔琉はどこよーーーっていうか、私の仲間たちなにしたのよ。さっきからピクリとも動いていないのだけどーーー」
確かに……翔琉も心配ながら、ボル伯父さんたちも心配だ。
さっきから、目の前でおかしいことが起こっているのに……微塵も反応せずに、瞬きすらせずに、ただただピタリと停止している。
「おやおや、言いませんでしたか?お仲間様たちには、思考停止をかけております故……暫くはこのままでございましょうーーーそして、天野翔琉様は、我らが主が、先程連れ去っていきましたよ」
「連れ去った!?そんな、私が気がつかないなんて……」
「落胆することはありませんよ、ディル様。思考停止から唯一逃れていただけでも素晴らしいことです。しかしながら、主はその上を行くお方……あなたが気がつかなくて仕方がないことなのですよ」
さっきから、主主って……。
「あの、あなたの主って、一体……」
「おや、私の……いえ、私たち悪魔がお仕えするのは、ただ一神……悪魔神ヨルヤ=ノクターン様だけでございますよ……」
その悪魔の台詞は、俺たちの不安を確信させるに至った。
先ほどの、フードを被った少年ーーーあれが、おそらくヨルヤ=ノクターンだ。




