4thステージ5:十戒社に眠る御神体
あらかた出店を、翔琉ママと巡ったのだがーーー賞品をゲットできる場所、つまりは射的や魚掬いやくじ引きと言ったところからは、出禁を食らってしまった。
というのも、翔琉ママのゲームセンスの異常さが現れてしまったのだった。
「いやぁ……昔から、ゲームとかやると必ず勝てるし、くじ引きやると、必ず一番いいものが当たっちゃうんだよね~」
てへへっと、翔琉ママは照れている。
いや、もう強運通り越して、なにか概念的なものに愛されてるとしか言いようがないなーーーその話を聞く限り。
血の遺伝なら、俺にも似たような事になるはずだしーーーそれだけはこの【天野翔琉】という人間にのみ与えられている恩恵なのだろうね。
「そろそろ、あそこに行ってみる?」
「あそこって?」
「十戒社‼入場するためのチケットは、全員分有るわけだし……」
そうなのだ。
結果として、翔琉ママによって、この辺一帯の出店の一番上位である【金色のチケット】は、全て彼のゲームセンスと運で奪われてしまっているのだ。
だから、先程からチラチラと、出店の人達が震えながらこちらを見ているんだけどーーーごめんなさいだよ、本当に。
「十戒社ねぇ……歴史観点からも、是非とも見てみたいと思ってたのよね♪」
と、フルートはかなりのノリノリだ。
そして、情報屋のアニオンやエンも興味津々なご様子。
彼らは、知識を溜め込むがわなので、こういった体験をするということがあまりないのだろう。
特にフルートは、年中植物たちを守る仕事をしているからな。
あー、でも今日はドッペルゲンガーくんに代わって貰ったんだっけ?
あと、フィリとファイに。
最近、あそこの3人はスゴく仲がいいんだよな。
まあ、おかけでフルートも助かってるみたいだけど……。
ここで、簡単に整理しておくと、今回この冥界に来ているメンバーは、俺も含めて全部で15人だ。
俺、天野翔琉、天野狼牙、ディル、ライ、リュウ、エン、ホルブ、ヒョウ、トルネ、グラン、フルート、アニオン、そしてボルとウールだ。
だけどまあ、ヒョウは祭りの運営側らしいので、あまり一緒にまわれていないので、実質14名か。
リュウ師匠の弟子のウールさんは、種族が狼ということもあって、狼牙は人一番になついている。
そして、ウールさんも、自身に弟が出来たみたいで、案外可愛がっているのだ。
狼牙が、ウールさんに夢中になっている間は、俺は翔琉ママを独り占めできるから、ウールさん様々なのだ。
「うん、じゃあ行こうか、十戒社へ♪」
と、翔琉ママを先頭に、俺たちは向かう。
巨大で古風な、東洋風の城ーーー十戒社へ。
十戒社……古風な建物で、翔琉ママのいた世界の武将って過去の人物たちが建てた自身の威厳を象徴するために建てた城に似ていると、言っていたな。
俺も、翔琉ママから生まれたわけだから、翔琉ママのいた世界の記憶は断片的に存在するんだけど……まあ、確かに……城と言えば城だな。
でも、普通悪魔と言えば、西洋の居城ってイメージが強いって、聞いたんだけど、全然違うね。360度違うね。
入口付近の鳥居前には、2人のーーー2匹の悪魔が立っていた。
あからさまにこちらを見下している様子で、低庶民の来る場所じゃないとか、部外者がこちらにくるんじゃねーよ、なんて思ってそうな顔でこちらを睨んでいた。
だけど、天野翔琉……つまるところの、俺の親を見るときの顔だけは違った風に見えた。
いや、見えたって言っても、なんだか一瞬だったように思えたので、あまりうまくは表現できないけれど……なんというか、恐れている。
しかも、それは天野翔琉本体ではなく、天野翔琉の間接的な繋がりを……なにかとの繋がりに脅され、怯えているような……そんな感じがした。
「すみません、中に入ってもいいですか?」
と、翔琉ママがチケットを見せると、悪魔たちは「どうぞ」と、すんなりと通してくれた。
いや、だけど俺はさっきの悪魔たちの表情が気になる。
なぜ、あそこまで怯えたんだ?
何に、怯えているんだ?
「どうしたジンライ。顔が、楽しそうじゃないぞ」
と、狼牙は彼なりに心配してれていたようで、こちらに歩み寄ってきた。
一方、翔琉ママたちは中へと入っていったので、俺は狼牙を連れて、翔琉ママたちが見えなくなったところで、話をした。
先ほどの悪魔たちの表情の話を。
すると、狼牙も似たような事を思ったらしい。
狼牙も、他者の顔色を見て一時期生活していたので、その辺は敏感だったらしい。
なにか嫌な予感がするーーーそう、俺たちは感じていた。
この、悪魔の神が眠る社には、なにか秘密があるのかもしれないーーー。




