5thステージ4:悪魔のくじ引き
悪魔のお祭りってことを聞いていたので、どんな生々しい儀式とかそういうものが溢れているのか、若干期待していたのだけれど……なんだか、いたって普通なのかな?
翔琉ママ曰く「俺の世界の普通のお祭りみたいだ」とのことだ。
浴衣姿で歩く悪魔たちや、出店を出して、食べ物を売る商売をやったり、なんかよく分からない不気味な魚を掬う遊びや、拳銃を使って的を狙う遊びなどなどーーー。
「なんだか、実際に元の世界に、戻った気分だよ♪」
と、翔琉ママは笑顔だった。
久々に、心から笑っている翔琉ママを見た気がする。
なんだか、最近は、周りを不安にさせないように無理に笑っていた気がするからなーーー。
「翔琉ママのいた世界で、翔琉ママはこういうことをして遊んでいたのか?」
「ん?いや……俺は研究研究の毎日だったから、あんまし行けてなかったな……小学生ーーーあ、小さいときには祭りがあったときに行ったりとかしてたけど、大抵のお店から出禁食らっちゃって……」
てへへ、と照れぎみに言う翔琉ママは可愛らしいけど、何をやったら出禁を食らうんだろうと、少し怖くなった。
翔琉ママって、熱中すると超人的な能力を出すから、割りとそうなのかな……。
お祭り荒しってやつだったのかな。
「え?じゃあ、翔琉ママ‼あそこのくじ引きしようよ♪」
「え……いや……くじは……ちょっと……」
「いいじゃん、ほらほら♪」
手をぐいっと引っ張って、俺は翔琉ママと近くの出店【悪魔のくじ引き】をすることにした。
くじ引きっていうと、中になにか紙が入っていて、それに賞品の番号が書いてあるんだったよな。
「翔琉ママ、俺から引くね♪」
と、目の前のおじさんにお金を払って、四角い箱の中を手探りで探り、1枚の紙を取り出した。
そして、その紙をワクワクして開くと、なにも書いていない白紙だった。
「うぇぇぇぇ……おじさん、これは……?」
「あははは……残念、一番したの賞品な」
と、下のだんにあったヨーヨーをくれた。
へぇ、これがヨーヨーか。
ベイゴマとは違うんだな。
「ほら、次は君も引いてみるかい?」
と、おじさんは箱を持ち上げて、翔琉ママの方へと向ける。
翔琉ママも、じゃあーーーと、中から紙を一枚取り出した。
その紙を広げると、大々的に【特当り】と書いてあった。
それを見たおじさんの表情は、驚きを通り越して、唖然としていた。
まさか、こんなにも早く当りが出るとはーーーというより、なんでそれがでてくるんだ?当りなんか入れていないのにーーーという顔だった。
「お兄ちゃん……あははは……すごいね……ほら……特賞の、【金色のチケット】だ……あははは……」
「どうも♪」
翔琉ママは、これで金色のチケット2枚目だ。
というか、特賞がチケットって、凄いなー。
それなら、1等にある【魔王の杖】ってやつの方が良さそうだけど……。
「ほら、ジンライ。みんな、向こうで待ってるから行くよ」
と、俺は翔琉ママに連れられて、再び団体の輪の中へと戻るのだった。
後ろを向くと、出店のおじさんが肩を落として、次の客に接待しているところを見てしまった。
ごめんね、おじさん……翔琉ママ……やっぱり、超人みたいだわ。




