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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
パラノイアクライシス編:第7章~逆転への道と狼の弟子~
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4thステージ62:神は水面へと進む

神の作りし20個の宝具の1つである閃光矛……矛という棒状の長い刃物のイメージとは裏腹に、現在は腕にはまるほどのブレスレットになっている、この武器。

この武器には、意思が存在する。

普通ならば、見た目通りの威風堂々とした、言ってしまえば張り詰めた頑固なものであるかと思う。

仮にも、神様が作った道具なのだから、それが普通ーーー一般的考えかと思う。

だが、その考えは、この世界においては無意味だった。

普通に、アウトな意思が入っていたのだから。

こんな意思が強いのかと、俺は疑問に思うけれどーーーまあ、実際に戦闘になってみなきゃ分からないものだろう。

最終兵器として、とっておきとして、これは最後まで取っておこうーーー文字通りの切り札となることを期待して。


「Zzzz……むにゃむにゃ……」

「こいつは、いつまで寝てるのやら……」


泣きつかれて寝てしまったーーーそんな、赤子みたいな青年、天野狼牙(偽名:パラノイア)は、未だに長い長い眠りについている。

こんな、薄気味悪いところでよく寝れるなと、俺は感心してしまうのだけれど、いい加減起こさないと、物語も進まないことだ。

どれどれ、起こしてやるか。


「おい、狼牙……狼牙。起きろ」

「ん?……むにゃむにゃ……Zzzz」

「2度寝するな!」

「Zzzz……うふふ……むにゃむにゃ……」

「寝ながら笑ってやがる……夢でも見てんのか?」

「……うふふ……お姉ちゃん……」

「なんだ、過去の思い出でも見てんのか?」

「……お姉ちゃん……むにゃむにゃ……パンツ見せて……」

「どんな過去を送ってやがったんだよ‼」

「……‼」


俺の大声に反応したようで、ガバッと上体を起こして狼牙は目覚めたのだった。


「むにゃ?あれ?お兄ちゃんだぁ♪」

「いや、お前の知る天野翔琉とはまた別の天野翔琉だ……って、抱きつくな!」


ぎゅっと、俺に抱きつく狼牙に嫉妬心なのか、妬みなのか……はたまた、殺意なのか……ジンライはその様子を冷ややかな目で眺めていたーーー 時折、歯軋りを立てながら……。


「ほら、離れろ狼牙!」

「えー?おいらの事嫌い?」

「嫌いじゃないけど、好きでもない……だから、普通だ」

「じゃあ、お兄ちゃんは誰が好きなのさ!」

「え?」

「俺もその話気になるなー」


ライが食いついた。


「あたしもあたしもー」


リュウが食いついた。


「俺もー、気になるなー」


ジンライまでもが、食いついた。

こりゃあ、大漁だぁ。


「ちょっと待って、お前ら落ち着け!恋バナしてる暇は俺たちには無いだろ!」

「翔琉ちゃん……女子はね、世界の破滅よりも、好きな男の好きな人が誰なのか……それを知る方が大切なのよ」

「それ、世界滅んじゃうやつだから。結果として世界滅んじゃうやつだから、それ‼」

「翔琉ママー、俺の事息子以上に好き?」

「息子以上に好きって、どういう意味なんだよ‼」

「マイスイートハニー翔琉、俺との結婚生活は退屈になったのか?」

「この虎妄想と現実が噛み合ってないぞ‼」


やめろやめろ。

お前ら、一端落ち着け!


「ーーーさてと、そろそろ私は行くね」


そういって、始まりの神は暗闇の道に向かって歩んでいく。このピラミッドの出口……その方向へと、彼女は向かっているようだ。


「おい、始まりの神……」


そういって、俺は彼女を引き止めた。

始まりの神は、くるりと振り向き、俺の顔を見つめてにこりと笑うと「なにかしら?」と聞き返した。


「最後に1つだけ、聞きたいことがあるんだ」

「なにかしら?」

「記憶を根本から捏造された仲間たちーーーディルたちの記憶……それは、天野蘚琉を倒したら、治せるのか?」

「……どうかしらね?私自身も、記憶を根本から弄られていた事がないから、アドバイスしようがないから、本当に感で言わせてもらうならば、大丈夫よ。あなたは、これまで通りに、自分の思った通りに進めばいい。それが、天野翔琉くん……君が成功する秘訣だし、何より君自身の能力(アビリティ)なのだから」

「俺自身の能力……?」

「そうよ、あなたの能力はねーーー」



語り終えた始まりの神は、このピラミッドから、この世界から去っていった。

と言っても死んだわけではない。

このピラミッドの水面に反射する逆の世界へと帰っただけだ。

始まりの神は「後は、あなたたちが何とかしなきゃいけない……私が手を下すことは許されないーーーだから、こそ……私は見守ることしかできない」と言っていた。

彼女の真意はなんなのか、結局俺は理解することが出来なかったけど、彼女は彼女なりに世界へと事を案じているのだとーーーそういう風に考えることにした。

これでよかったのか……それは、再び彼女に出会うことがあったときに問うことにしよう。

このときの考えは正しかったーーーそう言ってもらえるようにも……今はこの世界を……いや、一人の女の子を救おう。

力に溺れ、全てを食らう女の子を……。



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