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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
パラノイアクライシス編:第6章~帰還した希望と虚言の罠~
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4thステージ53:嘆きの雫

「神魔法:光天神発動……」


俺は、微弱な光ながらも、神魔法を発動して応戦することにした。とりあえず、あの鎖を砕かないと、逃げるに逃げれないだろうしーーー。


「負極魔法:神零(ゴッドゼロ)


アニオンの魔法は、俺を覆っていた光を打ち消した。当然ながら、神魔法は効力を失って消え去った。


「神魔法を解除する魔法だと!?いつのまに、そんなーーー‼」


ドスッと、生々しい音が、俺の腹に鳴り響く。というのも、エンとトルネが同時に俺に蹴りを喰らわせてきた。


「炎龍魔法:紅天(そうてん)(まい)

「風の魔法:春風(しゅんぷう)(おど)り」


グッと、お腹を抑えるが連続で蹴りを奴等は喰らわせてきた。まるで踊るように鮮やかで華麗な魔法ーーー俺は慌てて、後ろに下がるが、追撃のようにディルの鎖が俺に襲いかかった。

完全に隙を付かれ、神魔法も解除された今となっては、あの鎖をかわすのは普通なら至難の技だろう。


「あの鎖、自由自在に操ることも出来るのかよ!」

「捕らえた!」


と、彼女は思わず口に出すが、残念ながらその言葉は実現しなかった。

俺はとっさに、空中で姿勢を変えて、どうにか直撃を避けたのだ。まあ、普通なら至難の技でも、俺ならなんとかできる。以前、ディルとは修行でさんざん戦っていたから、魔法の軌道くらいならどうにか読める。だが、俺がかわした事により、二次災害が発生してしまう。

その俺に当たらなかった鎖はエンとトルネにぶつかってしまったのだ。それも顔面にーーーそして、2人は仲良く、地へと落ちていったのだった。


「エン!トルネ!」


と、俺は思わず心配そうに叫ぶが、そんな事を露知らず、アニオンが後ろからカカト落としを喰らわせてきた。


「しまった!」

「喰らえ!そして、骨折れろや!」


その彼女の言葉の通り、バキッと音が辺りにこだました。骨の折れた音……だが、まあ……俺ではなく、彼女自身の骨が折れた音だった。


「いたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!」


そういって、彼女は空中でのたうち回っている。

俺は、何が起きたのか分からなかったーーーが、俺に当たる前に折れたことは確かだ。なぜならば、俺にはダメージがいっさいないからだ。


「水の魔法:傷悪化現象……骨折れろだなんて、無粋な言葉をあたしの愛する男に言うから、罰が当たったのよーーー」


そういって、鎖を引きちぎって上空から現れたのは、ボロボロの巫女服を着た女性ーーーリュウだった。



「はあい、翔琉ちゃん♪もう、会いたかったわ……本当に……」

「リュウ……良かった、生きててくれて……そして、ボロボロだけど、無事でいてくれて」


彼女の姿を見たら、思わず涙が出てきた。無事で居てくれたことが嬉しいのもあるけど、助けに来てくれたことが一番大きい。


「それにしても、翔琉ちゃん……神魔法は?」

「アニオンの魔法に解除されてしまうほど、今は弱々しいーーーアマデウスとレネンが俺から分離してしまったせいかも……」

「そう……まあ、今はとにかく一緒に来て!」


ぐいっと、手を引っ張られ俺は彼女の言うままに鎖の外へと出ようとしたが、その行く手をディルとエン、そしてトルネが阻む。


「水の大魔導士リュウ……何故その男を助ける?そいつは犯罪者だぞ……偉大なる全世界の王であらされる、天野蘚琉様……我らが主人(マスター)の……」

「は!言ってくれるねディル……時の監視者の癖に、いいように悪役どもに踊らされちゃってーーーバカみたい」

「リュウ……その男を渡しなさい……そうすれば、あなたは助けてあげるわよ」

「嫌よ、好きな男を見殺しにするなら一緒に死んであげる方が、まだいいわ!」

「じゃあ、死ね!」


トルネの無惨な……残虐な一言に、俺は涙が止まらなかった。かつての友から……仲間から……死ねって言葉を浴びせられるこの気持ちーーーもう、心が砕けそうだった。

張り裂けそうなこの思いーーーそして、リュウも、同様に涙を流していた。


「……すまない!」


そういって、彼女は3人に「水の魔法:傷悪化現象」をかけた。すると、彼らからは、おびただしい傷跡が生まれ、血を流し始める。その痛みが激しいことがうかがえるほどの、表情を浮かべた彼らとその痛みを噛みしめ、俺たちはその場から逃げたのだった。

医者であるリュウにとって、他者の傷をーーーいや、仲間の傷を悪化させる魔法を仲間に使わなければならない状況に、苦悩していながらも必死にこらえ、そしてその魔法は使われた。

彼女は握った拳から血がにじみ出るほど、それほどに悔いていた。だが、現状としては最悪だったが最善の策だった。

結果として、誰も死んではないのだからーーー。


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