4thステージ47:破邪の光を灯せ
闇の世界……黒々しく光を飲み込む大いなる世界。悪しき者共が蔓延る邪悪な世界ーーーなんて、普通の人は想像するかもしれない。まあ、今回に至ってはその考えはあながち間違いとは言いきれない。何故ならば、その悪しき者によって故意に作られた、罠の中が、今現在俺がいるこの、闇の世界なのだ。
あの調子にのった自称全世界の王……あいつを止めなければこの世界が危ないどころか、俺のいた元の世界さえも危なくなってしまう。それだけは……それだけは勘弁してほしい。
俺の友人たちはもちろん、家族にも危険が及ぶことに繋がるし、なにより俺の時代の【平和】は未来永劫守られてほしい。周りが平和だからこその、平和だ。
「さてと……平和になるために、今はこの闇を祓わなきゃな」
とは、言ったもののーーー俺のチートとも呼べる究極神魔法でさえ抗えないこのバグをどのように取り除くか……なんだよな。
「もう!なんなんだよ!この空間!俺たちの魔法が通じないじゃないか!アマデウスとレネンの協力を仰いで、この様かよ……神様二人分の力使ってんのに‼」
イライラが募り、暗闇の中で俺は怒っていた。この暗黒の世界をどうやって抜け出すかよりも、あの調子にのった馬鹿の発言に苛立っていた。
「何が全世界の王だよ……笑わせんなよ……下のものを雑に扱う上なんて、いらねーんだよ……だから、下克上って言葉が存在するんだよ。もしも、全ての歴史で全ての人間が、全ての上にたつ人間が、下の人間を雑に扱わなかったらこんな言葉生まれてなかったかもしれないって言うくらい笑わせんなよ……」
イライラタイム、そろそろ終了しなきゃな。愚痴愚痴と、文句ばかりいっても仕方がないじゃないか。相手は、化物。感情を失い、人間としての誇りを捨てた女だ。躊躇わずに……躊躇せずに……。
「叱ってやらなきゃな」
駄々っ子には躾をーーーこれが、天野翔琉流だ。
「まずは、この空間を無理矢理ぶち壊さなきゃな」
究極神魔法……これは、この世の万物を超越できる神魔法を越えた神魔法。神魔法のさらに上の魔法であるというのは、名前からして見ればわかると言わんばかりだろう。
その魔法すら効かない、この闇の空間……魔法と能力が融合して生み出された空間であるということは、さっき放った拒否系の魔法でどうにか理解することができたことは、現状打破に向けての前進だと思う。
「とりあえず、なにかやろう!」
こんな暗闇の中で、じっとしていたら気が狂ってしまう……。なにより、先程から天野蘚琉の気配がない……外のディルたちも気になるし……早く脱出しないと。
「とりあえず、拒否系じゃなくて、攻撃系で攻めてみるか」
そう思って、俺は背中に生えた光の翼を大きく広げ、そしてその翼の光を手のひらに集約させる……。さながら、太陽のような輝きを放つその光を、俺は手で押し潰した。
「究極神魔法:命之始」
次の瞬間、手のひらから強い光が放たれ、この暗黒の世界を飲み込んだ。
全ての始まりにして、究極の聖なる光……それは、死という概念さえも眩ませてしまうほどの、命の光。あまたある、光属性の魔法の中でもこれまた異質にして最強クラスの攻撃魔法。悪しき力のみを討伐するこの光ならばーーー闇を祓う灯火となりえるだろう!
光は闇を飲み込み……そして、世界はーーー未だに闇の中だった。
つまりは、最強の攻撃でさえも……この世界では通用しなかったのだった。




