4thステージ46:闇の中での憤り
「あはははははははははは♪暗黒魔法:黒空間、発動!」
そういって、天野蘚琉は闇の空間で俺を覆った。外からはディルたちの声がしていたが、全てが闇に閉ざされ、なにも聞こえなくなった。
「改めまして……始めましてだね♪最後の天野翔琉……私の名前は天野蘚琉♪全世界の王よ♪」
「全世界の王だと?それに、最後の天野翔琉ってどういうことだよ!」
「うふふ……なにも聞いていないのね……あなた以外の、他の世界の天野翔琉は、全員殺したわ……だから、あなたが全世界で唯一無二にして最後の天野翔琉ってわけ……私の大好きなお兄ちゃん……天野翔琉は、もうあと1人ですべて滅ぶわけ……そうすれば……そうすれば……」
うふふふっと、不気味に笑う天野蘚琉は暗闇の中に消えていく。俺は至って落ち着いていた。例え衝撃的なことを言われようがなんだろうが、焦ったら負けだ。それは、実験でも同じだ。どんなにうまくいかなくても、どんなに成功しなくても……やることに意味がある。だからこそ、俺はまずこの暗闇の世界をぶっ壊そう。
「究極神魔法:神絶対滅亡操作!」
すべての魔法を拒否するこの魔法……案の定、黒い世界は光の世界へと戻ったーーーかにみえたが、再び闇に閉ざされた。
なんでだ?なんで、この魔法が使えないんだ?
「あはははははははははは♪無駄よ、お兄ちゃん……」
暗闇の中で、天野蘚琉の声がこだまする。反響する音が不協和音になって、俺は思わず耳を塞いでしまう。
「どういうことだ!」
そう言い返すが、彼女はただただ憐れなものを蔑むような笑い声だけを闇の中にこだまさせるのだったーーー。
「神絶対滅亡操作!」
俺はひたすら拒否をしているが、いっこうにこの暗黒魔法は解くことができなかった。どうなってるんだ?
どんな魔法でも解除できる拒否系魔法……その最強たる神絶対滅亡操作が効かないなんて……。
「しかも、なんで俺だけなんだ?」
いやいや、まてまて俺。慌てすぎだ。一度落ち着け……。
「天野蘚琉……イミナの妹……この黒い空間は暗黒魔法……天野蘚琉は全世界の王……捕食を使うパラノイア……ん?捕食?」
捕食……たしかこれは、魔法ではなく能力というものじゃなかったか?
もしも……もしも、天野蘚琉がこの空間にも能力を使用してるならーーー確かに、完全には拒否できない。なぜならば、拒否が通じるのは魔法だけだ。だから、魔法じゃないものは拒否できない。ならば、この空間は完全に独立した魔法ではなく、魔法と能力が融合した世界……。
「だとするならば……答えはひとつ……こちらも、魔法と能力を合わせた力を使えばいいだけだーーーけど」
けど……残念ながら、俺にはそんな能力は宿っていない。神は宿せど、能力は宿さず。つまり、俺に今あるのは【化学の知識のつまった頭脳】と【神魔法】と【神を宿してる身体】のみ……。
さてさて、どうやって逆転してやろうかなーーーこの状況。
まあ、俺が言えるのはただひとつ……。
「調子にのった女はムカつくってことだよ」




