4thステージ45:巣穴の中の捕食者へ
話数が飛んだいまなお、あの兄妹は抱き合ってるよ。正直見てて辛いんですけど。もう、気持ち悪いなぁ……。
「あー、妹よ……」
「お兄ちゃん……」
長い長い!
「話が進まねぇ……とりあえず、行こうぜ」
と、俺はオールドアのある部屋から出ようとしたが、どんっと、なにかにぶつかった。なんだこれ?
「見えない壁?」
どんどん、と叩くが空間は壁のままだ。ここでエンの嫁であるファイが俺の後ろから思いっきり助走して、空間に向かって飛び蹴りをしたところ、なんとスポンと、空間を飛び抜け近くの柱目掛けて行ってしまった。
そして、ファイの蹴りが柱にぶつかると、見事に粉々に砕け散った。
「痛たたた……あれ?抜け出てる」
キョトンとしている彼女に、夫であるエンは空間を普通にすり抜けて彼女の元へと駆け寄る。
あれあれ?
「なんで、あの2人は抜け出せて、俺は出られないんだ?」
「変ね……あれ?私は抜けられる!」
そう言ったディルに続いて、ヒョウやフィリも普通にすり抜けてしまった。この一定の空間に取り残されたのは、俺とあのバカ兄妹のみだ。
「翔琉だけ?なんで?」
「なあ、ディル……そっちから、こっちへ来られるか?」
「一応やってみる……痛い!」
ゴツンと、彼女は空間に頭をぶつけてしまう。おや?この様子だと、ディルたちは出れるけど戻れない。俺は出られないし戻れないってことか。
「まるで、蟻地獄だな……逆バージョンの……」
「そうよ?蟻地獄よ?」
俺の独り言を返した女は、後ろに立っていた。そして、その後ろには一人の男が生気を失って倒れている。というか、死んでる?
「それはどういう意味だ、天野蘚琉……」
「だから……あなたを捕らえるための罠なんだって……すべてはね」
「はぁ?というか、イミナ……死んでない?」
「ええ……あいつは、今魔力零にかかっているからねぇ」
「魔力零?それって、さっきフルートが言っていた【パラノイア】って化物の能力だろ?」
「ええ……だから、こうして【パラノイア】は今……あなたの前に立っているでしょ?」
「‼」
そういって、天野蘚琉は俺にキスをしようとした。ぶちゅっと、軽々しいものではなく濃厚で溶けてしまいそうなくらいの……大人のキスを。
だが、そのキスの執行される直後ーーー俺の中のアマデウスが強い光を放って天野蘚琉を吹き飛ばした。そして、天野蘚琉はイミナの方へと転がっていった。そして、俺の中からアマデウスは飛び出てきた。
「アマデウス!」
「翔琉……こいつ、ヤバイ……本気でヤバイよ!」
「頭がか?」
「頭もだけど、力がこれまでの敵に比べて段違いに違う!こいつ恐らく……本気のアマギより、10倍は強い……」
「まじかよ……そりゃあ、厄介だな!」
「じゃあ、いっちょいつものやつ……」
「やりますか!」
俺は、もう1人の神を体内から放出した。俺の裏人格の代役を勤めていてくれているレネン。創造の神にして、邪神となった弟を持つ経歴の持ち主だ。
この2人を出したと言うことは、俺は本気モードだ。
「究極神魔法……発動!」
そういって、かつてアマギを倒したときの、あのチートモードへと変身した。この究極神魔法なら、あいつを倒せるかもしれない……普通の神魔法では、恐らく太刀打ちできないと、俺の頭が直感した。
「あはははははははははは♪」
と、言いながらゆらりゆらりと起き上がる彼女ーーー天野蘚琉は不気味に微笑む。そして、次の瞬間ーーー彼女は突然として、獣のように襲いかかってくるのだった。




