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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
パラノイアクライシス編:第6章~帰還した希望と虚言の罠~
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4thステージ44:希望の少年

JMGの世界から、ようやくこの【魔がさす楽園】へと戻ってこれた。

みなさん、お久しぶりです。この物語の主人公である天野翔琉です。お元気でしたか?俺は相変わらず、ハチャメチャな目に合っています。こないだもこないだで、未来の世界で弟の孫に助けられました。まあ、その辺のお話は着々と進行するらしいのでお楽しみにーーー。


「ふう……やっと着いた……」


異世界へと渡ることの出来る扉【オールドア】をくぐって、俺たちはこの世界へと帰還した。長い長い道のりだったけど、ようやく元の世界へと帰れるようで、本当に安心しているよ。


「ところで、ディル?」

「なによ、翔琉」

「オールドアのある場所って、こんなに血まみれだったっけ?」

「‼」


俺の言葉を聞いた直後、ディルたちは辺りを見回した。どうやら、彼女たちが俺を助けに来る時にはこんな状態ではなかったらしい。血まみれで、凄惨な破壊のあと……そして、扉の前に倒れこむように命を切らしている者がいた。

それは、この俺……天野翔琉とは別の天野翔琉……【イミナ】だった。


「おい、しっかりしろ!」


すぐさま俺は、イミナの治療に入った。元々魂だけの存在なはずなのに、実体化させるとは……よほどの相手と戦ったってことか?


「イミナ!しっかりしろ!イミナ!光治!」


彼に向かって光を注ぐが、いっこうによくならない。切り傷とかの怪我は治したんだけど……なんだこの違和感。


「イミナの魔力がない?」


俺がそういうと、フルートが顔面を真っ青にした。そして、急いで自身のポケットから、液体の入った瓶を取り出して、イミナに無理矢理飲ませた。


「フルート、今のは?」

「魔力零の症状を回復させる薬……」

「魔力零?なんだそれは?」

「私たちの身体の中には精神の器があるのは、翔琉も知ってるよね?」

「うん、以前俺の場合は砕け散ったけど……アマデウスたちのお陰で今は元通りだ」

「この世界の住人は、精神の器に魔力……云わば、生きるためのエネルギーを宿しているの……だから、器の魔力がすべて消えると、私たちは死ぬの……そして、その魔力がすべて消えてる状態を【魔力零】という……かつて、パラノイアと呼ばれた化物がエネルギーを喰らう【捕食】って能力で多くの生物を死に誘って、始まりの神と呼ばれた神によって未来永劫封じられたって童話が残ってるの」

「じゃあ、イミナはそのパラノイアってやつにやられたのか?」

「だとしか考えられないわね……でも、今飲ませた薬ならその症状を回復させることができる……精霊族の聖域にある時年樹の葉より作ったその薬ならば……」


と、フルートが続きを言いかけたところで、コツコツと物陰から歩いてくる音が聴こえた。


「誰だ!」


と、ライが足音の方へと言うと、スッと現れたのは赤いドレスを着た女性だった。なんというか、妖艶なようなその美しさに女性陣まで虜になりそうだったが、俺とジンライ……そしてライだけは違った。俺は悪寒を感じたからなのだが、二人は【匂い】で違和感に気がついたらしい。


「あら、お兄ちゃん!生きてたの!」


そういって、俺の方へと泣きながら走ってくる彼女に向かって、ライは、強烈な雷を放った。


「なにやってんのよ、ライ!」と、ディルはライを見るが、その表情を見て彼女はハッとなって、雷に撃たれた女を見た。

平気な顔でスッと立ち上がった彼女の回りには、炎と雷と水と地属性の発光体が取り囲んでいた。


「もう、いきなり雷とか強引なんだからぁん♪」


と、にこにこと笑っている赤いドレスの女……こいつ何者だ?



「あはははははははははは♪あんたたち誰?お兄ちゃんの友達?」


そういって赤いドレスの女は、ヒラヒラと舞うようにその場でくるりと一回転する。まるでドリルのような動きをするドレス……そして、その中心軸にいる気味の悪い女ーーーなんなんだこいつ?それと、さっきからお兄ちゃんって、誰のこといってるんだ?


「まあいいや……自己紹介するね……私の名前は天野蘚琉(あまのこける)……そこに眠っているイミナの実の妹よ」

「天野蘚琉だと!?」


そういって、俺は目を見開いて女を見つめた。そして、イミナはこの自己紹介に反応するかのように、目を覚ました。


「ん……ん……あれ?ここはどこだ?」

「イミナ!目が覚めたんだね!」

「ん?ぁ!翔琉くんじゃないか!よかった、無事に戻ってこれたんだね……他の方々も……お、蘚琉じゃないか♪」


そういって、起き上がったイミナは妹である天野蘚琉に歩み寄って、ぎゅっと抱き締める。


「お兄ちゃん……無事でよかったよ……」


そういって兄を抱き締める天野蘚琉を見ていて、俺とジンライ、そしてライ以外のみんなは暖かい気持ちになってるみたいだけど、残念ながら俺にはそんな風に見えなかった。これは、妬みでもなんでもないんだけど……なんだか、怖いと思った。

なんというか、人形同士の遊戯を見ているようで、全くといっていいほどの心がこもっていない……そんな感じがする。


「翔琉……」


そういって、ジンライが俺の耳元でこっそりと喋っている。


「なんだ?ジンライ……」

「あの女……確かにイミナと兄妹って言われたら匂いがにてるんだけど……それに混じって嫌な匂いがする」

「それって、なんの匂い?」

「ほんのかすかだけど……リュウの血の匂いがするんだ」

「リュウの血の匂い?!」

「あぁ……だから、俺はこれからライと一緒にリュウを探そうと思う。さっきから、全域に生命反応がないか調べてるんだけど、全くといっていいほど生命の反応がないんだ……だから、恐らく時空図書館にいる可能性がある」

「じゃあ、ディルといかなきゃダメなんじゃないの?その図書館ってディルが管理してるんでしょ?」

「全く……翔琉ママ……俺を誰だと思ってるんだよ」

「可愛い子猫?」

「ちょ!ばっ……照れる~」

「んで?」

「あぁ……前に合鍵もらってるから、いつでも出入りできるんだよ、俺」

「じゃあ、ライとこっそりと……よろしく頼むね」


そういうとジンライはライを連れて、オールドアの裏へと消えていった。


「あれ?あの二人は?」


と、フルートが聞いてきたので「トイレに行くってさ」と、とりあえず嘘をついて誤魔化した。さて、怪しげな兄妹……いつまで抱き締めあってんだよ!長いわ!不気味すぎる……。

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