4thステージ38:リュウvs天野蘚琉②
炎雷水地……この魔法は見たことがない。というのも、そもそも融合という技法は、上級魔法になればなるほど困難を極めるものなのだ。例えるなら某忍者漫画で、球体に性質変化を入れるために主人公が苦戦していたようにーーーそれほど、難しいことなのだ。
炎・雷・水・地属性の融合……果たして今、あの魔法がどのような効果で、どのような属性を有しているのか……あたしには理解を越えていたのだった。
「って、考えても仕方がないか……水の魔法:青龍瀑布!」
あたしの掛け声と共に、辺りの地面から4つの水柱が突き出て、そしてそれらは龍の形になり、天野蘚琉へと向かう。
「ふん……そんな攻撃……なんとでも……‼」
瞬間、彼女は全てを把握した。この攻撃は、吸収してはならないとーーー天野蘚琉は凄まじい跳躍で、天井に張り付き攻撃をよけた。
そして、蘚琉がいた場所に水の龍が4つ合わさるやいなや、水蒸気爆発を起こして、辺り一面に熱湯が飛び散った。
「……なんて、性格の悪い攻撃なのかしら」
そういって、蘚琉は再び地に降り立つのだった。
「あらあら、あなたに言われたらおしまいね、悪女さん」
「誰が悪女だ!天女の間違いでしょ♪」
「もう一回爆発させてあげようかしら……水の魔法:青龍瀑布!」
あたしの繰り返される爆発の連鎖……そして、それを紙一重でかわし続ける天野蘚琉ーーー両者の力は完全に均衡してるかに見えた……が。
「やはり、気になるわね……あの発光体」
未だに天野蘚琉の周りを旋回し続ける謎の4つの発光体。炎・雷・水・地の属性の光をそれぞれ現しているのだけれど……あれ?なんか、水属性の光が他のに比べて大きくなっていない?
「まあでも、今は、攻めるのみ!水の魔法:海龍高来!」
先程飛び散った熱湯ーーーそれら全てが、天野蘚琉目掛けて弾丸のように降り注ぐ。
水というのは、圧力をあげれば鉄でさえも、ダイヤモンドでさえも切り裂く恐ろしい自然界に存在する兵器なのだ。それら全ての圧力を極限まで高めて攻撃するのが、海龍高来。いくら、捕食の持ち主でも、無数に広がる水滴を一つ一つ吸収するには限度があるはず。多勢にて攻めるのみーーーこれが、捕食の攻略法だ。
「やったか?」
天野蘚琉は水蒸気の煙にて包まれているため、倒せたのか分からないーーーが、この程度で倒せたら、拍子抜けというもの。恐らくまだ生きている。まあ、殺す気は無いんだけどねーーーあたし医者だし。
「うふふふ……うふふふ……うふふふのふぅ~♪」
そういって水蒸気の中より現れた天野蘚琉……そして、周りを旋回していた水の発光体が恐ろしく膨れ上がっていることが直ぐに分かった。
「うふふふ……反撃するから避けてみなよ、バカ女……」
そういって、蘚琉は水属性の発光体を自分自身の正面へと移動させ、あたしに向かってその発光体を向ける。
禍々しい光を放ちながら、その光は静かに輝きを増し……。
「炎雷水地【青龍】」
という天野蘚琉の言葉と共に、光の玉はあたしを貫いたのだったーーー。
ぽっかりと心に穴が空いたような気分だったーーー見たところ、本当に穴が開いていた。しかし、心ではなく胸ーーーあたしの、胸にぽっかりと光の玉が通過して出来た穴が空いていた。不思議なことに、痛くはなかった。なんだか、不思議な感覚だった。
「治療女王魔法発動ーーー強制回復」
だけど、すぐにその穴は塞がった。あたしの固有魔法【治療女王魔法】によって。
「へぇ……そんな状態にされても治るんだ……流石は不死者ね……」
「まあ、お前に誉められても何ら嬉しくないけど……それより、さっきの攻撃はなんだったのかしら?」
「うふふふ……ひ・み・つ♪知りたければ暴けばいいわよ……それくらい出来るでしょ?バカ女さん」
小バカにしたような態度で、天野蘚琉はふわりと地面に着地する。そして、その周りには未だにあの光が集っている。先程放たれた水属性の光も健在だった。あれがなんなのか……それを理解しなければ、麒麟魔法は破れないわけか……。
「炎・雷・水・地……麒麟……各一族に伝わる継承されし魔法たち……魔法の名前から取り出すキーワード……くそ、考えがまとまらない」
「無駄無駄無駄‼」
天野蘚琉は、光の玉を矢の形状に変化させ、あたしに向かって放ってきた。あたしはそれを、悠然とかわしながらひたすらあの魔法のことについて考えていた。
先程の攻撃は水属性……そして、あたしがしていた攻撃は水属性……属性の攻撃を吸収する魔法なのか?だったらーーー別の属性でも試してみるだけよ!
「炎の魔法:断炎‼」
「無駄ね」
そういって、天野蘚琉は炎属性の発光体でガードする。そして、球体は少し膨張した。読み通り……。
「次よ……雷の魔法:雷即撃!」
雷の弾丸を蘚琉に撃ちまくるが、全て雷属性の発光体に阻まれ、吸収されてしまうのだった。だが、そのせいなのか分からないけど、先程の炎属性の発光体が小さくなっている?
もしかして、これが攻略法なのか?




