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BABY BOMB!!  作者: 未芹


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ハナ

ハナちゃんの回。

お母さんが亡くなって知らないうちに半月が過ぎていた。


べべはあの日、帰宅してキッチンに行った後、泣き崩れた。

お鍋の中には、お母さんが誕生日のべべの為に作った、冷めきってしまったかぼちゃのシチュー。

べべの本当のお母さんが誕生日やクリスマスに作ってくれたっていうメニューだった。


過呼吸を起こして倒れたべべをバブが部屋に運んだ。

私はどうする事も出来なくて、何をしていたのか、正直覚えていない。


その後すぐ、ぐったりしたべべはバブに連れられて医局に運ばれた。

お母さんの死因は失血死だが、刺されたナイフに毒物まで仕込まれていたと後から聞かされた。


この時は、まだ分かっていなかったのだけど。

べべの様子がおかしいとバブが気づいて処置できていなければ、お母さんの血を大量に浴びて傷口を抑えていたべべも毒が回って助からなかった。


同時にバブも解毒処置をしたが、時間が経ってタオルの上から傷口を圧迫していたバブは毒の周りが遅かった。

普段から耐性をつけてるタイプの毒だったからな、とか言ってたっけ。


バブまで倒れていたら、私なんかじゃ何も気づかずに手遅れになっていた。最悪の場合、このふたりまで失っていたかもしれない。

情けないけど、まだまだ経験値もメンタルも全然足りてなかった。

悔しい。


その日、お父さんが警察やマーダー協会から帰って来たのは夜遅くなってからだった。



それ以来、私とべべにはぐりがついている。

学校には行っていない。

お父さんからお母さんの話はなかった。

お父さんは敵対するアジフ反政府軍との一件で忙しくなって長く家を空ける事が多い。

バブは。



バブは帰って来なくなった。

お父さんに聞いても、協会から指示が出ている訳ではないそうで、毎日どこにいるのか分からない。

たまに帰って来ても、シャワーからベッドへ直行しては2、3時間でいつの間にかいなくなるか、着替えだけでまたすぐに出掛けてしまう。

もう誰とも何日も会話していなかった。


この間見た時は、まるで痩せ細った野良猫みたいに目がギラギラしていた。声を掛ける隙もない。


バブ。

私たち家族だよね。

べべが壊れちゃいそうなんだよ。

バブまでいなくなったら、もうどうして良いのかわかんないよ。

ひとりで遠くに行かないで。



目の前でお母さんを殺害されたべべは、解毒してからも当分後遺症が残るようで眠ったままだ。

側についていても、悪夢から助けることはできない。

私はうなされるべべを抱きしめて、現実に引き留めるので精一杯だった。



「ハナ。べべの事、俺が見とくからさ、ちょっと部屋で寝ておいでよ。」

いつの間にか、ぐりが顔を出していた。


やっとさっき、呼吸が落ち着いて寝息を立て始めたのを見て、ぐりが言う。


このままじゃハナまでダウンするよと言われて、頷く。


「何かあったらすぐ起こしてね。」


静かだった。


シノブさんのいないこの借り物の家はただでさえ広いのに、今ではまた元の廃屋の姿に戻りつつある。


(みんなとおうちに帰りたいな。)


そう、施設の日々を思い浮かべ、どうにも出来ないことが頭を()ぎる。

細工の細かい階段の手すりをなぞりながら力なく2階へと上がった。

無人の広いエントランスホールを眺めて、ここへ来た時のことを思い出す。


こんな事になるなんて、と唇を噛んだ、その時。

裏手の家から繋がる地下通路の隠し扉が開く気配がした。




緊張した手が反射的に腰に仕込んだ銃を握った。

私の愛銃は、SIG P365。

バブと同じSIGなのは、アメリカ時代、バブに仕込まれた射撃訓練中に気に入ったもの。

小型のこの銃は、小さな私の手でも扱いやすい。


姿勢を低くして、扉に照準を当てる。


「撃つなよー。俺や。」



(なんでわかったんだ、この人。)


この暢気な関西弁はライトだ。

私が銃を装填させる時のラック音で気づいたのか。あ、ラック音って弾を装填する時にスライドさせて、その反動で戻る時の音なんだけど、あれを扉を開けながら気づくなんて。


さすがはエリート。


銃を戻し、ため息を吐きながら立ち上がる。

「すみません、ここです。」


「おぅ、ハナちゃん。べべの具合はどうや?」と階上を見上げながらエントランスホールを歩くこの人も護衛をつけない。


(バブといい、ホントに単独行動がお好きで。)


疲れでイライラしてるのか嫌味のひとつも言いたくなるが、ぐっと我慢する。

ハナちゃんは見た目より大人なのだ。


寝ているべべをぐりが見ている旨を話し、言外に自分は今から寝るんだよーと知らせた。


そのつもりが。全くスルーするところまで誰かさんと同じか。こっそりとまたため息ひとつ。


「ほんなら、ハナちゃんは今から俺と同行な。」

スマホを取り出して話し始めた。相手はどうやら、ぐり。


「今からハナちゃん借りるわ。お前、べべと一旦エリア9に。うん、迎え寄越すわ。」


(部屋まで行けよー。すぐじゃんか。)

(って、今エリア9って言った? べべ、また医局に運ばれるの? )


あれ?文句言ってる場合じゃないのか。私、べべと一緒じゃないんだ。どこに連れて行かれるんだろう。


睡眠不足で回らない頭がゆるゆると動き始めた。

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