あとがき
本作『リリー・レンフレットの骨拾い』をお読みいただきありがとうございました。
当初の想定文字数を超える長編小説となったにも関わらず、物語を完結まで書くことができたのも、偏に読者の皆様あってこそと思っております。重ねて感謝申し上げます。
さて、あとがきの本分は達成しましたが、実は本作について少々語りたいことがあり、もうしばらくお付き合いいただけると幸いです。
本作は、リリーが一人の人間になるまでを描いた物語です。
年端もいかない少女が、過酷な環境において人間性を育むこともできず、奴隷(本文中の引用としては肉人形)としての一生に従事する中、外乱によって運良く(悪く)抜け出し、様々な過程を経て成長していきました。タイトル、及び作中で度々出てくる「骨拾い」、この「骨」には例えば「気骨がある」や「背骨を入れる」といった慣用句のように、人としての軸あるいは意志を意味しており、「骨拾い」とはつまりそれら人間性を取り戻すことのメタファーになっています。
そのため、物語では「奴隷の状態」→「形成/抑圧されていた状態(奴隷)からの解放」→「認知の拡大と内省および自我の創出」→「自己の形成/確立」→「形成された人間性の認知」という流れを組みました。何が言いたいかと言うと、レオンが死ぬのは既定路線であり、むしろそうするために設定したキャラクターでした。というか、リリー以外の全てがそうです。まさしく”作られた物語”であり、舞台装置でしかありません。
ではなぜ物語がこれからも続いていくような締め方をしたのか。言ってしまえば作者のエゴです。例え創作された仮初の物語であっても、そこに生きた人々を切り取った責任というか、勝手に終わらせることの罪悪感というか、そんな感じの自己満足です。
とすると、一つ疑問が出ませんか?あ、そう出ませんか。そうですか。じゃあやめようかな。
……いや、書きますよ。すみません茶番です。
作中で度々「アリシャ」と「星振りの魔女」って出ましたよね。それなのに一切触れてこなかった。実は「アリシャ=星振りの魔女」でして、そもそもアリシャとはリリーの母親であり、「星振りの魔女」という番外編の小説を書こうと思っていました。そうです、過去形です。
内容としてはリリーが誕生するまでを書く予定で、当初は大体2万字くらいかなーなんて考えていたのですが、プロットを立てたらあら不思議。推定文字数8万字(10万字に膨れる可能性あり)という番外編とは名ばかりの長編小説になりそうだったので、諦めました。あくまで、『リリー・レンフレットの骨拾い』であり、作品のノイズになり兼ねないという判断です。あと普通に書くのが面倒くさいです。なので作中では触れなかった要素なのに、回収もろくにされないという結果になってしまいました。
ただ、じゃあ胸の内に留めておいてくれよって話になるので、この場を借りてざっくりとではありますが、どのような物語なのかを共有させていただきたく。準備はいいですか?ちょっと長くなりますよ?
それでは、内容は以下の通りです。
〇番外編:『星振りの魔女』
・時は遡ること約三十年前。
・レンフレット大森林内にある、人口数十人の隠れた村にアリシャという女性がいた。
・村の伝承では、アリシャは魔女の子孫であるとされていた。
・だが、アリシャに対する差別等はなく、他の村人同様、静かにかつごく普通に暮らしていた。
・そんな折、村に数十人の兵士がやってくる。
・兵士たちは内乱を起こした反乱軍であり、その村を軍事拠点として接収すると告げる。
・また土地や建物だけでなく、男は徴兵、女は娼婦として連行されることになる。
・これには村人たちも黙っていられず、まさに一触即発の事態となっていた。
・そこにアリシャがやってきて、兵士を皆殺しにする(方法は空に飛ばして自由落下)。
・村人たちはアリシャが「魔女の末裔」であることを再認識して、感謝よりも恐怖が先行する。
・アリシャ本人も自身にそのような力が備わっているとは思っていなかった。
・次第に、村人とアリシャの間で溝ができ、村から排除する空気が醸成されていく。
・そんな中、村の一人が王国側に通報して、アリシャは王国兵に連行されていった。
・ただしこの際、アリシャは王国兵を皆殺しにしている(前回のやつらがまた来たと勘違い)。
・事態を重く見た王国側が、再度大規模な軍隊を投入した。
・村人から直接出ていけと言われたこともあって、アリシャは大人しく投降する。
・王国側はアリシャを魔女として処刑しようとする。
・だが、無意識に魔力を作用させているアリシャにはどのような処刑も意味をなさなかった。
・八度の処刑の末、殺せないことを自覚した王国側はアリシャの処刑を諦める。
・また同時に、反乱軍の攻勢が強まっており、王国側には魔女にかまけている余裕がなくなっていた。
・さらに数年が経ち、いよいよ反乱軍との戦況が拮抗してしまう。
・そこに軍の最高指揮官であるオルトナ・キャンベルが魔女を活用することを提案する。
・切羽詰まっていた王国側は「物は試し」とばかりに早速実戦投入する。
・実はキャンベルは裏でアリシャとの交流を図っており、穏当に牢屋から出す策がこの実戦投入だった。
・アリシャの戦績はすさまじかった。
・初陣にて、敵軍3千の全てを空高く打ち上げ、まるで人間流星群のように自由落下で全滅させた。
・この出来事から、ついた異名が「星振りの魔女」である。
・アリシャは次々と戦地に赴き、鏖殺の限りを尽くしていた。
・しかしある時、一人だけ助かった人物がいた。それがリリーの父グレゴールである。
・アリシャはそのグレゴールに一目惚れして、無意識のうちに自由落下から助けていた。
・血の海の中で突然告白されたグレゴールは断ることもできず、二人は付き合うことになる。
・王国側も「まあむしろ人質が増えて御しやすくなるかも」と容認していた。
・こうして、二人のイチャラブ生活がレーベンティアにて始まった。
・恐怖しかなかったグレゴールも次第に打ち解け、愛するようになっていく。
・そんなグレゴールを羨み、アリシャを我が物にしようとしていたのがオルコットである。
・当時レーベンティアは議会制で市政が運営されており、オルコットは上級議員だった。
・アリシャの力と美貌をその権力で簒奪しようと考えていたオルコットに転機が降りてくる。
・反乱軍を大規模に匿い、レーベンティアを占拠してしまおうという作戦が齎されたのだ。
・オルコットはその策に乗っかり、どさくくさに紛れてアリシャを奪おうと考えた。
・だがこの作戦は、多少の犠牲は覚悟のうえで、主力を一網打尽にするほか、手薄になった反乱の首謀者たちも一斉に捉えてしまおうという、王国側の策略であった。
・そうして色々な者たちの思惑通りことは進んでいく。
・その頃、アリシャは妊娠しており、いつ産まれてもおかしくない状態にあった。
・時を同じくして、レーベンティアが戦場と化す。
・事態を察したアリシャだったが、ちょうど陣痛がはじまり入院、出産へ。
・子どもが産まれるも息をしておらず、アリシャは全魔力を注いで生き返らせようとした。
・オルコットの手引きにより、「星振りの魔女」を捕えようと病院が襲撃を受ける。
・アリシャはグレゴールにリリーを預け逃げるように指示を出し、兵士と戦うことに。
・しかし、アリシャは出産と魔力の譲渡によって瀕死の状態だった。
・あえなく兵士の凶弾に撃たれ、アリシャは死亡。
・様子を見に駆け付けたオルコットがアリシャの死体を見て絶望する。
・オルコットは死体を抱え、その場を逃亡する。
・グレゴールは追っ手の兵士から銃弾を撃ち込まれるも、なんとか逃げ切ることに成功する。
・ほどなくして、リリーが息を吹き返し、産声をあげた。
・また戦争も終結し、崩壊した街の一部(のちの退廃特区)にて、グレゴールとリリーの生活が始まる。
といった具合に番外編は終了です。ちなみに上記はプロットではなく、物語の軸となる要素を抽出したメモ書きみたいなものです。プロット自体はもっと長いし、下書きなんて考えたくもありません。
グレゴールがリリーを恨んでいたのはアリシャの死の間接的な原因だったから。また、リリーを捨てることができなかったのは、そのアリシャとの間にできた子どもだったから。どちらも抱えたまま、どうすることもできず、グレゴールは放置していたというわけでした。まあ、リリーはアリシャの単為生殖による澱みの魔女のクローン(というかアリシャ自身も)なので、実際はグレゴールの遺伝子なんて入っていませんがね。
そんなこんなで、ここまでお読みいただきありがとうございます。おかげさまで、あとがきに書きたいことは全部書き終わりました。これにて本当に『リリー・レンフレットの骨拾い』は完結となります。
重ね重ねではありますが、ご愛読いただきありがとうございました。
言えた義理もありませんが、次回作もお楽しみに。
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