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野太い悲鳴をあげて元気に転げまわっていた男が動かなくなった。
「お、死んだ?」
警戒しながら近づくニーナだったが、炎が消えていることに気が付いて立ち止まる。いくら雨が降っているからといってもそう簡単に消火するはずがない。
熱したフライパンに落とした水が蒸発するのに似た音と共に白い煙が立ち昇り、男の焼け爛れた皮膚がみるみるうちに再生していく。
ものの数秒で回復を果たした男は、何事もなかったかのように立ち上がった。
「くそがっ、僕を誰だと思っているんだ」
「豚……っていうのは豚に失礼か。ただの太ったおっさんでしょ」
「絶対に許さん。そんなに豚が好きなら、犯し殺した後に細切れにし」
「灯れ」
男が何かを言い終えるより先に、ニーナは唱え、火の玉を飛ばす。
狙い過たず火の玉は男に直撃し、再び火柱をあげた。
さらにダメ押しとばかりに三つ、同じ大きさの火の玉を生み出したニーナは、それらを一斉に男へとぶつける。
天を焦がさんばかりに巨大な火柱が立ち、断末魔すら許さぬ炎の牢獄に捉えてしかし、轟炎は突如として掻き消えた。
吹き荒れる風に短い髪の毛が後ろに流れ、ニーナは目を細めた。
「もうお前の炎は効かないぞ」
変わらぬ姿で立つ男は得意気に、にちゃりとした気味の悪い笑みを浮かべた。
「灯れ」
男の言葉を信用することなく、ニーナは試しにともう一発撃ち込んでみた。
だが、男の言ったことは正しかったようで、今度は火の玉が当たった瞬間に炎が消し飛んでしまった。
「やった、やったぞ! ついに僕も魔女の力を手に入れたんだ!」
下卑た様子の高笑いをする男とは対称的に、ニーナは眉をひそめて不快感を顕にしていた。
「めんどくさ。魔物化してんじゃん」
「魔物だと? ああそう、それじゃあ獣みたいに犯してやるよ!」
「その租チンで?」
「舐めるなぁぁぁぁぁあ」
奇声をあげるのと同時に、男の陰茎が丸太くらいの太さへと肥大化して伸び、空中を蛇のようにくねらせてニーナへと襲い掛かってくる。
「きも」
嫌悪感を露にしたニーナはすぐさま回避行動へと移ったが、ぬかるんだ地面に足を滑らせしまい、男のそれに巻き付かれた。
「つかまえた」
男の陰茎には青筋が浮かび上がり、締め付けが徐々にきつくなっていく。
体に作用させる魔力を増やしても、ニーナの力ではほどけそうにもない。
「このまま絞め殺してやろうか。それとも」
「くっさ」
「……まずはそのうるさい口から黙らせてやる!」
一段と締め付ける力が強くなったかと思えば、皮を被っていた亀頭がにょきっと顔を出した。
赤黒く、皮脂や角質の溜まった亀頭は異臭を放っている。
ニーナは顔を背けて体をのけぞらせたが、とうとう顔面まで迫ってきた。
割れ目が少し開き、我慢汁が物欲しそうにじわりと滲む。
意を決したニーナは亀頭に噛みつき、肉を食いちぎって吐き捨てた。
「歯を立てるな下手くそがっ!」
男がこれまで以上に激昂すると、呼応するようにして亀頭部分が勢いよく飛び出し、ニーナの顔面を殴打した。
「はぁはぁ、そんな乱暴にされたら……ますます固くなっちゃうだろ」
ビキビキとさらに勃起した陰茎の締め付けが強くなり、ニーナの筋肉や骨からミシミシと音が鳴る。
だが、ニーナは至って冷静だった。
目だけを動かして周囲を確認すると、「こんだけ濡れてればもういっか」ライターの蓋を開けて呟いた。
「疾れ」
ライターの先から疾る白く細長い芯炎が剣のように伸びる。
手首を返して伸びた炎が扇状の弧を描き、音も無く男の陰茎が焼き切れた。
何が起こったのか、理解が追いつくより先に訪れる痛みが走り、男は声にならない声を出して白目を向き、放心して涙がつと頬を伝う。
伸びた陰茎は途端に萎んで男の股へと引っ込み、切られた方はびちびちと地面をわずかに跳ねた後、力なくふやけて動かなくなった。
「泣きたいのは皮被ったちんこの方でしょ。って聞こえてないか」
溜め息を吐いたニーナは、ライターの火が出る穴を男に向けた。
「穿て」
カッ、と火花が散って閃光が迸り、その刹那、男の頭が吹き飛んだ。
一拍遅れて、地面に溜まっていた水が一斉に蒸発し、一寸先も見えなくなるほどの水蒸気がもうもうと立ち込める。
しばらくすると霧が晴れ、乾いた地面を再び雨が濡らしていく。
男は頭部を失ったまま、仰向けになって倒れていた。
ニーナは男に近づき、ちょんちょんと足で体を小突いてみた。
蹴られた男には何の反応もなく、それはただの肉の塊と化しているようだった。
「まあ、骨まで灰にするって言っちゃったしね」
ニーナは言って、男の体に火を点けた。
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