インターハイ東京予選決勝 恋風VS円帝4
試合は守華さん、大葉さんと両チームの守護神による好セーブの応酬やDFの奮闘もあって得点は動いてない。
これは1点を入れた方が勝つ、という雰囲気が強まってきたかな。
「恋風! 恋風!」
「円帝! 円帝!」
スタンドの応援も相当盛り上がってるみたいで、ベンチに座る僕から凄い両チームを応援する声が聞こえてきた。
両チームの攻撃と守備、それぞれ個人技や組織力が激突していく手に汗握る展開。
自分がマネージャーという立場を忘れそうになって、普通に試合を楽しんで見てしまいそう。
「あー! そっち危ない花音先輩!」
「咲月! もっと右行って右ー!」
ベンチから見守ってる選手達も声を出していき、僕は時計をチェック。
前半も残り5分とアディショナルタイムぐらいまで来ていた。
とりあえず此処まで見て思ったのは、恋風の攻撃がサイドに偏り過ぎている事。
それが続いたせいか、さっきから莉音先輩と花音先輩の動きが読まれてしまい、チャンスを潰されるのが多くなりつつある。
確かに中央は燐火さんを中心とした守備陣が固めてるから、相当固くて止められる確率は勿論高いと思う。
かと言ってサイドばかりじゃワンパターンで読まれやすい。
『此処も止められた恋風! ロングパス通らず!』
『途中から円帝のボール支配率が増してきてますね。恋風側でプレーする事が多くなりましたし、流れが傾いてます』
莉音先輩をターゲットにしたパスもカットされ、思うような攻撃に繋げられなくて逆に恋風が円帝の攻撃を受け続けている。
それでも守華さん、月夜先輩、咲月先輩と上手く攻撃を防いでくれて真理華さんが芹華さんを徹底マークしてるのが大きい。
けど、このままじゃ遅かれ早かれ得点されるのは時間の問題だ。
「守りきって! 皆ー!」
この前半での失点は致命的になりかねない、僕は皆へなんとしても守ってほしいと応援する。
狼憐Side
前半の途中から俺にボールが来なくなり、円帝への攻撃が仕掛けられなくなってしまう。
両サイドの莉音、花音の2人を軸に攻めていたが読まれてきたのかもしれない。
『守神芹華から護才へ! シュート! 大花弾いた、護影がクリアで凌ぐ恋風!』
芹華によるスルーパスがゴール前の護才に通り、相当危なかったが守華と月夜が守って此処も得点を許さなかった。
しかし相当危ないな……一対一になってゴールされそうな匂いがするぞ。
どちらにせよパスが来ないし、前半も終わりが近い。
この場は俺も守備に参加して前半を0で済ませる方が良さそうだ。
神兎との特訓で守備に磨きをかけた事だしな。
『円帝が再び攻め、おっと守山がこの位置まで戻っての守備!』
円帝のテクニックは流石と言って良い、全国トップクラスの技術を持つ選手ばかり。
だが、ついてあけない程じゃなかった。
俺は前半は守備を積極的に行い、この前半を凌ぐ事に集中する。
やがて、前半終了の笛は鳴り響く。
『此処で前半終了。円帝がシュート数と支配率、共に恋風を大きく上回っています!』
『前半の途中から円帝がペースを握って支配してましたね。彼女達の計算外としては前半を無得点で終わってしまった、というのぐらいでしょうか』
ふ〜、なんとか無失点で前半を終える事が出来たか。
しかし後半はそうはいかないかもしれない。
相手は東京女王で、このままでは終わらないだろうからな。
俺は前半を戦い抜いたチームメイト達と共に、ロッカールームへ引き上げる。
「ふ〜、なんとか前半0で凌いで良い感じ……とは行かないよねやっぱ」
東京女王を相手に0で前半を乗り越えたが皆の表情は冴えない。
途中から攻められなくて、守り抜くぐらいしか出来なかったせいだ。
「前半ですけど、皆さん中央突破を全然使いませんでしたね。サイドばっかりで攻めが単調になってる……ように見えました……」
そこへ神兎が発言すると前半で中央突破を仕掛けていなかった事を指摘。
確かに莉音、花音のサイドからの突破が正直頼りになって効果的で、円帝に正面から言っても無理だろうと皆が思い込んでたかもしれない。
強固過ぎて無意識に避けてしまっていたんだろうな。
「確かにまぁ、正面からの圧が凄くて避けちゃったかも……」
「私も両サイドからの攻めに偏り過ぎだなとは感じました。普通のチームならともかく、相手は全国最強クラスですから効率的な攻めにはならなかった……それが前半の攻撃が通らなかったと推測出来ます」
真理華は相変わらず冷静沈着で、こんな時でも落ち着いた分析をしている。
「後半は恐れずガンガン正面から行こうって事だね!」
「いや、それだけじゃなく正面から行こうと見せかけてのサイドアタック。または逆か、サイドチェンジも良いかもしれません」
咲月よりも具体的な作戦を言ってくれて、すっかり俺達の参謀みたいなもんだな神兎は。
サイドから行く時は分かりやすく、そのまま行っていたから円帝には余計読まれやすかったんだろう。
応援していく中、そういった所に気づいたり作戦を立てるとは流石俺の神兎だ。
彼には将来も是非、俺の側にいてほしい。
彼の隣に相応しいのが俺だと証明する為に後半、なんとしても決めてやる!




