インターハイ東京予選決勝 恋風VS円帝5
芹華Side
前半は間違いなく我々が試合を支配し、攻め続けていた。
それにも関わらず得点は無く0ー0のまま折り返す。
「──前半は円帝が圧倒しているから後半も行ける、と浅はかな事を考える子は我が円帝の一軍に居ないでしょう」
母様、監督の言葉を前に皆が静まり返り、言葉を発する者は居ない。
このまま修正も無しに恋風が後半臨んでくるとは思えなかった。
「相手は此処まで名門校を倒してきている新鋭、そして向こうには優秀なブレーンが付いている。調子に乗って前半と同じように攻め続ければ負けるのは円帝となってしまう」
監督も分かっている。
向こうには小平君が付いているから、何か必勝の策を授けてくる可能性は高いはずだ。
「前半、どちらかと言えば恋風はワンパターンなサイド攻撃が中心となってパッとしなかった……。修正して仕掛けるようになるとすれば、正面突破」
確かに恋風は前半、正面から全然来ていなかった。
あえてサイドを強く意識させて急に正面、と変化をつけて我々の裏を突くというのはあり得る。
「後半、中央の選手達は特に警戒を強めておく事。言うまでもないだろうけど、僅かな油断で負けるのはサッカーで充分考えられるから。各自油断は絶対しないように」
「「はい!」」
私も含め、円帝の部員達は全員が声を揃えて監督に返事する。
「油断すんなって言うけど、あっちの双子にはぶっちゃけ負ける気しないよねぇ?」
「無い無い、あんなテクニック無くて体も貧相っぽい双子相手じゃないって!」
フィールドへ戻る時に監督のいない所で蜜柑と花梨の双子が、向こうの双子を甘く見るような発言が私の耳に入ってきた。
油断するなと言った後なのに、この2人は優秀なんだが相手を下に見る悪い癖があるので困る。
「というか向こう、恋風のベンチに可愛い子居たよねー?」
「見た見た! レディスポーツの特集で恋風の男子マネージャーとして取り上げられてた彼でしょ? ホント可愛いよねー!」
小平君がレディスポーツの雑誌でインタビュー記事を受けている事は、我が円帝でも知られていた。
そして、この2人も小平君に目をつけたらしい。
「え、あの子に目ぇつけてんの2人とも? 私優勝決めて声掛けようとしてたんだけどなー」
まて、お前もか恵。
そんな事は一切聞いていないぞ私は。
「てめぇら、神兎は俺のだぞ!」
「燐火の彼氏じゃないでしょー!?」
「こういうの早いもん勝ちだよー!」
「何だ、彼フリーなら狙っちゃおうかな〜?」
そこに燐火まで割り込んで来て、ややこしい事に……!
小平君の隣に立つのは私だ!
お前達には割り込ませんぞ絶対に!
護香Side
「流石我が妹、東京女王を相手に粘ってくれるねー」
あたしは仕事の為に今回行われる東京予選決勝、恋風と円帝の試合を担当する記者として選ばれ、この場に立っている。
大方の予想じゃ圧倒的に円帝有利で、恋風が勝つと予想する人は皆無だったけど、蓋を開けてみれば0ー0の接戦と勝負の行方はまだまだ分からない。
やっぱサッカーは何が起こるのか分かんないもんだね!
『両チーム再び入ってきました。交代は互いに無いようです』
『前半は円帝が攻めてましたが後半に恋風が反撃なるか、それとも円帝が決めてしまうのか……恋風の先制点とかあったら試合が物凄く面白くなる所ですけどね』
フィールドには恋風、円帝の選手達が戻ってきて後半のキックオフに備える。
頼むよ我が妹ー?
此処勝てばあの円帝にあたしの妹勝ったって良い自慢出来るからさぁ。
あ、恋風ベンチで神兎君を発見!
うーん、今日もキュートで良いねぇ♪記念に1枚パシャッて行こうかー!
って、あたしが神兎君の姿に夢中になってる間、後半戦がもうキックオフしていた。
恋風としては、どうにか反撃に繋いで攻撃したい所だけど相手は全国でも1、2を争うチーム力を誇る円帝だからなぁ。
厳しい戦いになる、そう思った時──。
『莉音、サイドからと見せかけて中央か行った! これは上手い切り返し!』
おや、恋風は少しやり方を変えてきたみたい。
外から見てワンパターンなサイド攻めが目立ってたのが、パターンを変えて守備陣を翻弄しに行ってるね。
これは後半戦、面白い事になるかもしれない。
あたしの記者としての勘がそう叫ぶと、あたしは愛用のカメラを構えてベストなタイミングを狙う。
『莉音から守矢! ゴール前へスルーパス!』
お、良い感じで攻撃が繋がってる!
『大加護が防ぎ、クリアした!』
あ〜、駄目だったか。
けど流れは少し前半の時よりも変わって来たんじゃないかな?




