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一所懸命★魑魅魍魎♪  作者: 之園 神楽
第参鬼 温鬼知新偏
91/94

第玖拾壱巻 活気付ける?

第玖拾壱巻 活()付ける?


「んっ、この音色は」

 典人のりとが、散歩さんぽがてら改装工事かいそうこうじ状況じょうきょうでも見に行こうと、とりでの建物から出て敷地内しきちないを歩いていると、何処どこからともなく聞いたことのある音色ねいろが耳に入ってきた。

 それは以前、『牢獄核ろうごくかくの間』で『琵琶牧々(びわぼくぼく)』の日和ひよりが奏でていた琵琶びわ音色ねいろだった。

 よく聞けば、その音は正門の方から聞こえてくる。

 見に行こうと思っていた改装工事かいそうこうじの現場は裏門うらもんの方だが、別に急いでいるわけでも無し、気分転換の散歩がてらだという事で、典人のりとは正門の方へ足を向けることにした。

 その音の方へと辿たどって歩いていくと、砦の正門付近から琵琶びわかなでている音が、一層大きくはっきりと聞こえるようになってくる。

 さらに音のする方向に典人のりとが歩いて行くと、何やら正門前のちょっとした広場に人だかりができていた。

「何やってるの?」

 典人のりとが手近にいた女の子に後ろからのぞむように、声をかける。

「あっ、御館様おやかたさま、こちらへどうぞ」

 声をかけられた『藤原千方ふじわらのちかた』の『隠形鬼おんぎょうき』である千隠ちがくれがいち早く典人のりとのために場所を空けてくれた。

日和ひよりちゃんと美琴みことちゃんが、演奏会えんそうかいを開いてくれてるんですよ」

 千隠ちがくれの空けてくれた場所に立つと、隣にいた『方相氏ほうそうし』のねりが教えてくれた。

 とりでの正門前はちょっとした広場になっており、路上パフォーマンスには確かにうってつけの場所である。

 そこに『琵琶牧々(びわぼくぼく)』の日和ひよりと『琴古主ことふるぬし』の美琴みことがそれぞれ、琵琶びわことを配置してミニコンサートらしきもよおしを行なっていたようだ。

「鬼族の間では日和ひよりちゃん、物凄ものすごい人気なんですよ」

 『橋姫ハシヒメ』の姫刃ひめはが教えてくれる。

「へえ」

 そういわれてギャラリーを見渡してみれば、周りには正門前のため、『牛頭馬頭』の司宇しう真宇まうや『橋姫ハシヒメ』の姫刃ひめはをはじめ、『紅葉もみじの鬼』の藻美慈もみじ藤原千方ふじわらのちかた四鬼(実は六鬼)の面々、『方相氏ほうそうし』のねり、『縊鬼いつき』の委築いつきなど、他にもギャラリーはいるが、見事に鬼の系統のあやかしが多くそろっていた。

「というか現代の時代に合わせて言うのならば、アイドル的な存在そんざいですかね」

藤原千方ふじわらのちかた』の『土鬼どき』である千土ちづちが説明してくれる。

「へえ、そんなに人気だったとは知らなかったよ」

 あらためて典人のりとが周りを見渡せば、確かに皆うっとりとした表情を浮かべ、日和ひよりの演奏に聞き入っていた。

「お粗末様でした」

 一曲演奏を終えて、日和ひよりが可愛らしくペコリとお辞儀じぎをすると、聞いていた女の子たちから拍手はくしゅこる。

「はあ、日和ひよりちゃん。可愛い。もう、門にしばり上げてるしちゃいたいくらいいとしいわ」

『普段はキリッとした感じで仕事をしている委築いつきが、うっとりと陶酔とうすいした表情でつぶやく。

「そのいとしさは、駄目な愛だろ!」

 典人のりと委築いつきが隣で恍惚こうこつとした表情を浮かべながら口走った言葉を聞いて、思わず全力で突っ込みを入れていた。

 実際、過去の逸話いつわには、ある琵琶びわの名器の音色に魅了みりょうされた鬼が、その琵琶びわぬすみ出し、朱雀門すざくもんひもり下げたというものも残っている。

 そんな話は知るよしもない典人のりとではあったが、妙に不安に駆られて、片付けを始めていた美琴みこと近寄ちかよっていって話掛けた。

美琴みことちゃん、しっかり見張ってて上げてね」

「ま~か~せ~て~く~だ~さ~いぃ~」

 相変わらずのおっとりとした口調で美琴みことけ合う。

(こっちはこっちで不安だなあ)

「何をおっしゃいます典人様、よ~く想像してみてください。琵琶(日和)しばり上げられて門にるされている姿すがたを」

 異様なねつこもり方で持論じろんを語った後、委築いつき琵琶(・・)が門にるされている光景を想像し再び恍惚こうこつとした表情をかべる。

 それにつられてか、典人も琵琶(日和)があられもない姿すがたしばり上げられ門にるされている光景を妄想もうそうし、恍惚こうこつとする。

「「いい」」

 二人の吐息交といきまじりの感想がピタリとかさなる。

 だが、二人の脳裏のうりうつるのは、なる光景であった。

(…緊縛きんばく羞恥しゅうち放置ほうちだなんて!)

「…ほう、緊縛きんばく羞恥しゅうち放置ほうちとは」

 『さとり』の慧理さとりがいつの間にやら典人のりとの隣まで来ていて典人のりとの心を読んでいた。

「なっ! 慧理さとり、おまっ!」

「緊縛で羞恥で放置だなんて!」

「御主人様、何て高度なプレイを!」

 それに反応した司宇しう真宇まうがわたしたちもといわんばかりににじりってくる。

「「一生()いていきます!」」

「いや、オレが言ったわけじゃないから」

 言ってはいないが、妄想もうそうはしていた。

「ああ、また新しい扉を開いてしまいそうな!」

「開かんでいい!」

「御館様に閉ざす門は有りません」

「何の門だ!? 何の!?」

「「聞きたいですか?」」

(本当にこの二人に突っ込んだら負けなんだろうな)

「……突っ込んでも大丈夫だと思う」

「だから慧理さとり、そこまでにしておこうな」


   ◇


 ヒヒーン!


「あれっ? 馬のいななきのような声が聞こえた気がするけど?」

 典人のりととりで内から馬のいななきのような鳴き声が聞こえてきたことに疑問ぎもんおぼえる。

 確かにここはとりでだけに馬の厩舎きゅうしゃであろう場所があったのは見て回って知っていたし、とりでなら当然かとも思っていた。

 しかし、この砦には馬はいなかったはず。

 考えられるとすれば、 『馬魔ぎば』の瑠宇魔るうまが妖力で具現化して出現させる玉虫色の馬を見たことはあるが、この馬は瑠宇魔るうま騎乗きじょうするとき以外は常時具現化していることはないので違うと思われる。

 典人のりと興味きょうみを引かれて、馬のいななく方へと足をはこんだ。

 ヒョイッとのぞいてみた厩舎きゅうしゃの中には、やはり確かに数頭の馬がおり、おいしそうに飼葉かいばんでいた。

 その近くで馬たちが食べている様子を見つめている『豆狸まめだぬき』の瞑魔めいま姿すがたがあったので、典人のりとは近づきながら声をかける。

「どうしたの、この馬たちは?」

「ああ、森の開けた所に野生馬がいたんだよ。それを愛実あみたちが捕まえてきてくれたんだ。今はこのうまやで世話してくれているよ」

 勿論もちろん、これはうそである。

 実際はとりで襲撃しゅうげきしてきた野盗『明烏あけがらす』のアジトを逆に藻美慈もみじたちが奇襲きしゅうけ、その際に手に入れてきたものであった。

 とは言え、野生かどうかなんて、典人のりとが見て見分けがつくわけもなく、この先、馬は必要になるわけだし、野盗関係については典人のりとには内緒にしておくことを皆で決めたので、一先ひとまずは納得なっとくさえしてもらえる理由であれば何でもいいわけだった。

「へえ、この世界では野生種がいたんだ。地球じゃ、野生種はいなくなって、今確認されているのも大昔に飼われていた者が野生化したものだって、どっかで聞いたことがあったけど」

「そうなんですか? 知りませんでした。ご主人様は物知りなんですね。こちらの世界ではまだ存在するようですね」

 『七人みさき』の長女設定であるみさおがえさの準備をしながら感心したように言う。

「それほどでもないけど」

 典人のりとが、みさおのその反応にれたように右手を頭の後ろにやりき始める。

 そこへ丁度。

 『馬魔ぎば』の瑠宇魔るうまもやってきた。

「どれ、わらわの目にかなう馬はおるかのう?」

 すると。


 ヒヒッーン!

 ブルルルルッ!


 途端に室内にいた馬たちが、興奮こうふんしたようにあばれ出した。

 いや、おびえだしたといった方が合っているだろうか。

だれか、急いで愛実あみんできておくれでないかい」

「わたし、行ってきます!」

 瞑魔めいまの声に、『ケセランパサラン』の世良せらが、返事するが早いか、即座にうまやから飛び出ていった。

 『鐙口あぶみくち』は昔、戦場いくさばてられた馬具があやかしとなったもので、ここでは一番馬のあつかいにけているである。

れてきたよ!」

 それからすぐに世良せら愛実あみれてもどってきた。

 愛実あみはすぐに馬たちをなだめ落ち着かせていく。

「どうどうどう。よしよし、いい子だね」

 その手際てぎわは見事なものであった。

 ただ、馬たちは落ち着いてはいるものの、おびえた雰囲気ふんいきは消えておらず、何かから距離をとるように一か所に固まって典人のりとたちの方を向いている。

 いや、どちらかといえば、典人のりとたちの方を向いているというより、背中を見せないようにしているというのが正しいだろうか。

突然とつぜん、どうしたんだ一体!?」

 いきなりの出来事に、典人のりと困惑こんわくしてしまう。

「あっ!」

 思い当たるふしがあったのか、みさおがポンと手を打ち、小さな声を上げた。

 そして、瑠宇魔るうまの方を向き、ピッと指を突き刺して言う。

瑠宇魔るうまさんはうまやへの出入り禁止です」

「なんでじゃ!」

 以前もかたったが、もう一度(かた)っておこう。

 『馬魔ぎば』は路上を歩いている馬を突如とつじょとして死に至らしめるというおそろしい魔性ましょうの風で、この風にさらされた馬は肛門こうもんが何か太い物をまれたようにポッカリと大きな穴を空けられているという。

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