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一所懸命★魑魅魍魎♪  作者: 之園 神楽
第参鬼 温鬼知新偏
89/94

第捌拾玖巻 怪気炎 (かいきえん)

第捌拾玖巻 怪()炎 (かいきえん)

「今回の探索たんさくは何て言うか、微妙に成功というか、失敗というか」

 会議室にしている部屋に入るなり、典人のりとは第一声、そう言いずらそうに、今回の旅の成果をべた。

 とりでもどってきた一行は各々(おのおの)少し休んでから、それぞれ各所に報告ほうこくに回っている。

 またあらためては食事の時に大食堂ででも行なおうとは思ってはいるのだが、取り急ぎ簡潔かんけつ報告ほうこくをしておこうというところであった。

「そうでしたか。それは残念でした。おつかれでしょう? 今、お茶を入れますね」

「有難うそうさん」

 それを『宗旦狐そうたんぎつね』のそういたわるようにおだやかな微笑ほほえみでむかえてくれた。

 メイド服に身を包んだそうのお茶を入れる優雅ゆうが所作しょさまこといやされる光景である。

 元の世界では滅多めったに見られるものではない。

 あまりかんばしくない報告はさっさと済ませてしまおうという典人のりとの思いであったが、みょうやわらかい受け止められ方をされたため、かえって拍子抜ひょうしぬけした感じになってしまった。

 その分緊張きんちょうけ、随分ずいぶん気が楽にはなったようだ。

「人に会えたのは良かったけど、大きな町とは反対の方向に行っちゃったみたいでさ。一応、人の住んでいる村には着けたんだけど」

 『すずりの精』の鈴璃すずりの正面の席に着くと、はあっと典人のりとが大きくいきを付く。

「そのようなことはありませんよ。今の話からさっしますと、この世界で、『人』を見つけることが出来たのでしょ? それから、『村』を見つけて、その村の住民と一先ず温和に接触せっしょくすることができたのですから」

 鈴璃すずりが、そうやさしくさとす。

「そうかなあ?」

「ええ、それに、このとりでから、直接大きな町に向かうと、これから幾度いくども出入りすることになりますので、下手へたをすれば、このとりでの存在に気付かれる確率かくりつが高くなります。いずれ気付かれるにしても、少しでも先延ばしにして時間をかせぎ、どのような状況じょうきょうになっても対応ができるように態勢たいせいととのえておきたいですから。そういう意味では、その村を迂回路うかいろとして、一旦いったんはさんでおくのは良い手だと思います」

 実はこの典人のりとたちの探索たんさくの旅の中、『さとり』の慧理さとりの元々の能力である『さとり』によって、森から道に出た所から典人のりとたちが歩いて行った方向とは反対の方向にそれなりに大きな町があることは冒険者ぼうけんしゃふんして典人のりとたちのことをだまそうとした、野盗の男達の心を読んで、典人のりと以外の女の子たちは知っていたのだ。

 そのうえで、安全策あんぜんさくとして、あえて村に行き、町の情報じょうほうを事前に得てから、あらためて町に行こうということに決めたのである。

 勿論もちろん典人のりとはその事を知るよしもない。


   ~   ~   ~


「仕方ありませんよ。慎重しんちょうに行くしかないのですから。むしろ村に伝手つてが出来たことにより、村を経由けいゆしてきたことにすれば、町でもあやしまれにくくなると思いますので、これで良かったのではないでしょうか」

 『藤原千方ふじわらのちかた』の『水鬼すいき』である千水ちみずが言う。

「そうかな」

「ええ」


   ~   ~   ~


 そう、帰り道にも女の子たちに同じようなことを言われてなぐさめられていたのである。

 なので、そこまでダメージは受けていなかった。

「ふ~ん、なるほどね。それにしても、なんだか外がさわがしくなっているけど、どうしたの」

「ああ、それはですね。どうせおそらくは長期間、このとりで住処すみかとすることになるのですから、少し気分転換きぶんてんかんになるような手を加えようかということになりまして、典人のりと様がいない間に始めてしまったのは申し訳ないのですが、改装かいそう工事をはじめさせていただいています」

 勿論もちろん、文字通り(血塗ちまみれという意味でも)真っ赤なうそである。

「ああ、そういうことなら別にいいよ。でも、出来るだけ早く、元の日本に戻れるようにしたいね。」

「……そう、ですね」

「どうかしたの、鈴璃すずりさん?」

「あっ、いえ。そうだ。後で外の方も見てきてはいかがですか? まだ、しばらくはかかると思いますが」

「えっ、ああ、そうしてみるよ」


   ◇


 当たり前のことではあるが、とりでは他の大規模だいきぼな建物、例えば城や大きな屋敷やしきくらべ、装飾性そうしょくせいけるものである。

 戦いの最前線となるがゆえに当然のことではあるが、同じ戦いの場となりやすい城とは事情が違い、城は平時では外部の者をむかえる顔としての役割を持つのに対し、とりでは平時より外部からの敵に対してにらみを聞かせていなければならないという顔を持つ。

 必然、その造りは質実剛健しつじつごうけんむねとし、それを具現化した物になるのは致し方のないことであろう。

 無骨ぶこつと言い換えても良いかもしれない。

 中に住んでいる100人もの美少女のおかげで、はなやかさという意味ではこの上ないが、これでは味気あじけないのも事実。

「大がかりな改装工事かいそうこうじみたいなものだよ。これからしばらくはここで生活していかなくてはならないのだから、少しはやすらげる場所があってもいいかと思ってね」

 『槍毛長やりけちょう』の陽槍ようそうがサブウエポン? の木槌きづちかたにトントンとやりながら典人のりとに説明している。

 と、言うのは建前たてまえであり、実際のところは表向きの、典人のりとに対する誤魔化しの言い訳(理由)である。

 実際の所は典人のりとに、このとりで内で起こった襲撃しゅうげきしてきた野盗達に対する凄惨せいさん蹂躙劇じゅうりんげきの現場の痕跡こんせきを見せないためであった。

 つまりは証拠隠滅しょうこいんめつなのだが。

 改装工事(証拠隠滅)範囲はんいとりで内とその周辺地域におよんでおり、特にとりでの正面門を入った広場と裏門側の区画は大々的に行なわれていた。

 裏門側にいたっては元の世界の日本の工事現場のように布のまくまでられていて、目隠めかくしになっている。

 用意したのは『絹狸きぬたぬき』の絹姫きぬひめや『機尋はたひろ』の千尋ちひろたちであった。

 裏門側は野盗の頭領であったガズルや幹部達との戦闘による破壊はかいされた門やかべげた建物たてものなど、それなりに被害ひがいが出ていたため、小手先こてさき修繕しゅうぜんで誤魔化すよりも、いっそのこと、大々的に改装かいそうしてしまった方が見栄えが良いのではないかと話がり上がり、現在にいたる。

 想定外であり、当然、典人のりとには前もって知らせてはいなかった。

「本当は典人のりとが探索に出ている間に終わらせて、ビックリさせようと思ってのサプライズイベントとして考えていたんだけど、皆の希望を聞いていたら、予想以上に大がかりになってしまって間に合わなかったよ」

 これも口から出まかせである。

「いや、充分驚じゅうぶんおどろいたよ」

「そうかい。それは上場(じょうじょう)

 ニッコリ笑う陽槍ようそうであった。


   ◇


 同時刻。

首尾しゅびは?」

 別の所では『藤原千方ふじわらのちかた』の『金鬼きんき』である千金ちがねが自分たちの探索たんさくの報告をえた後、とりでの方の状況をたずねていた。

「バッチリさあね。首尾しゅび守備しゅびも、何も問題なし」

 小麦色のはだとは対照的な白い歯をニカッと見せて『藤原千方ふじわらのちかた』の『火鬼かき』である千火ちかが相変わらずな駄洒落だじゃれで答える。

「それは何よりでしたね」

 それを千金ちがねれたもので、文字通り鉄面皮てつめんぴ、いや無表情で冷静に応じる。

「まあ、ちぃと裏門の方がこわれちまったけど、御屋形様おやかたさまには鈴璃すずりから、日本風に改装かいそう工事をするつもりだとうまく言っておいてもらえることになっているから、そのつもりで」

「分かりました。合わせておきますね」

 千金ちがねはそんなことは些細ささいな事と言わんばかりに流していた。

(今回の場合、典人のりと以外の女の子たちからすると、典人のりと血生臭ちなまぐさ惨劇さんげきの場から遠ざけることが出来たのだから、それだけで大成功と言える。

 連れ出した側である千金ちがねの方は別の野盗の集団に出くわして、ちょっとあぶなかったところもあったが、相手の手を利用して典人のりとに気付かれることなく野盗を排除はいじょすることが出来たのだから、こちらも大成功と言って差支さしつかえないであろう。

「ところで、御屋形様おやかたさまの内にある『七つの緒札おふだ』の一枚、『青行燈あおあんどんの呼び声』の蝋燭ろうそくほのおが3本消えたそうです。レベルが、3つ上がったとおっしゃられていましたので」

「へえ、それはそれは。めでたいじゃないか」

 『七人みさき』の四女設定であるみさとが横から口をはさむ。

「そうなると、何か典人のりとが目標を達成しただけじゃなくて、僕たちが何かを成し遂げても、典人のりとのレベルが上がるということになるわけだね」

 あごに指をあてて『算盤小僧そろばんこぞう、実は算盤小娘そろばんこむすめ』の珠奇たまきが、そう推論すいろんべる。

「分からないよぉ。典人のりとに誤魔化すときに姫埜ひめのちゃんが咄嗟とっさに着いたうそ、森を出たことと、異世界の人と出会ったことと、村を見つけたことっていうのが、案外当たっていたかもしれないし」

 そう、『糸取いととむじな』の射鳥いとりが茶化すような、おどかすような、悪戯いたずらっぽい口調で言う。

「「あははははっ」」

 皆、顔を見合わせて笑う。

「「……まっ、まさかね」」

 しばしの沈黙ちんもく

「「あははははっ」」

 微妙びみょうに笑顔の引きつる面々であった。

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