#04
着火。火花が見えた。閃光、そして爆発。容器の中を逃げ場を求めて駆け巡った圧力は、やがて内側から膨れ上がりその容器ごと破壊する。意識が遮断され、同時に身体全体が内側から裏返った様な感覚があった。身体の中で何かが爆発し、その衝撃によって自分が破壊され、そして新たな別の何かに、俺の身体が再構築されていく―――
アパートの台所。椅子に腰を降ろした俺の姿をした俺が、俺を見て笑っている。
「変身、しただろ」
俺は自分の両手を見つめながら、あぁ、と呟いた。身体が一度破壊されて、そして生まれ変わった感覚。今までに、こんな経験はした事が無い。
「圧縮、着火、爆発、破壊、そして再生。これによってお前は変身する」
「変身」
「そうだ、新たなお前だ」
「何故俺が」
「何故俺が、だと?」
俺が俺の顔を見て、吹き出した。何を言ってやがる、と俺が笑い、そして続けた。
「そんなの決まってるだろ。この星を守る為。そしてもう一つ」
「もう一つ」
「お前が、そう望んだからだ」
「俺が・・望んだ」
「あぁ、そうだ。お前が望んだ。お前が変身したいと望んだ。今までのお前ではなく、別の何か、何者かに変わりたい、変身したいと、お前が望んだ。強く、な」
変身したいと俺が望んだ、俺はそう呟いてから目を閉じた。
不安 恐怖 挫折 憎悪 妥協 後悔 焦燥 切断 逃避 孤独 そして、絶望。
「だから宇宙からのメッセージを、お前だけが、受信できた。ダウンロードしたそのプログラムを、お前自身が、お前の身体と意識にインストールし、そして変身した」
「俺は変身した」
「あぁ、そうだ」
「俺は生まれ変わった」
「そう表現してもかまわないが、個人的にはやはり、変身、の方が好きだな」
「俺もそう思う」
「気が合うな」俺の姿をした俺が目配せをした。
「そりゃ、そうだろう」
俺は思わず声を上げて笑っていた。不思議な晴れやかさが、俺を包み込んでいた。
散乱したコンビニ弁当の容器。所々がタバコで焼け焦げたカーペット。ヤニで黄ばんだ部屋の壁紙。シンクの中に溢れた汚れた食器の数々。目に映る全ての景色が光を帯びて輝いていた。今ならどんな事だろうと、例えば空を飛ぶ事すら出来そうな気がする。まるで神にでもなった様な、そんな気分だった。
俺はふと思い出して、スーツ姿の俺に訊いた。
「ところで、さっき俺を襲ってきた敵、なんだが」
スーツ姿の俺は、なんだそんな事か、という風に笑顔を浮かべてからこう言った。
「あぁ、あれは大丈夫だ。あのまま押入れに入れておけば、いずれ消える」
俺は、つい数分前に大家の姿をした敵の首を絞めた時の感覚がまだ残る両手をちょっとだけ見つめてから「そうか、ならいいんだ」と言って笑った。




