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雪日の夕飯
12月の日曜日。雪の降る堤防で、海の波音が僕の耳を包んでいた頃。僕は肌寒い腕を押さえながら、ゆらゆらと踊る飛沫と小さく灯る灯台の先端をただ感じていた。
「正志くん。夕ご飯、用意できたわよ。」
山の斜面を伝って届いたその声に僕の意識は吸い取られた。
「あ、叔母さん。今から行きます。」
後ろ姿は草陰の奥に消えた。僕は白の坂の針の道を忙しく駆け上がった。轟く波の飛沫を背中で感じながら、しばらくして草陰の戸に戻った。肺は真っ白な呼吸をしていて、戸の前に彼女が立っている様子は僕の瞳が捉えた。
「た…」
雪の音に声が消される。
「ただいま。だよね?正志くん。」
優しく微笑むその額。かきむしるように喉を無理に動かした。
「あ、ああ。」
暖かな彼女の手が僕の手首を握った。引き寄せられるようにして戸の中に入る僕と彼女。最後に戸が閉まると、先ほどまで忙しかった波と雪の音は途端に消失し、まるで引き換えと言わんばかりに僕の心に穏やかな灯火が点く。
「みんな待ってるから早く手を洗ってね?今日は母さん特製のシチューなんだから。」
「…うん。わかった。」
彼女が前を歩いている。それだけで僕の心は痛いほどに熱くなる。
この身に何が憑いていたというのだろう。
その夜の惨劇は悪霊の仕業に違いないほどに、僕は仏様に嫌われていたんだ。




