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座敷童のいち子 作者:有知春秋

【中部編•想いふ勇者の義】

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「か、海面を走っている……? 人間なのに?」
 人間離れした身体能力の高さはあったとしても、人間が海面を走るのは無理だと梓は思っている。確かに、人間と同じく体重があり重量に縛られている座敷童の水面歩行を何度も見ているが、それはあくまでも人間の世界の常識が通用しない座敷童の能力であって人間には不可能だと理解している。だがしかし、理子は水面歩行をしている。
「いや、違う!」
 水面歩行ではない。理子が走っている箇所、足を付けている場所に、
「朱槍に融合されている橙の鱗の力で『氷を作って』その上を走っている。……でも、あんな一瞬で凍る程度の氷の上を走るなんて人間には無理なはず。どんなに身体能力が高くても」
 理子が海面を踏むたびにシャリッと氷面のようにひび割れ、白色の結晶となって散る。そもそも理子の走るルートは氷面になっていなく、足を海面に付けるとその足元に氷面が発生している。
「でもコレが、『座敷童側の事象を人間が干渉できる方法』だとしたら……」
 梓はふと金鶏山で見た出来事を思い出す。
 座敷童の巴が掘った穴に飛び込もうとした人間のアーサーが、その穴に拒絶されるように激突し足を捻る怪我をした。
 穴があるという座敷童の事象に人間が干渉できないだけなのだが、もしその穴に干渉できる方法があるとしたら、それは『座敷童側の事象を人間が干渉できる方法』になる。その干渉方法は穴と海面では変わるのだが、今、視点を置かなければならないのは『海面で起こなわれている座敷童側の事象を人間が干渉できる方法』。
 座敷童やオロチの能力が人間側に干渉するように、莫大な力で干渉させる意外にも、干渉方法さえあれば座敷童側から人間側その逆でも干渉させられるという事になる。
「座敷童側から人間側に干渉させるために橙の鱗の能力で氷面を、浮力のある足場を即席に作っているということ? ……いや、でも、それだと、どちらにしても、海面に浮く薄い氷の上を走っていることになるから、人間には不可能」
 梓が訝しむとおり、たとえ氷という干渉方法があったとしても、足を乗せたら割れてしまう程度の氷面では、その上を走ることなんてできない。
 二次元的な発想として、足が沈む前に足を出せばいい、と脳裏によぎるが、もし本当にそんな荒技ができるなら最初から水面を走ればいいだけになる。
 どんな理屈を並べても、今の理子がやっている荒技は人間には不可能なのだ。
「弥生の子孫、理子さんの野力からの身体能力は、薄い氷面でもあれば水面を走れる、二次元的な発想を可能にするほど高いってこと?」
 正解。しかし、梓は橙のオロチの能力は氷だと誤解している。正確には『水分を氷にできる能力』なのだ。
 そして、水分が氷になる過程は真水と海水で変わり、海流や波がある場合は更に凍るまでの過程が変わる。しかし、そんな一般的な知識は座敷童の世界には、理屈の説明以外に必要ない。そして、今の理子が作る現象は『座敷童側から人間側に干渉させるモノ』になる。
 身体能力の高さだけで海面を走っているのではないのなら、それならどういう理屈で、理子は海面を走っているのか?
 理屈は簡単——
 巴や白黒の技に雷の能力で身体能力を上げる電光石火があるように、理子は肉体に青の鱗の能力を付与させて身体強化をしている。
 そして海面には、橙の鱗の能力『水分を氷にできる能力』で氷点下にする。もちろん、走って行くルートだけとはいえ海面だけを氷点下にしただけでは氷面は作られないため、走って行くルートの大気中の気温も氷点下にしている。
 従って、答えは——
 たとえ人間であっても、能力有りなら——【付与された電気や凍傷に耐えられる肉体があるなら】——海面が氷面に変わる一瞬の間、理子は走っているため足元では刹那の時間、『氷になりかけている海水』と『氷点下の大気と触れることで薄い氷に変わっていく海水』という水温さから生まれる氷面をクッションにして『全身を襲う凍傷と電気からの激痛に堪え』ながら走っている。
 最初から海水を浮力のある氷(氷塊)にすれば良いと思うが、橙の鱗の『水分を氷にできる能力』は海面や大気の水分だけを氷に変えるという都合の良い能力ではない。血の通った肉体が能力の干渉範囲にあれば、凍傷までの過程を飛び越えて血液を凍らせる。
 従って、凍傷までの過程内で動ける干渉方法を理子は行使しているのだ。だがそれは、血液を凍らせないだけで長時間行使し続ければ凍傷は免れない。
「身体をかえりみない、むちゃくちゃな、能力の使い方じゃない! 今すぐ……っ」
 理子の荒技に気づいた梓は声を荒げる。今すぐ止めなさい、と言いかけたが……。
 朱槍の切っ先に融合された橙の鱗からの『水分を氷にできる能力』、青の鱗から肉体に付与された『身体強化の能力』、それはまさに座敷童側から人間側に干渉させた能力。
 ——血の通う肉体、特に接地面である両足は無事ではない。
 ——身体強化と言えば簡単だけど、電気信号を伝達させる脳や脊髄の負担は想像さえできない。
 常人の梓でもわかる。凍傷していく肉体で身体強化されたまま戦闘などしたら、脳•脊髄•筋組織だけでなく内臓•骨に至るまで無事ではない。
 身体能力に恵まれていたとしても、血の通う肉体な以上は、前述の通りなのだ。
 常人の梓では理屈と理想では叶えられない、理解の外にある行動力、闘うための手段なのだ。
 ——野生力。生きるか死ぬかの場で試される生命力の強さ。
「コレが人間がオロチに対抗する力……」

 平安時代に、体温で水を熱湯に変える病と『闘った男』がいた。
 現代医学では眉唾物だが、今の理子のように現代医学では自殺と判断される行為——座敷童側の力——を行使していたら、医学では説明できない異常が人体を『喰らう』。座敷童の世界に人間の常識(医学)は通用しないのだ。
 しかし、体温で水を熱湯に変える病に身を喰われながらも、その異常を独学で考察し、文献として御三家の書庫に残した男がいる。平清盛。
 先日、松田翔にその文献を渡されたアーサー=横山=ペンドラコが平清盛の考察に何を思うかは別の話だが、座敷童と関わっていく家に生まれた梅川梓も梅田家の書庫でその文献を読んでいる。

 梓は、理子がその手段を行使するのに躊躇わなかったからこそ『今すぐ止めなさい』とは言えなくなった。その手段を行使する根源にある、恐ろしさに気づいたから。
 覚悟。
 梅川家や茅野家や高田家のような御三家の側近ではなく、裏からいち子や松田家を守る、弥生の血筋の覚悟。言葉を変えるなら、自己犠牲。
 理子の人間性から、最初から自己犠牲とは考えていないだろう、と梓は思う。
 本来なら、松田家といち子さえ守っていれば良い弥生の子孫が、梅田家や他の座敷童の前で戦闘しようとしているのだ。
 損得勘定無しに、困っている人がいるから助けているのだ。
 当たり前の手助けをやっているだけなのだ。
 理子とは、弥生の子孫とは、松田家に武力を認められたのではなく、心を認められ、心を磨き続けてきた一族なのだ。
 梓は認めるしかなくなった。そして、現代の梅田家には足りなく梅川家に無い心を見せられてしまったからには、言い訳などもうできない。
「受け継いできた技と身体能力。そして磨き上げてきた神童いち子や松田家への気持ち……」
 翔が皆を助けたいなら、自分がまとめて助ける。それが、松田家といち子を守る弥生の子孫の業。『縁の下の力持ち』という言葉をそのまま体現させる理子、おそらく、戦闘になれば『弘法筆を選ばず』も言葉どおりに体現するだろう。
「お濃様が言ったとおり、弥生の子孫、理子さんに梅田家は必要ないと判断されたら……認めるしかない」
 ギリギリと枝を握る。悔しさが湧き出る分だけ惨めになる。
 ——梅川家はなんて情けない一族なのだ。
 ——梅川家は今まで何を見、何をしてきたのか。
 否定したい。梅川家も座敷童のために生きて、血を繋げてきたのだから、否定したい。だが、否定もできない心を見せてくる存在、理子と出会ってしまった。
 ——もう否定はしない。もう自分を正当化しない。
 ——でも今は、心の準備も行き場もない今だけは、その心に甘えさせてください。
 梓は誤魔化すように枝拾いを再開する。口から出てくるのは情けなさからの歎き。
「なにが梅川よ、なにが梅田一族の筆頭よ。東大寺では魔獣の相手もできずに逃げ回って、金鶏山では見ているだけで、伝言役にしかなれなかった。ここでもよっ、オロチを前にしたら逃げることしかできず、枝を拾うことしかできない!」
 梓の歎きというよりは愚痴が続く中、理子はすでに橙のオロチを射程にとらえ、闘いは始まる。
 太鼓橋の周囲、小木海岸側にいる橙のオロチは、八太の監視の中、硬直からグググと動き出す。
「おっ、動き出したぞぉ」
「止めなさいよ」
「師匠として弟子の腕前を見てやる」
「誰が、師匠よ!」
 八太の気楽な言葉に、丁寧に返答する理子。
 橙のオロチは首をうねらせ、海面を走る理子へ頭部にある二本のツノを向ける。それは能力の発動を予期させる動きだが、第一形態なため能力の発動はない。従って、橙のオロチがやる事は一つ、突進。
「なぁぁぁぁぁんて、喰らえオロチ!!」
 突如、八太は両拳を橙のオロチに向けて、能力【かなしばり】を空間に放つ。気持ちいいぐらいの前言撤回。
 しかし、太鼓橋という左右にしか動けない場所では、正面からの攻撃範囲は限られる。警戒さえしていたら、躱すのは容易。
 橙のオロチは八太の能力の範囲から逃げるように頭部をお辞儀するように海面へ向ける。続けて身体をうねらせて、水面を滑るように理子へ突進する。
「躱された、気をつけろ!?」
「大丈夫よ、師匠の技を見ていなさい!」
「誰が、師匠だ!」
 八太の能力のように見えない攻撃を躱すには、身体を大袈裟に動かして広範囲に逃げないとならない。すなわち、大きな動きでは大きな隙を生むという事だ。
 理子は手に残ってある枝を中空に投げると「梅川さん、枝をオロチの頭上に向けて投げて!」と梓に、更に「八太は、能力で枝を空中にとどめなさい!」と続ける。
「よしきた!」
「わかりました!」
 梓は足元、地面にあるだけの枝を拾い、太鼓橋に向かう。
「オロチ、私のコンボ技に料理されなさい!」
 理子は朱槍の切っ先を勢いよく海面に刺し、朱槍を棒高跳びの棒に見たてるように使い、身体を中空へ。
 ザバッと朱槍の切っ先と一緒に海面から出てきたのは、直径三〇センチの氷の円柱。
 朱槍を支柱に身体を中空に飛ばした事で生まれた遠心力は、氷の円柱から朱槍の切っ先を抜く。
 理子は身体を縦に一回転。朱槍を振り上げながら中空に躍り出ると、橙のオロチを正面にし、力を貯めるように朱槍を頭上で一回転、更に二回転と回す。
 朱槍の切っ先から橙色の燐光が散りばめられる。燐光は大気中で太陽光を浴びると、橙色は白や青や様々な彩色に変わる。見た目だけを言うならダイヤモンドダスト。
 先ほど理子が投げた枝は、散りばめられた燐光、ダイヤモンドダストに触れると凍っていく。
 一秒も経たず、それは一瞬に、刹那と言ってもいい時間で凍っていく枝を、理子は華麗に振り回す朱槍の柄で橙のオロチに向けて打つ。
 枝は橙の鱗の能力で氷柱と化、更に、青の鱗の能力で電気付与。この氷柱(つらら)に技名もしくは言葉を作るなら【雷柱(ライチュウ)】。
 橙のオロチへ強襲する【雷柱】。だが、理子の初撃は【雷柱】ではない。
「どっせぇぇぇぇぇい!」
 叫びながら、切っ先が鈍器と化した——橙の鱗の能力で氷の大槌になった——朱槍を数本もある【雷柱】を杭打ちでもするように、橙のオロチの頭部へ大袈裟に振り下ろす。
 ドゴンッ、バキバキ!
 氷の大槌は朱槍だけを残して砕けると、【雷柱】も紫電を散らしながら大気中に散っていく。大ダメージ確定の手ごたえを感じる理子。が、初撃、会心の一撃を炸裂させたのは……。
「なっ!?」
「やっぱり出やがった!」
 驚愕する理子の前、予期していた八太の視線の先、大量の枝を橙のオロチの頭上に投げた梓の視線の先には、朱槍の柄を脳天に喰らう狸の置物。三郎が橙のオロチをかばうように現れた。
「弟子、三郎にかまうな! とりあえずやっちまえ!」
 八太は梓が投げた大量の枝に両拳を向け、能力【かなしばり】で中空にとどまらせる。
「止めたくても、止められないわよ、弟子!!」
 お互いに弟子ポジションはお断りと言い張っているのだが、今はこの議論を棚置きし。
 コンボ技。連続で技を繰り出す大技になるのだが、この際、一撃当たったら終了という気づかいは、最初からしない。というよりできない。相手は再生を繰り返すオロチなのだから、尚更できない。すなわち、連続技における一連の動作は舞と言っても良く、初撃をぶっ放す前に止められるか最後の一撃が終わるまで続く。まさに、初撃が演奏会の始まりの合図と言っていい。
 理子は止まらない。
 否、止まれない。
 朱槍からの打撃に付与される橙と青の鱗の能力から織りなすコンボ技【氷結(ひょうけつ)雷舞(ライブ)】が、橙のオロチに炸裂する……予定が三郎に向かって放たれる。
「三郎、躱しなさい!」
 理子は独楽のように回転しながら言う。しかし、狸の置物は憎たらしいぐらい動かない。そんな動き出さない三郎に理子は気を使うこともできず、遠心力がのった朱槍を狸の置物の横腹、酒壺を持つ手にズガンッと二撃目。
「止まらなぁぁぁぁぁい!」
 と言いながら、更に回転。狸の置物のでっぷりした腹を石突きで殴る、三撃目。
 反動で体勢を変えると垂れた胸を袈裟がけに殴り、四撃目。
 朱槍を半回転させながら横に振り上げると、自己主張したキンタマに石突きを炸裂、五撃目。
 勢いそのままに身体を回転させると、朱槍を縦に半回転しつつ振り上げ、傘が下がる背中を両刃で斬撃、六撃目。
 腹に、首に、顔面に、頭頂部に、と一呼吸で一〇連コンボを三郎に決める。
 言うまでもなく、全ての攻撃は橙のオロチに一撃も当たらなかった。
「久々のエクセレント!!」
「弟子、それじゃダメだ! そんなんじゃ三郎はビクともしないぞ!」
「三郎じゃなくオロチを倒したいんだけど!」
「橙のオロチ攻略は、まず三郎を倒してからだ! 一〇連じゃ足りない、五〇連ぐらい必要だ!」
「ちょっと弟子。一〇連コンボの後に言えたもんじゃないけど、私的に三郎は敵じゃないから攻撃したくないんだけど?」
「んなもん知るか! 不甲斐ない弟子だな! 俺が三郎をぶっ倒すから槍をよこせ!」
「…………」
 理子は狸の置物の頭頂部に足を置くと、踏み込んでバク転。太鼓橋へと飛びながら、チラと三郎を見る。
 狸の置物はただただ橙のオロチの前に立っている。奇妙なのは、橙のオロチは理子と八太を威嚇するように雄叫びを挙げるだけで、三郎の前に出てこようとしない。
 理子はそんな三郎と橙のオロチに怪訝になるが、今は考察する材料が少ないと棚置きし、太鼓橋の欄干を越えて着地。八太へ朱槍を向ける。
「よし、雑魚弟子に俺の五〇連コンボを見せてやる!」
 朱槍を左手で掴んで非実体の朱槍を取る。
「誰が雑魚弟子よ。クソ弟子、疲労困憊なのに、大丈夫なんでしょうね」
 非実体の朱槍が八太の手に渡ったことで理子の手から伝わる倦怠感は無くなり、身体中に付与された鱗からの能力は理子の身体から消える。
「うおっ、冷たっ! なんかビリビリ痛い!」
 理子が付与していた能力はそのまま八太に付与されるが、そこは子供は風の子と定評のある座敷童。そして、座敷童の中でも八太はバカな子と言われ、実兄や妻にも認められている。そう、『バカは風邪ひかない』の語源になっている座敷童かもしれないのが、八太だ。
「足りん足りん足りん、この程度の寒気と関節痛なんぞ、インフルエンザの方が強い!」
 放射能さえスルーしてしまう座敷童にインフルエンザはかからない。せいぜい風邪をひくだけだ。何をどう考えて能力付与とインフルエンザを比べているのかわからないが、バカの言うことをいちいち考察する必要はない。
 八太は太鼓橋の欄干を蹴って三郎へ一直線に飛ぶ。もちろん、橙のオロチ攻略を口にしたとおり橙のオロチを攻撃するなど考えていない。狙いは三郎のみ。
「喰らえ三郎! 弥生流槍術【なんとかなるだろう之型とりあえず振り回しとけば当たるんじゃね!?】」
 長ったらしい技名と一緒に狸の置物に袈裟斬りを炸裂させる。そして、始まる連続技。
 八太の打撃は一撃一撃に轟音を鳴らし、大気を震わせる。
 朱槍を中心に迸るのは、融合されている鱗を使い切る勢いに吐き出される、氷と電撃。
 徐々に凍っていく三郎。しだいに氷の棺に封じられたように凍っていく。しかしそれでも、狸の置物は橙のオロチをかばい続ける。
 五〇連コンボに到達。尚も「がははは、くたばれくたばれぇぇぇえぇぇぇ」と止まることなく八太の暴行は続く。
 朱槍は、非実体と実体に耐久力の差は無いため、連続打撃に柄は折れてもおかしくない。折れないのは八太が加減しているからか、それとも三郎が狸の置物という『武器』で受け流しているからか、どちらにしてもそれらは当人らにしかわからない。ただ一つわかるのは、
「ちょっとそこの弟子。弥生流槍術に【なんとかなるだろう之型】なんて無いわよ」
「よっしゃあ、一〇〇コンボ達成!」
「達成はいいけど、三郎はピンピンしてるわよ。それに、なんかあれよ、ここまでやっておいてあれだけど、オロチは三郎の背後にいたらおとなしいから、ほっておきましょ」
「次は二〇〇コンボだ!!!!」
 理子の言葉を聞かず、三郎をどつくのに楽しさを覚えた八太は朱槍を三郎に向ける。
 しかし——
 理子の、八太の、見ている者全員の思惑を裏切るように、突如、不自然に、白い煙が三郎を中心に発生する。
「まずい、三郎が逃げるぞ!」
「そりゃ逃げたくもなるわよ。それより三郎から煙が出てるけど、怒ってるんじゃないの?」
「三郎の能力だ! このままじゃ俺の動きが封じられる!」
「いや、もう封じられなさいよ。見た感じ、橙のオロチは三郎の後ろにいる間は『何故か何もしない』し、白のオロチの所に向かおうともしない。どうなってるのよ? 説明してちょうだい」
「ちっくしょう! また逃げられる!」
「目的が変わってるわね」
 チラと見た三郎は、煙玉みたいな、濃い霧のような湯気を発生させながら、橙のオロチと霧の中へ消えて行った。
 濃い霧はしだいに移流霧のようになり、太鼓橋やその周辺は一メートル先が見えなくなる。
「なんで第一形態のオロチが『封印の外で自由に動いて』、『他のオロチの下に向かわず』、『三郎に付き従っている』のよ。こんなの聞いたことないわ……」

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