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フェンデル公爵夫妻の事情


よく考えると、アルフォンスが先にいる寝室に入るのは初夜の日以来だとモニカは気付いた。先日、セイン兄様のおかげでモニカは仮初めの幸せに浸っていた。

初夜のやり直しのつもりで、モニカには珍しく強気に押した気がする。

…でもそれは、アルフォンスの気持ちを無視した行為であり、むしろ彼の優しさにつけこんだ。

それでも良いと思っていたモニカだったが、気付いてしまった。

アルフォンスの事を本当に愛している、と。

その腕の温もりだけじゃなく、その優しさも愛も全て自分だけのものであって欲しい。

私が愛しているのと同じくらいの気持ちで私を愛して欲しい。好きだから、隣にいれるだけで良いなんて、モニカには無理だった。…気持ちが強くなるほど、欲張りに我儘になる。…好きだから、


どうせ振られてしまうなら、思いを伝えて、好きな人以外には優しくしてはいけない、とアルフォンス様に伝えなければ。こんな女を増やしてはいけませんよ、と。


どこかすっきりして晴れやかな気持ちなのに、視界が潤んでしょうがない。


ドアノブを握り、モニカは一歩踏み出した。



「アルフォンス様、…お待たせしてすみません」


「ぁ…、いえ。こちらこそ、突然すみません。実は…」

「あの!アルフォンス様、私もお話しがあるんです。先に良いですか…?」


「え、…。…分かり、ました」

アルフォンスはモニカの言葉にとても苦し気な表情を示したが、瞳を涙で滲ませるモニカは言葉を進めた。


「わたし、アルフォンス様にはとても感謝してます。小さな頃からアルフォンス様は私の憧れの王子様で…。私は世間知らずで、至らない所が、多々あったと思います。でも、私はアルフォンス様と結婚できて、とても幸せです。…アルフォンス様は優しいから、約束を破らず私に夢を見せてくれて…。私、今まで伝えることが出来なかったのですが、ずっとアルフォンス様の事だけを…」

「ま、待って!モニカ!」


本人は我慢しているつもりなのだろうが、ほとんど泣きながら話すモニカを苦しげに見ていたアルフォンスだったが、話しを聞いているうちに、その顔を赤く染めていた。


「待って。…まだ信じられないけど、男として、その続きは僕に言わせて」

「え…?」


「…君は昔から僕だけのお姫様だったんだ。愛してる、モニカ。ずっと昔から、君だけが好きなんだ。」


モニカは目を見開き、ただアルフォンスを見つめることしか出来なかった。


「一度はモニカの幸せを願って、君を手放す事も考えたけど、…やっぱり無理みたいだ。泣いてすがって君を引き止める方法ばかり考えていた」

照れ臭そうに話すアルフォンスに、モニカは信じられない気持ちでいっぱいだった。

私がアルフォンスのもとを離れて幸せになる、なんて…。今のモニカには想像も出来なかった。



「なんだか、随分遠回りした気がするけど。…もう一度、やり直しをさせて欲しい。…もう二度と君を泣かせたりしない、君を世界一幸せな花嫁にすると誓うよ」


「…アルフォンス様、ダメです」


「え?」


「私は、もう十分幸せなんです。今度は、大好きなアルフォンス様を私が幸せにするんです!」

「モニカ…!」


アルフォンスはモニカを力強く抱きしめた。


すれ違っていたお互いの事情を話し、顔を見合わせて二人が微笑み合うまで、あと少し。



とりあえず一段落です。お話しはもう少し続きます。

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