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デスゲームを楽しむために  作者: すずひら
間章 弟との触れあい
37/143

037 ジェードの判断

GM「あなたは非常に面白いTRPGリプレイ動画を発掘してしまったため、更新を忘れるという醜態を晒しました」

ミオ「すいません……。あんな劇的なダイスロールをしたいけど、このあとのストーリーの数回のダイスはもう振った後なんだよね……」

GM「今後のダイスに期待しましょう」

 《あなたは周囲のダンジョンの見回りを日課としています。今日もあなたは自身の好奇心に突き動かされるままに歩を進めます。すると、なにやら事件が起こっているのを発見しました》


 ジェードは今、難度13のフィールドダンジョン《叫びの森》を探索していた。

 彼はミオがオニキスに会いに行っていた1か月間に急激にレベルを上げ、今では粘性生命体(スライム)という種族の1段階上、魔粘性生命体(デモンスライム)へと進化している。魔粘性生命体は種族特性として、物理完全無効、魔法ダメージも固定ダメージに変換するというような高性能のスキルを所持している。また、スライムという種族の根幹を為すスキル《吸収》により攻撃相手のHPを若干ながら吸収することで、擬似的な自前の回復手段とすることもできる。

 これほど彼が強いのは、やはり、レベル200カンストののちに中級種へと進化したことが大きい。この世界の魔物は基本的に初級種。変異種以外は自力でのレベルアップができないという仕様上、中級種の数は非常に少ない。種族によって1レベルの重みが違うとはいえ、神話の一節に登場するオニキスでさえ中級種ということを鑑みればそのことが分かるだろう。

 つまり、彼は既に難度13どころか、難度150程度のダンジョンまでなら単身で余裕を持って攻略できるだろう実力を持っている。

 そんな彼が難度13のダンジョンにきているのには様々な理由がある。一つは自身のスキルの性能実験であったり、一つはスキルレベル上げであったり。もっとも大きな理由は見たことのない世界を見たいという好奇心ではあったが。


 「ん、これは……」


 そんなジェードが深くなってきた森で耳にしたのは魔物と人間の戦いの音だった。


 「来るぞ……構えろっ」


 戦っているのは前衛職の男が一人に、中衛一人と後衛が二人。あまりバランスがいいパーティーとはいえなさそうだ。対する複数の《ハウリングウルフ》が前衛の男を抜けないからいいものの、後ろから別の魔物に奇襲でもされれば中衛一人では対処しきれない可能性が高い。装備を見ても、前衛の男以外はあまりいいものを付けてないように見える。

 おそらくは低レベルの3人をレベリング中なのであろうとジェードは見当を付ける。彼のマスターはレベルを特に気にしてはいないようだが、普通レベルというのはとても重要なものだ。それはジェードが中級種へと進化したことからも分かる通り。

 途中、何度かひやりとする場面を挟みつつも戦闘を終えた男たちはその場に腰を下ろし休憩し始めた。


 「(見張りも立てずに全員で休憩とは……。危機意識が低すぎるんじゃないのか。そりゃあこの森に出る魔物は必ず接近前に吼えるから奇襲はうけにくいとはいえ……)」


 自らのマスターとの意識の差に呆然としつつジェードは男たちを眺める。彼のマスターならば、ダンジョン内で休憩する時は必ずジェードを盾にできるように彼を抱きつつ、自身の探索スキルで周囲の警戒は怠らない。なにせ、レベル1、HP15なのだ。一撃を受けただけで死ぬ可能性があるのだからそのくらいは当然の対処であろう。

 もっとも、最近はジェードが新しく修得したスキル《挺身》によって一撃死の可能性は大幅に減少しているが。


 「(……と、これは)」


 呆れかえっていたうちにジェードの眼前の状況は変化していた。いつの間にか先ほどの男たちは4人の新しい男たちに囲まれていた。

 ……いや、すでに先ほどの男たちの後衛が一人地面に倒れている。


 「(だから警戒を怠っちゃいけない)」


 この世界では盗賊の襲撃などによる死亡事故など日常茶飯事である。ダンジョン内で魔物にだけ気を付けるというのはあまりにもお粗末な心構え。


 「(だが、こいつら盗賊ではないか?)」


 ジェードの内心の疑問に答えるような会話が聞こえてくる。


 「お前ら、プレイヤーかっ!? なぜこんなことをする!」

 「はぁ、なぜって、何言ってんのお前。楽しいからに決まってんじゃん」

 「お前らこそ何言ってやがる、これは立派な殺人だぞ!」

 「殺人じゃないですPKですぅ~ゲームなんだから別に殺したっていいだろ」

 「そうそう。経験値も入るしアイテムもドロップするし、魔物よりおいしいじゃん?」

 「ふざけたことを……!」

 「俺らさぁ、このあと派手なパーティー企画してるんだよね。君たちにはその招待状代わりにでもなってもらおうと思ってさー」

 「俺ら的に今のこのゲーム温すぎって感じ? お前らみたいに意識低すぎて萎えるんだわー」

 「狂ってやがる……」

 「ベルムンクさんにその言葉は褒め言葉だって―の」


 話は終わりとばかりに囲んでいる男たちが武器を構える。囲まれている側も必死の表情で同じく武器を構えるが、腰が引けている。人数でもいまは負けているうえに装備も負けている。このままいけば普通に殺されるだろう。


 「(どうすっかな)」


 ジェードは少し思案した。彼は魔物とはいえ、いまはミオの眷属である以上人間側に属すると考えてもいい。同族のスライムばかりは好んで殺したくはないが、特に思い入れがあるわけでもないし状況によっては普通に殺すだろう。

 そんな彼の立ち位置だ。だから別にここで男たちを助けて恩を売ってもいいが。

 

 「(ただ、こっちは分体なんだよな)」


 ジェードの本体はいま宿屋でミオと戯れている。こちらにいるジェードはスキル《分体》によって生じた分身体である。性能的には変わらないもう一人のジェードとでもいうべき存在を作るスキル。某忍者漫画の“影分身”のようなものだ。

 ただし、分体の方が使えるスキルは《吸収》と《変形》のみ。よって、《変形》から派生した《体積変化》―《形質変化》―《擬態》の各スキルは使えない。つまり、ここで男たちを助けるのは人型のジェードではなく、魔物のスライムだ。これでは恩を売るというのは難しい。

 

 「まぁいいか」


 つぶやき、その場を後にするジェード。背後では男たちの苦悶の声が聞こえる。すぐには殺さずに嬲っているのだろうが、既にジェードの関心は向いていない。別に見ず知らずの男たちを助けるほどジェードもお人よしではないし、だいたい今回に至っては完全に囲まれた側の注意不足だ。

 しかし、ジェードはのちのちこの判断を後悔することになる。

 PK集団はこの4人だけではなく、一つのギルド《グリードグリム》の構成員全員がPKであり、彼らはのちに大きな事件を起こすのだ。

 ――そしてその事件に彼のマスター、ミオが巻き込まれたためである。


さて、そろそろ話が重くなります。痛い表現とかも出てくると思うのでちょっとご注意をば。

更新忘れてたのはほんと……すいませぬ……。

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