140 ダンジョン同行
ミオ「新年あけましておめでとうございます」
GM「今年もよろしくお願いします」
ミオ「お正月は体重計が怖いね」
GM「ええ、まったく……」
「あ、よかったら一緒に来る?」
ミオは軽い調子でそうガイナス達に告げた。しかし、誘いの先は一攫千金を夢見る冒険者たちが幾多命を散らす魔の巣窟。栄光都と死が隣り合わせで存在する場所――ダンジョンである。
ゆえにガイナスはやんわりと断ることにする。彼らとて数々のダンジョンを攻略してきた実力者ではあるものの、パーティーの仲間を二人失った状態で、実力的に遥か格上であるミオ達が挑むダンジョンについて行くほど無謀ではない。
「ミオさんたちが行くならA級ダンジョンですよね? 足手まといになると思うんですが……」
「んー、一応A級の《クリスト大迷宮》ってとこだけど。実は今回のダンジョン攻略はダンジョンのクリアが目的じゃなくて、実力を鍛えるために行くわけだから無理はしないよ」
「“あの”クリストで鍛える、ですか……だったらなおさらでは?」
「ああ、鍛えるのはジェード君やオニキスじゃなくて、ハウ君とルビーだよ」
自分の事を言われているとは考えていないミオ。ガイナス達からすれば、満身創痍だったとはいえ自分たちが死にかけたメルフィス火山を、弓一つ身一つであっさりと攻略して見せ、更にファスザールを単独で撃破したというミオの存在は格上どころか雲上人のようなものなのだが、当のミオにとってはステータスや能力で自分の上を行かれているジェードやオニキスがすぐ身近にいるために、自分がそこまで強いという感覚はない。
最近ではジェードやオニキスがやたらとヨイショするために「自分はもしかしたらDランク冒険者の中でもそれなりにデキる方なのでは?」と思い始めたのだが、装備なしの生身ならともかく、幻想級装備を3つ、礼装を2つ装備している彼女は普通にSランク冒険者など相手にもならないほど強い。Cランクだとかその認識は甚だ間違っているといえる。
そんなミオが今回ダンジョンを攻略しようと考えたのは、ハウライトとルビーを鍛えるためである。経験値の荒稼ぎをするには魔物が多く発生するダンジョンは都合がいいのである。
ダンジョンが死と隣り合わせの場所という認識はあるものの、レベル1で持ち物:スライムだけの状態で特に物怖じもせず《久遠の彼方》という高レベルダンジョンを攻略したミオである。死への恐怖心は薄い。
今回ガイナス達黒の旋風をダンジョンアタックに誘ったのも、「ルビーのレベリングも一緒にやる人がいた方が寂しくなくていいかな」程度の軽い認識であった。
ガイナスは「少し失礼」と言ってミオから離れ、ケリー、ビスチェ、キースにことを相談する。返ってきた返事は概ね好意的なもの。
ケリーは、「いずれA級ダンジョンには挑戦しようと思っていたのだから、ミオさんたちが付いているなら条件的には最高だと思う」、ビスチェは「ミオさんと一緒に冒険してみたいです!」、キースは「旦那の判断に任せまさぁ」といった具合である。
「決まりました、ミオさん。よろしければ同行させてください。俺たちにとってもいい経験になると思いますし」
と、そこでガイナスは言葉を切って、☆リィ☆リゥ☆達の方へ向き直る。
「リー達も王都へ送るという依頼だったが、今はさっき話に出たようにかなり荒れた状態らしいからな、近寄らない方が無難だろう。A級ダンジョン《クリスト大迷宮》の周りは大きなダンジョン都市になっているはずだから、そこまで送ることにしたいのだが、どうだろうか?」
ガイナスの言葉に、リーが代表して応える。
「えーと、A級ダンジョンってよくわからないんですけど、どれくらいの強さの魔物が出るんですか?」
「A級ダンジョンは難度100以上だから、魔物のレベルは100を超えるものも出てくると思った方がいい。その中でもクリストは難度140だか150だかのかなり高難度のダンジョンだ。地下へ降りていく遺跡型ダンジョンだそうだが、いまだに上層の一部しか攻略されていないと聞く。そのあたりでもレベル120以上の魔物は目撃されているそうだ」
「えっ、それじゃあミオちゃん――ミオさんはそのダンジョンを攻略できるんですか!?」
リーの質問にミオは少し考え込む。いままで攻略したことのあるダンジョンは、オニキスと出会った難度50《久遠の彼方》、さらっと流した攻略ではあるがファスザールと不幸な遭遇をした難度80《メルフィス火山》、そして始原王と死闘を繰り広げた難度300オーバー《始まりにして終わりの地》。
これまでの経験を踏まえて、結論を出す。
「うん。まぁ多分わたし一人でも大丈夫かな。ジェード君かオニキスがいれば絶対安全を保障できる程度には余裕だとは思うよ」
自分の強さは自覚していないにもかかわらず、現実的・客観的な戦力分析はできているあたり彼女が如何に自身についての理解がないか分かろうというものではあるが――この答えに《星風旅団》の3人は目を輝かせた。
「それは凄い」「驚き」「はービビるわー」
3人はミオ達から少し距離を取り、ひそひそと相談し始める。
「なぁこれって育成系のイベントっぽくないか?」
「同意」
「レベル150の魔物を楽勝ってやばいわービビるわー」
「そんな凄腕のNPCが監督してくれるってことだよな」
「Cランクと言っていたから、Bのガイナスさん達よりは下。だけどそれだとガイナスさんのあの態度はおかしい」
「だよなー。どう見てもマジリスペクトって感じだよなー」
「あの態度と雰囲気見る限りかなり実力に差はありそうだよね。ガイナスさんたちですら僕らじゃ勝てないほど強いNPCなのに」
「見た目は幼女だけど、とてもキラキラした強そうな装備もしてる」
「な。見た目すっげー可愛い美少女だけどなんか訳アリっぽいよな。人間じゃなかったりして」
「見た目は幼いけど長寿の種族とかかな。ゲームだし設定としてはあるかも」
「吸血鬼とかエルフを所望」
「耳は普通だし森人はねーんじゃね?」
「吸血鬼は……どうだろ。肌はかなり白いけど普通に日光苦手そうな感じもしてないし」
「そういう高位存在かもしれない。ロリババア吸血鬼は浪漫」
「いやー俺は参謀の性癖いまだにわかんねーわ」
「ョゥヵ、そこには触れちゃダメ。話それたけど、王都の反乱はキャンペーンっぽいって《グリフィンナイツ》が掲示板に情報あげてたし、いまからフラグ取りに行くのも面倒だよね。このままこっちの方進めてみる?」
「賛成。あの幼女NPCも気になるし、レベル上げの魅力もある」
「他のプレイヤー誰も行ってねーダンジョンってことはお宝もガッポガッポじゃねー?」
「よし、じゃあ決定」
《星風旅団》の三人は、ミオ達の前まで戻ってくる。
「あの、もしよかったらそのダンジョン攻略、僕たちも参加させてもらえませんか?」
「お前たちがか? 流石に死ぬぞ? 俺たちも流石にダンジョン内でまで護衛できるほど余裕もないしな」
「えっと、そこをどうにかなりませんか、ミオさん」
「ん、いいよ。おいでおいで。3人増えるくらいならどうってことないよ。最初は誰だって弱いんだから。何事も経験経験」
困ったように懇願するリーに対して、ミオはかなり軽くウェルカムだった。というのもルビーと一緒に頑張る人が増えるというだけでなく、ミオのリーに対する好感度は出会ってすぐの今現在で既にかなり高いのである。
笑顔の似合う好青年がミオ“ちゃん”でなく、ちゃんとミオ“さん”と呼んでいるという、ただそれだけのことではあったが。
ちょろいヒロインである。
年内にもう一話上げるといったな。あれは嘘だ(ズドン)
そんなわけで金が信念。あけましておめでとうございます。
年末の忙しさには勝てなかったよ……。
更新速度は亀の如し、話の文量は鶴の羽毛の如し、一富士(不死身のジェード君)二鷹(オニキスはグリフォンだから正確には鷲獅子)三茄子(なんでなすびなんだろう。苦手)、と縁起のいいデスためをこれからもどうぞよろしくお願いします!
なすびは本当に苦手……。




