第九十四頁 アイライン
彼女、アイラインは類い希なる魔術の才を持つ女性であった。魔術の自在に操る腕は随一であった。しかし、彼女の最も特質すべき能力は召喚術であった。
その時代、界変戦争と呼ばれる大きな争いがあった。
勢力は、魔界に潜む魔物と、人間界に住む人間。その間で大きな大きな争いがあったらしい。。
世界が目茶苦茶と言うより、世界が歪んだらしい。
ここ、いまいち意味がわからない。
魔物の中でも、超常的な強さと魔力を持つ六竜と呼ばれる存在がおり。この六竜がその力で自然も、空間も、時空も、目茶苦茶にしてしまったらしい。
初めは、魔界と人間界。両者の領土? と言うか、世界の奪い合いだったらしいが。六竜の所為で世界は歪み、異界成るものが産まれてしまったとのこと……
異界はその存在事態が異質で、魔界も人間界もまとめて呑み込み異界へと変質させてしまった。
この際に双方に大きな被害があり、壊滅状態に陥った。
アイラインは自らの召喚術を行使し。六竜の全てを配下とし。その力を使い異界を閉じた。
しかし、その際に変質した世界は戻ることなく、魔界と人間界の掛けた世界同士は崩壊の兆しを見せた。
魔術師達はこれを防ぐ為、二つの世界を合わせ、掛けた部分を補い、一つの世界に変えた。
それが、現在の世界。
やがて、六竜を失った魔界は急速に力を失い。影へと消えていった。現在の魔物、魔獣達の祖先である。
そして、世界を一つに纏めたのが我々人間である。
「と言うのが、ざっと三千年前の話だ」
「さ、さ・ん・ぜ・ん・ね・ん!!」
昔話の様に語っていた、オーク先生の言葉に私は驚愕の声を挙げてしまった。
ビックリする程、昔の話だ。
そして、アイラインさん。ほぼ女神の立ち回り。
そんで、私は一体何者ですか!?
「まあ、アイラインはそんな役割を果たしたらしい。他にも沢山の魔術師がそれに関わり、その流派を今に続けていると言うのが我ら学園と言う訳だ」
「は、はぁ……」
凄いお話だこと……
そんで、この本にはその召喚術の基礎が記されていると……
「ま、まあ…… 取り敢えず、読んでみます」
「うむ、しっかり読むといい……」
☆★☆
かなりこの本は古い。素材はぶっちゃけ和紙的な物だと思う。羊皮とかではない。所々に繊維のような物が見える。
まあ、これが本当に繊維なのか、和紙なのかもわからないけど……
でも、和紙って保存できて精々千年とかでしょ。
確か、羊皮紙とかはもっと短い……
となると、これが三千年前の情報を丸っと正確に残してるとは考えずらいな。少なくも、三度程の写本を経ていると考えた方がいい。
その間に、政治的な理由等で内容が書き換えられたりしている、と言う懸念は持っておいた方がいいだろう。
責めて、魔術の手解きについての改編や誤写が無いことを祈るばかりだ。まあ、そこは天下の学園だ、抜かりないだろう。
先ずは初めは、オーク先生が話していた歴史について。そして、次が召喚術の応用技術。
これは、普通に有用な情報が沢山書き込まれている。
例えば、自分…… この場合は術者と行った方が良いだろう。術者よりも魔力が多い魔物を召喚獣とする場合。事前に魔力を消耗させることにより、契約の成功率が上がるとか……
これはポ○モンと同じ理論。
ただ、この場合。召喚獣の全ての能力を使うことは難しく。一部だけを召喚することで支配下に置く必要があるらしい。
下手に召喚してしまうと、暴走してしまうとのこと。
こちらから魔力の供給を絞る方法だと、相手の能力次第では魔力を吸い取られてしまう恐れがあるらしい。
最悪、死に至るとのこと……
私は今まで、余程運が良かったんだろうな。皆、私のことをある程度認めて召喚獣になってくれたから、そうはならなかったが、下手したら死んでたかもしれなかったんだ。
本当に皆、今まで私に力を貸してくれてありがとう。未熟なバカ女だけど、これからもよろしくね。
あのユニコーンも呼ぶ時が来たら、気を付けなくちゃ。
他にも、色々書かれてる。例えば、契約の方法について。
私がよくやっていたのが魔物と心を通わせて、契約する方法。これはしっかり心を通わせ、契約を結べば一番安全だけど、一番難しい方法となってる。
基本、魔物と心を通わせるのが無理みたい。
そうなのか? と感じけど、どうやらそうらしい。
普通は自分の魔力を“何か”相手に縛る物に変換して、相手の魔力を根こそぎ奪って封印するのが普通らしい。この“何か”とは拘束能力の有る物なら何でも良いらしい。
鎖とか、糸とか、檻とか何でも良いらしい。
それで魔物を封印する。私だと本に封印する様になっている。
しかし、普通は自分の魔力の中、と言うか身体の中、と言うか。何かそう言う感じらしい。ここよくわからん。
ううむ、基本は理解できるけど、よくわからん所もあったりするな。
「どうだアイラ?」
「うわぁぁ!! ビックリしたぁ!!」
見るとオークが私の顔を覗いてきた
あぁ、ああぁぁ…… オークかと思ったら、オーク先生だった。ビックリしたぁ……
え、え? て、て言うか。
オーク先生、ずっといたの?




