第九十ニ頁 図書館
さぁ、いざ!! 図書館へ、と思ったのだが。よくよく考えてみると、私は図書館のある場所を知らん、教えられたかも知れんが忘れた。この学園は無駄に広すぎる。もうわけわからん。
と言うことで、ちょうどそこら辺にいたオーク先生に連れて行って貰うことにしました。
やはり、待つべき物は気安く話しかけられる先生だよね!!
「ほれ、ここが図書館じゃ……」
それは図書館と言うにはあまりにも大きすぎた、まるで国会図書館だった。まあ、国会図書館行ったことないけど。もしかして、国会図書館みたいに、食堂があったりするのかな?
国会丼とか、売ってねぇかな?
「よいか、ここの本は園内での貸し出しが基本だ。園から持ち出しは禁止しておるからな」
「は、はい! わかりました!」
そう言うと、オーク先生は図書館へとおもむろに歩き出した。どうや、先生と図書館に用があったらしい。
私はオーク先生の後ろについて、図書館へと足を踏み入れた。
「ふわぁ……」
大量の本が並んでおる。
あっちもこっちも本棚。全部で三階程あるのだろうか。上階までぶち抜きの吹き抜けになっており、三階まで本棚がギッチシ詰まっているのが一目でわかる。
所々に椅子や机があるが、殆どの人はそこら辺の床とかに座って本を読んでいる。
しかも、その周りには本の山が築かれている。
誇り高き本の蟲達である。
「所でアイラよ。お前は何を調べる為にここに来たんだ?」
「え?」
ええと、それは召喚術について調べに来たんだけど……
これは言っても大丈夫なのかな?
なんか、厄介事とか起きねぇかな?
私が悩んでいると、オーク先生は溜め息を吐きながら口を開いた。
「まあ、自分の企みを話したくないのは、わからんでもない。この世界では、いち早く論文を発表した物が功績を得るからな。つまり、早い者勝ちの学問じゃ、下手に他者に情報を渡したくないのも理解できる」
いや、別にそう言うと訳じゃないのだがな……
色々と難しい話が立て込んでいて……
しかも、これを話していいのか、話さない方がいいのかもよくわからんのじゃよ……
難しい顔を浮かべている私の事などいざ知らず。オーク先生は言葉を続けていた。
「だか、よいか。アイラよ、この蔵書の数々を見よ」
そう言うと、オーク先生はだだっ広い図書館をまるで包容するかの様に両の手で示すと、こちらを向いて笑って見せた。
「これだけの量から、お目当ての本を見つけることが出来ると思うか? 因みに地下にも本があるぞ、館内閲覧専用の本だがな」
うっ…… た、確かに……
なんだか、考えただけで目が回ってきた……
そもそも、どういう配列に成ってるのかもわからん。しかも、魔術書を読めるかも疑問がある。理解できない可能性なんて、かなり高い。
折角、最高の本を手に取っても、それがそうであると理解出来ないんじゃあ、話にならない。
「ほれ、どうだ? 言ってる意味がわかったか?」
「は、はぃ……」
完全にわかった。
わかりますた。
「ほれ、言ってみろ。何について調べるつもりだ?」
「あ、あのぉ…… しょ、召喚術にいつて……」
恐る恐る、そう口にする。
果たして、これでオーク先生はどう言った反応をするのだろうか?
「しょ、召喚術じゃと?」
見ると、オーク先生は目を丸くしている。
こ、この反応は大丈夫か? べ、別に勉強したいだけでだから、そこまで問題になることではあるまい。たぶん……
「がっはっはっはっ!! 召喚術か!! これはこれは、お前も相当な魔術狂いだな、はっはっはっ!!」
うわっ!! 思ってた反応とぜんぜん違った!!
少しは訝しげな反応があると思ったけど、めっちゃ笑われた!!
これは何? 馬鹿にされてるの? 面白がられてるの? どっち?
「いやはや、すまんすまん。久しく見ぬ程の魔術狂いに声をあげてしまった。お前の思想を嘲笑った訳ではないぞ。そこは勘違いさせたのなら悪かった、すまん」
そう言うと、オーク先生は軽く頭を下げた。
いや、意味がわからん。全然、意味がわからん。
「あ、あのぉ。私は今、そんなにおかしなことを言ったんですか?」
「ははは、まあな。相当に面白おかしいことを言ったぞ!」
そう言うとオーク先生はおもむろに歩き出した。取り敢えず、私もその後に着いていく。
「まあ、お前は自分が何を言ったのか理解してない様なので教えるが、結論、現在では召喚術はほとんど失われている」
え? 嘘ぉん。でも、私は使えますけどぉ?
「まあ、焦るな。現在、正式な召喚術を使える魔術師が居ないと言うだけで、召喚術はまだ残っているし、召喚術についての本も保管されとる」
ほほう、なら本はあるのか。
それは良い情報だ。もう使える人が居ないとか、中々ビックリする情報が飛び込んできたけど、そこは無視しよう。
「しかし、最後に正式な召喚術を使えた魔術師は百年程前に生き絶えたらしくてな。そのまま、召喚術の知識もノウハウも徐々に廃れ。今は学ぶ者も居なくなってしまった」
オーク先生は語りながらも一歩一歩と歩みを進めている。そして、有るところで立ち止まると、そこで床を指差した。
「そして、学ぶ者が居なくなった学術書は、日の当たらぬ地下で今現在も眠っている」
見ると、オーク先生の足元に扉のような物ある。
恐らく、これを開けると地下へと続く階段が有るのだろう。そして、そこには召喚術の本がある。
もしかしたら、ここでは私の力がどういう物なのか、知ることが出来るかもしれない。
「行くか、アイラよ?」
先生の問いかけに私は力強く頷いた。




