第二十二頁 アト・クラフトの街
空が真紅に染まった頃。俺ははじめての街に辿り着いた。
「ほら、着いたぜ。ここがアト・クラフトの街だ」
「ほ、ほぇ」
眼前には視界を埋め尽くす数々の西洋風の民家が目に飛び込んでくる。
オレンジや青、赤と言った色鮮やかな建物等が立ち並び、それが景観と通路を作っている。
建物の素材は木材やレンガだろうか、何処か暖かみを感じさせるデザインをしている。
当たり前だが、まるで日本のそれとは違う。
建築スタイルも様々有る様に見える。ハーフティンバースタイルの様な骨組の素材となった木材が……
……ああ、面倒臭いからナーロッパでいいや。ナーロッパみたいな感じの世界観。もう凄い。絵本とか、お伽噺の世界に来ちゃったみたい~!!
って、それより……
「疲れましたぁ~ 早く休みたいですぅ~」
俺は思いっきり溜め息を吐くと、膝に手を当てて見せた。
「もあもあ、きゅぅ~」
俺の隣にいたマシマロも地面にへたり込んでいる。流石のマシマロもかなり疲れたらしい。俺はマシマロを労う為に頭を撫で付ける。
すると、少し元気になったのかマシマロは嬉しそうにこちらを見上げて見せた。
可愛い、もっと撫でてあげよう。
いや、それにしても本当に疲れた。俺はマシマロを撫でながら、先程までの事を思い返した。
明朝から夕方まで歩き通し。そして、休む暇も無い。キツイなんてもんじゃない。全く頭おかしいんか、この世界の人間は!
タフネスの塊か!?
冷静に考えると十時間くらい歩いたんじゃねぇのか。普通は馬車とか使うじゃろ。それを歩くって、おいおい、これが普通なのか? 普通じゃなかったのなら納得もする。だか、これがもし普通だったら、俺はこの世界で生きていけんかもしれない。
「もあ~」
マシマロは今も地面にへたり込んで。
うう、本当に頑張ったよ、お前。
歩くのも覚束ない、その足でこんだけ歩くなんて。
「えらいねぇ、マシマロ~」
「もあもあ~」
思わずマシマロを抱き上げ、撫で回す。
マシマロも嬉しそうに俺の腕の中で転がり回っている。
そんな俺達を見てザックさんが可笑しそうに笑い声を上げた。
「ははは、何へばってんだよ。情けねぇ」
「そう言わないであげて下さいよ、ザックさん。女の子で文句の一つ言わずに付いてこれたら凄いですよ」
そうだよ。俺は女の子だぞ。
私だよ私。大したモンだよ。
「ははは、まあ、根性はあるじゃねえか。帰ったらギルドで部屋でも借りて休みゃいい。まあ、先ずはその大切そうに抱えた骨を教会に持ってってからだがな……」
ザックさんはそう言うと、俺がかたわらに置いてある物を指差した。
そうだった、まだコレがあったんだった。
「きょ…… 教会は何処にあるんですか?」
「この街のハズレだな。なに、ちょっと歩くだけさ」
うぅ、もう少し歩かなければならないのか……
アルさんは俺の苦悶の表情を見るのが嬉しいのかニヤニヤと笑っている。このクソヤロー、鬼畜外道人間め……
「くぅぅ、早く行きましょう。早く済まして、さっさと休みましょう」
俺はマシマロを地面に下ろすと、最後の力を振り絞って立ち上がり、再び歩き出した。




