決着
殺風景な景色だった部屋は、2人の戦闘によりさらに殺風景な物へと変わる。
壊し、傷つけ、ビルそのものが1階から崩れ落ちてしまいそうなほどに部屋の中は荒れている。
獅子が爪を振るう度に部屋の中に斬撃音が響き、龍が爪を躱す度に砂埃が舞う。
獅子には知性の欠片も残されておらず、完全に獣と同化している。しかし、リミッターが外れたのか攻撃力、速度共に比にならないほど上がっていて、それは龍を押していることによって明らかだった。
例え、龍がどれほど凄い未来視を使おうが、それに反応出来なければ全く意味が無い。
体力を少しずつ奪われていく龍とは反対に、獅子の動きはより俊敏なものに変わっていく。
しかし、龍にも能力の段階がまだ残っている。それは『眼』だけを使うのではなく、『竜』そのものになること。それには言霊を大量に消費し、自分自身が動けなくなる可能性もあったが、緊急事態に迷ってる暇などない。
「画竜点睛……!」
もう一度竜の眼へと変化を遂げ、腕が徐々に硬くなり鱗が生え緑色へと変色していく。
自我を失った獅子は、そんなことお構い無しに突っ込んでくる。砂塵を掻き分け、龍の目の前に急接近をし、爪を伸ばし、あと5cmの所で獅子の動きは急停止をする。
獅子の腕は、竜の腕に掴まれている。ジタバタと藻掻く獅子を他所に、ひと思いにその腕を握りつぶす。こんにゃくのように簡単に潰れていく獅子の腕は、使い物にならなくなる。
その場で呻きをあげ一旦よろけるがすぐに左腕を伸ばし反撃を図る。が、その腕も同じく簡単に潰されていく。
龍は動じず、淡々と獅子の四肢を破壊していく。右脚、左脚……微かにでも動くようであれば、徹底的に、冷酷に。
爪を剥がれ、牙を抜かれ、機動力を失った獅子はとっくのとうに能力は解けていた。
「龍……許さねぇ、まだやるぞ…」
「お前に時間を掛けすぎた、これ以上遊んでいる時間はないんでな。そろそろ更生したらどうだ?」
「…この裏切り者が……ぜってぇ殺す」
それを最後の言葉に獅子は意識を失う。龍はそれを確認すると、花梨の元へと駆け寄る。多量出血で意識を失いかけている。今すぐに病院に連れていかなくてはならない、しかし上の階にいる隼人達のことも気になる。
わずかの間考え、花梨を病院へと連れていくことにする。上の階に危険がないことを祈りながら。