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強敵

 隼人と悠太は逃げていった敵の一人を追うために3階へと向かう。階段を駆け上がり、次のフロアを見渡す限り2階と変わらぬ殺風景な部屋。しかし、その部屋に人の気配は全く無く、まるで霧のように消えたかのようだった。


「おかしい……逃げてからすぐ追いかけたはずなのに」

「机の下とかに隠れてるんじゃないか? 探せばその辺にいるだろ」


 そう言いながら机をひとつひとつ確認していくが、埃が薄く溜まっているだけで特に変わった様子はない。

 一通り探し終わって成果も得られなく、椅子を引き、そのまま座って机に頬杖をつく。

 それを見ていた悠太も向かいの席に座り、同じように頬杖をつき、ブツブツと何かを唱えながら考え事を始めてしまう。


「よし、悠太! 上の階に行こう」

「何言ってんだ、ここは先生のところに一旦戻るべきだろ」


 意見は食い違い、話は平行線を辿りそうになる。互いに意見を譲らず、妥協せず、そんなことを続けている間に一人、接近しているのに気づかなかった。

 それは唐突で、対応する間もなく目の前から悠太が消える。厳密に言えば、一瞬で吹っ飛ばされたのだ。


「悠太…!!」


 壁はプリンのように脆く崩れ、悠太自身もプラスチックでできた玩具のように簡単に飛んでいく。


「なんだぁ…俺の敵はこんなガキ2人かよ」


 気だるげに姿を現した敵は、物足りないと言うような目付きをしている。

 身長は180cmは超えていて、体格もボディービルダーかのように逞しい。体格差を見れば戦力差は歴然で、さっきの一撃でそれも証明されている。


「くそっ……疾風迅雷!」


 ワンテンポ遅れたがすぐに能力を発現し、椅子と机を周りから吹き飛ばし、瓦礫のサークルを作りあげる。それと同時に疾風のように速く走り、相手との距離を一気に詰める。


(油断している相手に一撃だけでも……)


 不意打ちの一発。数メートルあった間合いを一瞬でゼロ距離にする。

 突っ立っているだけの下腹部に全力で殴りかかろうとした瞬間、自分のお腹の方に激痛が襲い、それと同時に両脚が宙に浮く。それを自分が『蹴られた』と気づく頃には悠太と同じように壁にめり込んだいた。


 瓦礫を払い2人はなんとか立ち上がる。戦力差に呆然とするが、それでも諦めることはしなかった。


「悠太、俺はもっかいやるからな」

「2回もやったって成功するわけないでしょ、作戦を考えよう。」

「その作戦は任せた……!」


 それだけ言うと、もう一度同じように相手と間合いを詰める。相手の蹴りの範囲内に入ったと思った瞬間、左に方向転換をする。


「ナイス!」


 悠太は思わず声を上げ、そのまま一石二鳥の能力でコピーした疾風迅雷を使い、雷を身体に纏わせ相手の右側へと走っていく。


「ガキが…ちょこまかと鬱陶しい」

  「うるせぇ! 2人同時に攻撃できるもんならしてみろ!」

 「あ? これだからガキはよぉ!」


 敵は挑発に簡単に乗り、すぐに我を失う。

 隼人は怒らせた相手に思い切り突っ込み、さっきと同じ要領で敵の範囲内に入ったと思ったら方向転換をし、攻撃を難なく躱す。

 意識がこっちに向いた瞬間に悠太が雷の纏った拳で相手の顔面を殴りつける。

 それに反応した敵は、悠太に殴りかかろうとする。そのタイミングに合わせて、今度は足元を狙って崩しにかかる。倒れ込んだ敵を見るや否や、鋭く尖らせた雷の槍と、カマイタチのような斬撃で追撃する。


 「手応えありだな」


 思わずそう言い、膝立ちのままの敵にもう一度攻撃を仕掛けようとする。


 が、しかし。


 敵は能力を発動し、順調に埋めていたはずの戦力差が更に大きく開いてしまうことになる。

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