第95話「回復」
回復魔法とは本来、他人の傷を癒すためのモノだ。
そして、それは自然治癒という考えを人間からもぎ取ったほどの恐ろしい代物だ。
だからいろいろな施設で研究されているし、回復役としてもいろいろな場所で重宝されている。
それはもちろん、病院などでもだ。
例えば、この世界で医者という医者はほとんどが内科医だ。
なぜなら、外傷は全て回復魔法の使い手が治してくれるからだ。
それも、回復魔法を使わない医者よりも完璧に、何十倍も何百倍も早く。
そして、そのおかげか、回復魔法の使い手は生まれた時点でほとんど就職先が決定していると言われている。
もちろん、医療関係の仕事だ。
実際にうちの学校の養護教諭になるためには回復魔法が使えることが条件である。
だが、高田さんの相手は回復役として本陣で傷ついた仲間を癒すのではなく、自分ひとりを癒し続けることで魔力が尽きるまでずっと戦い続けるという独自の戦闘スタイルを創り出した。
もちろん、一撃で倒されたら回復のしようがないが、一撃で倒されないことを前提とした戦い方で、ちゃんと急所は守っている。
ちゃんと自分だけの武器の強さ、弱さをちゃんと認識していて、尚且つ、ちゃんと自信の弱みをちゃんと守っているのだ。
おそらく、魔力が尽きるまで何度吹き飛ばしても、斬っても、突いても、彼は立ち上がるだろう。
だから、倒されないし、強い。
だが、おそらく高尾さんやオレなら倒すことはできただろう。
なぜなら、高田さんは拳で戦っていて、一撃で仕留めることは難しいが、オレたちは剣や銃で一撃で仕留めることができる。
──結論を言ってしまえば、高田さんとあの相手との相性は最悪だったのだ。
だから、勝てなかったのだろう。
オレはそんなことを思いながら、ボーッと画面を見ていた。
そして、
「終わったか。」
隣から瀧川紫龍の声がした。
──今、オレの目の前にある画面には、高田さんが倒されたところが映されていた。




