第80話「暑苦しい男」
もうすでに夏休みに入った。
なので、季節は真夏真っ盛りだ。
なので、外はすごーく暑い。
ホント、溶けそうなくらいに。
だが、オレは、いや、オレたちは闘技場にきていた。
なぜなら、夏休み中に魔法学園競技大会夏の部をやるからだ。
だから、もちろん、オレたちは擬似魔法戦争の選手として呼ばれている。
なので、本当は家から出ずに、涼しい部屋でくつろいでいたいのだが、高尾さんに呼ばれてきていた。
こんなにも暑いのによくやるなぁ、と思う。
そして、全員が集合し、特訓が始まる直前、とある男が入ってきた。
和服姿で長い黒髪を後ろで束ねている男だ。
だが、なぜかどこかで見たことがあるような気がする。
「おぉい、神谷慧って野郎はどいつだぁぁぁあ!!?」
男がどういった人物かを、思い出そうとしていると、男は叫ぶ。
その叫びを聞く限り、非常に暑苦しそうな男だ。
なぜ、こんな暑苦しそうな男がウチの学校にいるんだ?
見たかんじ、教師じゃねーだろ。
だが、問題点はそこではない。
問題点はオレの名前を呼んでいたこと。
この一点に尽きる。
なぜ、オレの名を呼んでいるんだ?
こんな暑苦しい知り合いはオレの記憶にはいなかったはずだ。
まぁ、こうしていてもあの音の機嫌が悪くなっていきそうなので、とりあえず返事をして男のところへ歩いていく。
すると、
「お前が、神谷慧かぁあ?」
オレに向かって訊いてくる。
オレは、先ほどと同じような返事を返した。
「じゃあ、ついてこぉおい!」
そして、オレは手を引かれるがまま、連れて行かれる。
そして、オレが辿り着いたのは理事長室だった。
男はノックもせずに扉を開き、中へ入っていく。
そして、中へいる男に向かって話しかける。
「よぉ、爺さん!コイツがあんたの孫なんだってなぁあ?」
「あぁ、その通りだ。そいつがオレの自慢の孫、慧だ。いい男に育ったろ?」
「そうかぁあ?俺にはヒョロヒョロのモヤシにしか見えねぇぞぉお!?」
「まったく、ひどいな、君は。そして、とても暑苦しい。」
「おぉおう。ありがとよぉおう。」
「いや、褒めてねぇから。」
と、こんな感じで中にいる男、神谷宗一郎と話している。
もちろん、暑苦しい男を知らないオレは傍観者だ。
「まぁいい。本題に入ろう。」
そう言って、爺さんは切り出した。
「おぉう。コイツを鍛え上げて俺の娘に相応しい男にするって話かぁあ!?」
それに男が返事をするが、
「えっ?」
反応したのは今まで傍観者だったオレだった。
待て待て。
オレはそんな話聞いてないぞ。
鍛え上げるってなんだ!?
俺の娘に相応しい男にするってなんだ!?
そんな頭にハテナマークを浮かべているオレに爺さんが話しかけてくる。
「あれ?話してなかったっけか?お前は夏休み中、この男に鍛え上げられるから。」
「いや、聞いてねぇから。」
「そっか。でも、決まったことだから。今から支度してこい。」
「いや、でも、」
「すべては夏休みが終わってから聞いてやる。行ってこい!」
オレの言葉を遮って爺さんが話す。
そして、オレは暑苦しい男に連れていかれた。




