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第39話 召喚士ユウへの違和感

すみません、短いです。

 嘗て存在していた幻獣という存在、冒険者の中に不死の力を持った者が多い理由、始まりの街の名前について、昔はスキルが存在していなかった事。

 召喚士のユウの口から吐き出される話はコーディーにとって、とても興味深かった。

 それに伴い、ユウの存在についても関心が高まりつつある。


 しかし、まずは出された情報を整理していこう、とコーディーは思考を巡らせる。

 幻獣についてはコーディーも知っている情報だった。

 NPCから聞いた情報と遺跡の壁画から推測した事を、改めて認識しただけ。


 嘗て人々をモンスターの大群から守り、人と言葉を交わす事の出来た存在だった幻獣。

 グリフォン以外にも幻獣は存在しており、その数は分からない。

 NPC達から神様の様に崇められていた幻獣だが、いつからか姿を消してしまった。


 NPC達は幻獣に頼り切って居たので愛想を尽かされたと思い、自分達でもモンスターと戦えるという事を示す為に立ち上げられたのが冒険者ギルド。

 幻獣が数体存在していた事は知らなかったが、それでもその他の事はコーディーも知っている。


 次にユウの口から放たれた情報は冒険者の中に不死の力を持った者が多い理由。

 NPCにも冒険者は存在するが、コーディーはフィールドで見た事がない。

 特に気にして居なかったが、NPCの冒険者もプレイヤー達と同様に依頼をこなしているらしい。


 危険な仕事なので、NPCの冒険者は数が少ないようだ。

 そして、不死の力を持つ冒険者だが、これはプレイヤーの事である。

 コーディーにも容易に推測できた。


 プレイヤーはモンスターにやられてHPが無くなると、デスペナルティを受けて死に戻りする前に居た街へと転移する。

 この現象をNPC達から見てみると、不死の力を持って居るとなる訳だ。

 これは昔はスキルが存在していなかった事にも繋がりがある。


 【ミリアド・ワールド・オンライン】の世界には神という存在はおらず、その位置にいるのが幻獣だ。

 その幻獣達が消えてからスキルが発現し、その後にプレイヤー達――不死の冒険者が世に出てきた。

 この2つは幻獣が人々の身を案じ授けてくれた力だとNPC達は考え、完全に信じているらしい。


 プレイヤーからするとゲームだが、この世界はNPC達からすると現実である。

 安っぽいが、どこか惹かれる『これがもう一つの世界』というキャッチコピー。

 その通りで、この世界はまるで異世界のような場所だ。

 運営はちゃんと世界を構築し、ゲームシステムにも理由付けをしていたらしい。


 そして、最後が始まりの街の名前について。

 第2の街が【ツヴァイト】第3の街が【ドリット】であることに対し、何故最初の街が始まりの街なのか。

 これは疑問だけが浮かぶだけで、ユウもよく分からなかったらしい。

 だが、色々とNPCから話を聞いた末に第1の街は、始まりの街ではないという事だけは判明したようだ。


 ここまで聞いた事を整理したコーディーだが"思いの指輪"については、やはり分からなかった。

 そもそも、ユウの語った話が本当であるかも分からないのだが、これに関しての裏付けは後ですればいい。

 嘘であったとしても、調べる行動が無駄になるだけで失うものは特に無いのだから、コーディーは気にしないというスタンスを取った。

 顎に手を当て、考えているコーディーにユウは声を掛ける。


「何かこの指輪について分かりませんか?」


 そう聞いてくる少年にコーディーはふと、ある思いが浮かぶ。

 ここで結局分からないと答えた場合、彼はどういう反応を見せるのか。

 情報をもらうだけ貰って、適当な話を作り嘘を伝えるという手も思い浮かんだのだが、分からないとまずは伝えてみようか。

 そういう意地悪な考えに思考が傾き、最悪冗談だと言えば済むのだからとコーディーは口を開く。


「そうですね……すみませんが、思いの指輪について私はあまり詳しくなく、幻獣の話でもと思ったのですが既に知っておられた様で、私が教えられることは無いようです」


 申し訳なさそうな演技をして伝え、彼の反応を待つ。

 軽く頭を下げて直ぐにユウの反応を見てみたが、特に変化は無し。

 ただ、知らなかったのかという沈んだ表情を浮かべるだけだった。


「コーディーさんでも分かりませんでしたか……」


「貴方は私を高く買いすぎですよ」


 新たな反応を見せないのかとコーディーは話を促すが、そのまま別れの挨拶をするとトボトボと彼は踵を返して去っていった。

 コーディーは目を見開いて、少年の反応のおかしさに小首を傾げる。

 行き当たりばったりで、本当に何か知らないのかと自分のもとに聞きに来たという感じだ。


 ――まるで、情報を教えに来たかの様な……


 プレイヤーとして愚かな事をしている彼にコーディーは疑問を覚え、違和感を内に植え付けられたまま、気を取り直すと自分から伸びる光の線に従い足を動かした。

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[一言] お疲れ様です これからも頑張ってください 待ってます
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