日課
「おはようございます、お嬢様。」
透き通った優しい男性の声がして目を開ける。
私はこの声で目覚めるのが日課だ。
「おはよう、ネオール。」
彼の名はネオール・クラウン、私の護衛を兼ねた専属執事である。アッシュグレーの髪色に緑色の優しげな瞳、タキシードが良く似合う長身の男性だ。
「本日はお昼頃にアルム国の第二王子、アラルド様とのお約束がございます。」
「そうだったわね。庭園でお茶をする予定でしたわね。」
「はい。お時間までにドレスにお着替え下さい。迎えは私が参りますのでこちらでお待ち下さい。」
「わかったわ。今日もよろしくね。」
返事の代わりに頭を下げてから、ネオールは部屋を退出した。
パタンと静かにドアが閉まる音がして、ネオールの足音が遠ざかっていく。
「はぁ〜…」
誰もいなくなった私室でため息が漏れる。
わたし、昨日も別の王子とお茶会をしたのに…
あの夢を見てからだ。
自分で決めたはずの予定なのに、記憶にないようなことがある。
自分ではない何かが脳を支配しているような感覚に襲われることがある。
私の本心が望んでいないことをしている気がする。
これはやっぱり…、操られている!?
私を操っている人はどの王子を狙っているのかしら?
アラルド様かしら?
考えても答えが出ない問いを自分に投げかけ、溜め息をついた。
気を逸らそうとテーブルに置いてあった本に手を伸ばし1、2ページをめくっては手が止まり、全然文字が頭に入ってこなかった。
気がつけばまた答えが出ない問いを自分に投げかけ、ぐるぐると同じことを考えてしまっていた。
結局、本を読むことを諦めて静かにソファに腰掛け、また溜め息をついていたのだった。
日が真上まで昇りきった頃、約束の時間となっていた。
ーーコン、コンッ…
控えめなノック音がして、ネオールが扉を開ける。
「お嬢様、お迎えに上がりました。」
「ええ、行きましょう。」
ネオールに案内されるがままにお茶会へと向かった。




