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正解圏外 – The Outside of the Answer – 灰歴のアリア編  作者: 咲凪すず


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【3部】第28話「観測」

見えた。

残った。

消えた。


違う。


それは全部、

同じだった。

進んでいる。

傾いたまま。

壊れた姿勢で。

それでも、

NOMADは前へ出る。


光がある。

線ではない。

格子でもない。

もっと細かい。

もっと多い。

さっきまで見えていた“正解の線”よりも、

さらに手前にあるもの。


動く。

右へ。

そう選ぶ。

NOMADは右へ動く。

だが——

その瞬間。

わずかに、

同じ動きが残る。

遅れてではない。

重なって。


右へ動いたNOMAD。

その隣に、

ほんの一瞬だけ、

同じ姿勢の機体が並ぶ。

もう一つ。

さらにもう一つ。

違う動き。

違う選択。

同時に存在する。


次の瞬間、

それらは消える。

一つだけが残る。


アリアは止まらない。

止めない。

意味を探さない。


もう一度動く。

今度は左へ。

同じことが起きる。

複数の動き。

複数の結果。

並ぶ。

消える。

残る。


違和感ではない。

繰り返しだ。


NOMADの足が止まる。

止めていない。

それでも止まる。


違う。

止まったのではない。

止まった状態が、

先に確定する。


操縦桿に力を入れる。

動かす。

その瞬間。

動きが“固定される”。


修正できない。

やり直せない。


右にずらす。

遅い。

もう終わっている。


アリアは気づきかける。

だが、

その形に触れた瞬間、

理解が崩れる。


前へ出る。

残像が残る。

違う。

残像ではない。


“さっきの動き”が残っている。


同じ動作が、

同じ位置で、

もう一度再生される。


一瞬前。

そのさらに前。

同じ動きが重なる。


時間ではない。

順番でもない。


記録。


そう思った瞬間、

その言葉が壊れる。


通路の奥。

光がある。

格子ではない。

線でもない。


無数の点。

無数の断片。


動いていない。

変化していない。


それでも。

NOMADが動くたびに、

その位置が変わる。


違う。

変わっているのではない。

対応している。


動きに。

選択に。


アリアは踏み込む。

その瞬間。

周囲の光が一斉に収束する。


固定された。


足の位置。

腕の角度。

視線の向き。


全部が、

一つに定まる。


外せない。


もう一度動く。

今度は、

ほんの少しだけ、

意図的にずらす。


遅れる。

わずかに。


その瞬間。

NOMADの外装が裂ける。

別の場所で。


回避したはずの損傷が、

別の形で現れる。


帳尻が合う。


アリアは息を吐く。

分からない。

だが、

分かりすぎる。


“見られている”。


言葉になりかけて、

崩れる。


違う。

見られているのではない。


“決められている”でもない。


選んだ瞬間に。

終わる。


それだけが残る。


通路の奥。

リガルがいる。

変わらない。

動かない。


だが、

その周囲で起きているものが変わる。


さっきまでは

収束だった。

一本に集める動き。


今は違う。


選んだ瞬間に、

それが“残る”。


そして、

他が消える。


残るものと、

消えるもの。


その境界が、

はっきりしすぎている。


アリアは灰剣端末に触れる。

反応する。

遅れない。


振る。


その瞬間。

周囲の“残り方”が崩れる。


残っていた動きが消える。

消えていた動きが、

一瞬だけ戻る。


空間が迷う。


同じ動きが、

重ならない。


固定が遅れる。


一瞬だけ。


自由が戻る。


理解しかける。

だが、

言葉にしない。


灰剣は、

対象を斬っていない。


“残るかどうか”を、

断っている。


次の瞬間。

また固定される。


光が収束する。

残像が消える。

一つに定まる。


戻る。

何度でも。


アリアは踏み込む。

正しい位置ではない。


光が乱れる。

固定がずれる。


灰剣を振るう。


今度は、

“自分の動き”に向けて。


振り下ろした瞬間。

さっきの動きが消える。


同じ動作が、

再生されない。


記録が残らない。


一瞬だけ。


空間が静かになる。


リガルの輪郭が揺れる。

初めて。


それでも、

すぐに戻る。


また固定される。

また残る。

また消える。


繰り返し。


アリアは止まらない。


見えている。

全部。


次にどう動けばいいか。

どこに立てばいいか。

どの角度で振ればいいか。


全部、

分かる。


だから。


操縦桿を、

その線から外す。


固定される前に。


遅い。

それでも。


外れる。

ほんの少し。


NOMADの膝が崩れる。

外装が裂ける。


それでも。


今の動きは、

残らない。


再生されない。


アリアは前を見る。


見えているものは、

正しい。


だが。


それが、

自分の選択ではない。


灰剣を振るう。


今度は、

前方の“動きそのもの”へ。


空間が揺れる。

残像が消える。


複数あった動きが、

並んだまま残る。


消えない。


一瞬だけ。


世界が決めきれない。


アリアはその隙間に踏み込む。


正しい場所ではない。


それでも。


通れる。


リガルの前。

距離が詰まる。


固定が追いつく。

収束が戻る。


それでも。


もう一度、

灰剣を振るう。


今度は、

何もない場所へ。


空間が切れる。


“さっきの動き”が消える。


残らない。


見られていない。


一瞬だけ。


完全に静止する。


何も残らない。


選択だけが残る。


アリアは進む。


正しいからではない。


見えているからでもない。


ただ。


選ぶ。


それだけだ。


NOMADは進む。

壊れながら。

ずれながら。


固定されながら。

それでも外れながら。


リガルの輪郭が揺れる。


存在ではない。

現象でもない。


“確定”そのもの。


それに触れる直前。


アリアは言う。


「……見られてても、関係ない」


声は小さい。


だが。


消えない。


NOMADは踏み込む。


観測される前に。


選択する。


光が揺れる。

残像が崩れる。


世界が、

ほんの一瞬だけ、

決められなくなる。


その中で。


アリアは進む。


第28話「観測」了

見られている。

それでも。


選んだ瞬間に終わるなら。


終わる前に、

選べばいい。

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