【3部】第26話「真実①」
起きた。
そのはずだった。
やった。
そのはずだった。
だから。
繋がらないのは、
そこじゃない。
進んでいる。
そのはずだった。
だが、
進んだという感覚が、
どこにも残らない。
位置は変わらない。
それでも、
装甲の状態だけが更新されている。
損傷が増えている。
理由はない。
NOMADの脚部が動く。
操作した記憶がある。
だが、
その結果が、
別の場所に出る。
右脚を出した。
そのはずだった。
次の瞬間、
左側の壁面が崩れる。
接触はしていない。
衝突もない。
それでも、
結果だけが存在する。
アリアは前を見る。
通路は続いている。
歪んでいる。
奥行きが定まらない。
遠い。
近い。
どちらでもある。
進む。
そう決める。
理由はない。
選択だけがある。
前方に、
何かがある。
いた。
そう認識した瞬間、
すでに距離が変わっている。
近い。
遠い。
同時にある。
輪郭は静止している。
動いていない。
それでも、
結果だけが更新される。
装甲に亀裂が走る。
前方からではない。
側面でもない。
原因が存在しない。
結果だけが、
機体に刻まれる。
カイルの声が響く。
「……何をした」
声は前から聞こえる。
同時に、
背後からも重なる。
アリアは答えない。
何もしていない。
だから、
説明できない。
影がそこにある。
最初からいたように。
近づいた過程がない。
移動していない。
それでも、
距離だけが変化する。
その存在は、
すでに結果側にある。
エルダ。
名は浮かばない。
理解も成立しない。
ただ、
そこにある。
それだけが確定する。
NOMADの右腕が上がる。
上げた記憶より先に、
装甲が裂ける。
自機の胸部が割れている。
攻撃はしていない。
それでも、
損傷が存在する。
遅れて、
腕が動く。
順序が逆転している。
原因と結果が繋がらない。
灰剣端末に触れる。
接続した感触はない。
だが、
空間が裂けている。
一条。
その次に、
もう一条。
さらに、
別の位置で断裂が発生する。
振っていない。
それでも、
斬れている。
どこを斬ったのか分からない。
エルダは変わらない。
無傷。
代わりに、
通路の奥が崩れている。
さらに、
背後の床も裂けている。
結果が分散する。
対象が確定しない。
カイルが前へ出る。
出た記憶より先に、
膝をついている。
肩が裂けている。
血が、
すでに床にある。
「違う……」
彼は手を伸ばす。
同じ動作。
同じ軌道。
同じ速度。
何度も繰り返す。
だが、
触れる前に、
結果が出る。
腕が弾かれる。
衝撃が走る。
原因はない。
「どこだ……」
言葉が崩れる。
「どこにいる」
見えている。
それでも、
位置が成立しない。
理解しようとする。
繋げようとする。
だから壊れる。
エルダは動かない。
行動していない。
それでも、
結果だけが存在する。
カイルの背中が裂ける。
次の瞬間、
何も起きていないように見える。
時間が一致しない。
順序が存在しない。
NOMADが動く。
操作していない。
それでも、
前進している。
いや、
前進した結果だけがある。
位置が変わる。
移動した過程がない。
同時に、
別の位置にも存在しているように見える。
一つの入力で、
複数の結果が出る。
入力と出力が繋がらない。
カイルが止まる。
手を伸ばしたまま。
その動作の途中で、
完全に静止する。
「……分からない」
声が落ちる。
それ以上、
続かない。
理解が途切れる。
接続が切れる。
彼は動かない。
思考も、
動作も、
止まる。
理解不能で停止。
アリアはそれを見る。
壊れたのではない。
限界に到達した。
理解という前提が、
維持できない。
だから停止した。
前を見る。
エルダがいる。
最初からそこにいた。
今もいる。
位置は変わらない。
だが、
結果だけが変わり続ける。
距離も、
時間も、
意味を持たない。
アリアは考えない。
理由を探さない。
原因を求めない。
分からない。
それでいい。
一歩、踏み出す。
踏み出した記憶の前に、
すでに前進している。
順序は関係ない。
結果だけが更新される。
エルダの横を通る。
接触はない。
干渉もない。
それでも、
背面装甲に亀裂が走る。
通過したのか。
されていないのか。
判断しない。
進む。
理由はない。
原因もない。
結果だけがある。
アリアは言う。
「……理由はいらない」
声は、
その場に残る。
遅れない。
崩れない。
選ぶ。
ただそれだけ。
進む。
因果を捨てる。
理由を捨てる。
理解を捨てる。
それでも、
選択だけは残る。
アリアは進む。
第26話「真実①」了
理由は分からない。
原因も分からない。
それでも。
選ぶことだけはできる。
だから。
それでいい




