第222話 ライブ終了後
ライブが終了して、六人で雑談をしていた。
「それにしても、今日のライブ配信も盛り上がったねぇ」
「ありがとうございます。普段だと盛り上がりが今一つ足りない料理中の時間を咲さんとサオリンで盛り上げてくれたのが大きいですよ」
「視聴者の外国人比率も凄く高いよね。チャット眺めてても全く読むことのできない文章が多くて、日本語見たらホッとするよ。あの文章って心愛ちゃんは普通に読めるの?」
「そうですね、私の中では普通に日本語変換されて見えてますから」
「そうなんだ……その能力は、魔法陣にして売り出す予定はあるの?」
「便利だから本当は売り出したいんですけど、今の所ダンジョン省から販売許可が出ないんですよね」
「何か理由があるのかな?」
「ダンジョンの最終階層にボス攻略のヒントが書かれたフレーバーテキストが書かれてたりするんですけど、それが言語理解無しでは全く解読できないんです。フレーバーテキストを解読しない状況だと攻略が難しいのがダンジョンボス戦だから、他国のダンジョン攻略状況を正確に把握するために、D-CANに頼まなければ解読できない状況を保つためかもしれませんね」
「そうなんだ……海外からの圧力とか、かかりそうだよね」
「そこは、ほら、D-CANはあくまでも民間企業ですしそういう商品はありません! って言いきっちゃうと今の所、他の国や企業では解読不能なわけですから、強気には出てこないんですよね」
「D-CANの臍を曲げちゃうと、他の便利な魔道具やオーブなんかも手に入らなくなる恐れがあるからかな?」
「恐らく……そうですね」
そんな話をしていると、日向ちゃんがちょっと興奮した感じで報告してきた。
「先輩! 今日の配信終了時点で、登録者の人数が二百万人超えちゃいましたよ」
「まじで? 凄いねちょっと前のサオリンの登録者に追いついてるじゃん」
「心愛たちの場合は、料理もダンジョン攻略も突き抜けちゃってるからね、真似しようにもできないレベルだからバズって当然だよ」
「今以上を目指す場合って、何が足らないのかな?」
咲さんがアドバイスをくれる。
「そこは、うちの子たちにはいつも言ってるんだけど、エンターテイメントだね。撮れ高って言うか、シナリオ的な部分が大事だと思うよ」
「サオリンのように魔物を倒す姿一つを取っても魅せるを意識するとかは大事って事ですか?」
「そうだね、でも私たちの場合は最前線での戦いでは無いから、何度も練習して挑んでるし、ノンフィクションな緊迫感は中々でないけどね」
「それこそ、この間のオーガキングの様な状況ですね」
「そうそう、でもあんな事が度々あったら命がいくつあっても足らないけど、登録者の激増数を見たらやっぱり、そういう需要も大きいよね」
「そっかぁ、今後は攻略の最前線の情報をノンフィクションでダンジョンマガジンに居た東郷さんが発表する予定だけど、彼はダンチューブの形はとらないと思うな」
「それは、なんで?」
「東郷さんは既存の新聞社や放送局、出版社などの関りを大事にして、より、ニュース的な情報発信を目指してる感じですから」
「そうなんだ、ジャーナリストとしての本人の矜持みたいなものがあるのかな?」
そう言うと希が突っ込んだ。
「変態ですから、どうでもいいんですけどね」
「でも、クリスマスホーリーの配信はネットではやらない感じなのかな?」
「いえ、基本私たちは参加しますから、カメラは回しますよ。ただ発表に関してはライブ配信にはしないと思います。事故が起こる確率も低くは無いと思うので」
「そっかぁ、本当の最前線の攻略って凄いんだろうね。もしかして……今まで攻略されたダンジョンの動画って、全部その時の映像が残ってるの?」
「はい……そうですね。天津とガリッサ以外は映像があります」
「それって見せてもらう事は出来る?」
「他に出さないっていう条件なら構わないですけど」
「百合と麗奈に編集させれば、相当なエンターテイメント作品が出来上がると思うんだよね。出来上がった作品は心愛ちゃんと冴羽社長に必ず確認してもらってからしか発表しないから、新生Dライバー社の事業として取り組ませてもらえないかな?」
「なんだか凄そうですね」
その話をしてると、日向ちゃんが「私もその事業に参加したいです。もっと本格的な編集やエンターテイメントの演出を学びたいから」と言ってきた。
「私的には全然ありだと思うけど、咲さん達は日向ちゃんが参加しても構わないんですか?」
「もちろん大歓迎だよ、ほとんどの攻略に日向ちゃんも参加してるんでしょ? 映像に映っていない部分のニュアンスとかも聞けるし、ぜひ参加して欲しいわ」
「わーい、やったー」
日向ちゃんがメッチャ喜んでいた。
映像データなんかは基本全部、日向ちゃんが管理してたから今後は麗奈さんや百合さんと協力して学んでいってくれたらいいと思う。
そんな話をしていたら冴羽社長がクリスマスホーリーの王さんと孫さんを連れてやって来た。
「こんばんは、みなさん。今日の配信も盛り上がってたね。咲さんも、もうすっかりうちの身内って感じになったね」
「こんばんは冴羽社長、今日の配信の途中にDライバー社の今後っていう感じで少し匂わせ発言はしましたけど、正式な発表はやっぱり冴羽社長も一緒に居る形で記者会見を開くのが正しい姿だと思って控えました」
「そうだね、その判断は正しいと思うよ。明日中にでもDライバー社の株式の取得を発表しようと思いますので、麗奈さんと百合さんも含めて時間を空けておいてくれると助かります。金沢と博多の間の移動は心愛ちゃんのマンションの転移ゲートを使っていただいて構いませんので」
「了解しました。伝えておきます」
こんな時間に社長が来たのはただ王さん達を連れてきただけなの? って思って聞いてみた。
「社長は何か用事があったんですか?」
「いやね、王さん達がここに来るのについてきただけなんだが、配信で映っていた『ビーフウェリントン』がめちゃくちゃ美味しそうだったから、おこぼれにあずかろうと思ってね」
「そうだったんですね、王さんと孫さんも折角だから食べて行ってください」
「嬉しい! 心愛ちゃん大好き」
三人分の料理を手際よく盛り付けると、日向ちゃんが配膳してくれた。
三人には折角だから赤ワインも楽しんでもらう事にしたよ。
世界一の生産量を誇るイタリアワインの王様とも呼ばれる『バローロ』の2007年を、不思議なペットボトルで一日寝かせてあるので、香りはすごく良かったんだよね。
未成年だから私は飲めないけど……
「心愛ちゃん、このビーフウェリントンも素晴らしいけど、ワインが凄いな。フランスのDRCに比べても全く見劣りがしないどころか、あらゆる面で優ってると思うよ。パーカーポイントで満点のワインを横に並べたとしても、このワインとは比べ物にならないだろうね」
王さんと孫さんも諜報員としての仕事柄、ワインや料理には造詣が深く感動してくれた。
「心愛ちゃん、お料理もワインも最高だよ。お嫁に来て」
「本当に凄いね。こんな奇麗なビーフウェリントンも初めてだし、白トリュフの香りが最高だね。ワインはそうね、凝縮感って言うのかしらスクリーミングイーグル以上の満足感があるわ。この価値は計り知れないわね」
専門的に感想を言われると飲んだ事無いから困っちゃうけど、それだけ凄かったんだろうね……
でも、空気を読めない希が「心愛先輩の嫁は私ですから、王さんには譲りません」と控えめな胸を張って仁王立ちしてた。
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「パーカーポイント」とは、世界で最も有名なワイン評論家の一人である「ロバート・パーカーJr.」が考案したワインの評価方法における得点のことを指します。
DRCは「Domaine de la Romanee Conti」の略で、フランスのブルゴーニュ地方を代表する「ヴォーヌ・ロマネ」という村にあるワインの醸造所のことを言います。
スクリーミングイーグル(またはSCREAMING EAGLE)は、カリフォルニア州で生産される最高のカベルネ・ソーヴィニヨンの一つであり、超高級の入手困難なカルトワインとして世界中のファンを魅了しています。




