第221話 絶品ビーフウェリントン白トリュフ風味
翌日、学校でサオリンと話していた。
「サオリン、昨日の雑談ライブはどうだった?」
「この間のダンジョンライブ配信の影響で、凄い数の人が来てくれてたよー」
「そうなんだ、良かったねー」
「まあ、いい事ばかりでもなかったけどね。明らかに、記者みたいな人からの質問とかがメッチャ多かったしね」
「そうなんだ……今日の私たちの料理ライブにも現れるかな?」
「だと思うよー、今日のライブは何作るの?」
「今日はね、ビーフウェリントンっていうイギリス料理だよ」
「へー、聞いた事無いけど名前からして豪華そうな感じだよね」
「見た目も華やかだし、ボリューム感もばっちりだからね」
「いいなぁ、私も食べたいよ」
「それじゃぁ用事が無いなら、ライブに参加しちゃう?」
「いいの?」
「全然いいけど、料理してる間は私がほとんど視聴者の人に反応できないからうまい事盛り上げててね」
「オッケー、そういえば咲さんも心愛ちゃんの料理食べてみたいって言ってたな。連れて行ってもいい?」
「いいけど、暇なの?」
「暇じゃないけど、きっと来ると思うよ? 今日のお昼に名古屋の事務所と博多の事務所の間に転移ゲートも設置したらしいし」
「そうなんだ。それなら来るのは時間かからないからいいかもね」
「ついでに、DライバーがD-CAN の一員になる事でも発表したら凄い盛り上がるかも」
「それは凄そうだね、でも発表しても大丈夫なのかな?」
「上場してるわけじゃないから、そんなに問題は無いと思うけどね」
そんな感じで、再び豪華コラボなライブ配信が決定したよ。
早速な感じでそれぞれのSNSで告知も出て、とっても盛り上がる予感しかない状況で、ライブ配信が始まる時間を待っていた。
「心愛先輩……十五分前ですでに三千人も待機してますよ」
「えー、凄いね。始まったら一体どれだけの人数になるんだろ」
食堂の客席も綺麗に飾られて、いつもの様に杏さんと希が座っている。
その横には席が空いた状態になっているけど、オープニングの挨拶を済ませてからゲストのサオリンと咲さんが登場する形になったよ。
キッチンスタジオの準備も整っていて、日向ちゃんが昨日の仕込みの状況とトリノダンジョンで今日のメイン食材の牛肉や白トリュフを手に入れた動画をチェックしている。
「一分前です。現在待機人数は一万五千人ですー」
十秒前になってハンドサインでカウントダウンを始め十七時ジャストで配信はスタートした。
『こんばんはー、心愛と希と戦闘メイドの美味しいダンジョン生活はっじまるよー』
今日のタイトルコールは希が担当した。
その後は日向ちゃんが引き継いで司会をする。
『今日もたっくさんの人が私たちのライブ配信に訪れてくれて感謝感激ですー。今日はSNSで告知をした通りに豪華コラボでの進行になります。それでは早速、ゲストをお招きしますね』
その言葉に合わせて、食堂の入り口がカランカランとドアベルを鳴らせて開く。
メイド姿の日向ちゃんが「いらっしゃいませ、こんばんは。ご予約の咲様とサオリン様ですね、お席にご案内いたします」と言いながら、杏さんと希の隣に案内をした。
『このキッチンスタジオって本格的だね、どっからどうみても高級レストランにしか思えないよ』
『ほんと、何を食べさせてもらえるのか超楽しみー』
そう言いながら、日向ちゃんが引いてくれた椅子に腰かけた。
そこで私が、今日の献立を発表する。
『今日の献立は『ダンジョン産牛ヒレとダンジョン産白トリュフのビーフウェリントン』になります』
『何それ? 超美味しそうな感じがするけどどんな料理なのかさっぱりわかりませーん』
そのやり取りを聞いていた視聴者の方から一気にコメントが流れ出す。
mamaco:あーイギリスの料理でパイに包んであるステーキみたいなの
zenna:すっごい手間かかるって聞いたことある
uo-san:1,000円:ていうか咲姐さんとサオリンって豪華すぎだろ
KaYukito:2,500円:この間のサオリンのダンジョンライブのお礼訪問な感じ?
梅竹松:俺も呼ばれてーパイセンちゃんの手料理裏山杉
misaki5050:500円:ココアちゃんのコックコート姿が可愛い
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『開始二分ですでに視聴者二十万人超えてますー、ありがとうございます。早速、心愛先輩のお料理配信始めるよ。今日のお料理は手順が多くて、材料を仕込んで寝かす工程も多いから、時間のかかる部分はあらかじめ撮影してあります。その様子と、今日の材料になってくれた、魔物の討伐の様子をご覧下さいね。心愛先輩の調理の様子も二窓で配信していきます』
日向ちゃんの解説に合わせて私は調理を始める。
昨日のうちに作っておいたパイ生地を取り出して、四分の三と四分の一に分ける。
打ち粉をした作業台に四分の三の方のパイ生地を三十センチメートル角の正方形に伸ばす。
その上にクレープシートを広げて余分な部分はカットする。
昨日トリミングをした肉で作ったミンチを軽く炒めて、パティとボールでよく混ぜ合わせる。
ナツメグとホワイトペッパーで風味を加える。
クレープシートの上に広げ、パレットナイフで均等に伸ばす。
その上に一晩寝かせたヒレ肉を置いて、綺麗に包み込む。
パイ生地の表面を卵黄でコーティングする。
更に残りの四分の一のパイ生地を網型になるように切り込みを入れ、表面に巻き付ける。
網型の生地にも卵黄をコーティングする。
余熱をして二百度に保ったオーブンに入れ二十五分程焼く。
その間にソースを用意する。
エシャロットを刻んで赤ワインを加えて煮込む。
半分ほどに煮詰めてから、フォンドボーを加えてとろみが出るまで煮詰める。
シノワーで濾す。
余熱で無塩バターを溶かし風味を出す。
焼きあがったパイ包みは、オーブンから出して二十分は寝かせる。
こうする事で中の肉汁が収まり、切った時に綺麗になるよ。
パイ生地を二重に巻く人が多いけど、厚いパイ生地は中の方がサクッとしなくて私的には無しなんだよね。
だから、内側はクレープシートを使うのがお父さん流のパイ包み焼なんだよ。
ウエッジウッドの奇麗な磁器のお皿にソースを敷き、厚さ三センチメートルほどにパイ包み焼を切り分ける。
うーん、ミディアムレアな完璧な焼き上がりだよ。
肉の外側に塗ってあるミンチ入りのパティからも肉汁が染み出てきて、すっごく綺麗。
器に盛りつけたパイ包みの上には、削った白トリュフを軽くバーナーで炙ってたっぷりと乗せる。
トリュフの香りが立ち込めて、幸せな気分になるよ。
デコレートは刻んだイタリアンパセリを上品に散らし、赤ワインソースには生クリームを垂らして、軽く模様を描く。
さぁ出来上がりだよ。
日向ちゃんが手際よくみんなの前に運ぶ。
私が料理をしてる間に咲さんとサオリンが配信を凄く盛り上げてくれてたみたいで、気づけばライブ配信の視聴者が五十万人に達していた。
『実食ターイム』
『我ながら今日のお料理も最高に美味しいです。皆さんもこの動画を参考に是非チャレンジしてみてくださいね』
『ほあぁ……言葉が出ないほど美味しいね。サックサクのパイ生地の中にとってもジューシーなヒレ肉、それを包み込む白トリュフとミンチは極上のハンバーグの様な美味しさだし、上にかかった炙った白トリュフの濃厚な香りがもう最高! ソースも絶品だよ、そして何よりも見た目が超綺麗』
咲さんの料理コメントは中々に慣れた感があった。
他の四人も絶賛のコメントをくれて何よりも、チャットがすごーーーーく盛り上がった。
恐らく実食タイムの間に流れたチャットは二十万を超えてたと思うし、スパチャだけでも一万件近くあったような気がする。
平均二千円くらいとしても……二千万円? ひえぇえな感じだね。




