第五話
あれから数か月。
僕はアニマ団の仲間となり、能力の訓練などをしていた。
今日は一体、何をするのだろうか……
「みんな、おっはよー!!」
ラビが元気よくあいさつをする。
「おはよう、ラビ!来夢!ゲームしようぜー!」
元気よく挨拶してきたのは、ガゼルの妖精・ゼル。
「おはよう、ゼル。いいね~!めっちゃやりたい!!」
「来夢!まずは団長のところに行くよ!」
「うん、そうだね!またね、ゼル!」
「おう!」
ラビと一緒に団長のところへと向かう。
「レオン団長、おっはよー!」
「うわあ~。。。また死んだぁ、もうやだぁ、、、。
あ。おはよ、ラビ、来夢。来てくれたんだね。ありがとう。」
レオン団長はライオンの妖精の姿でヘッドホンを付けて、PCゲームをしていた。
「あ。ラビ、これ。よろしくぅ~。」
「了解!」
レオン団長はラビに何かを渡した。
ラビも何か気づいたようにレオン団長の目を見た。
「あ!来夢、今日やることはラビから聞いて。じゃ、僕は忙しいからバイバーイ。」
団長は気だるそうに僕らに手を振った。
いつもと何かが違うことだけは僕にもよくわかった。
「もう。団長ってば、来夢が仲間になってくれたからって気が抜けちゃって……。
でも大丈夫だよ、来夢!今日はちょっといつもとは違う訓練をするだけだからね!
さあ!僕に着いてきて!」
そう言ってラビに着いていくと、そこはビルだらけのオフィス街。
今日は休みだからなのか、平日よりは人が少なそうだった。
「来夢、今日は監視と追跡の訓練だよ!いつものように集中して、
あのビルから出てくる人を見ているだけでいいからね!」
「うん、わかった。」
僕の能力は、人を睨むとその人に不幸が訪れ、怒りの度合いで死に至らしめることが出来る。
そしてさらに、訓練を重ねたことで「追跡」と「監視」が出来るようになっていた。
いつもはラビやアニマ団の仲間たちと訓練していたけど、
初めてそれ以外の人に能力を使うことになったので少し緊張している。
それでも僕は集中してビルの自動ドアを見つめる。
心を無にして、今までの訓練の糧をぶつけるように。
しばらくすると、一人の男が出てきた。
見た目は普通のスーツ姿だ。
その時ラビが僕に言う。
「来夢、あの人を今日のターゲットにしよう。追跡して。」
「わかった。」
何もあやしいところなんてなさそうな男性だ。
なんだか申し訳ないことをしているような気がする。
すると、その時だ。
男性はいきなりコンビニに入り、レジの店員にナイフを突き出した。
「ラビ!」
僕は慌ててラビを呼んだ。
「なに、なんか見えた?」
「うん、男の人がコンビニ強盗してる。」
「やっぱりか。来夢、行くよ!能力の準備しておいてね!」
僕たちは男が強盗に入ったコンビニへ向かった。
「金出せ、そこに入ってる金。金を出せ。」
コンビニに行くと、男はレジ台ににカバンを置いてそう言った。
「え、え・・・?」
店員の手は震えていた。
レジを打つ音も、袋がこすれる音もやけに大きく聞こえる。
僕は男と目が合った。
その時僕は睨んだ。
お願いだ。死ぬな、死ぬのだけはやめてくれ。
なんかダメージの少なそうな何か起きてくれ!
あれ・・・?
・・・何も起きない。
なんで?
訓練の通りやったのに……。
なんで!!!
そのとき、ラビが言う。
「そいつ、殺していいよ。」
「は?何言ってんの?」
「いいから!殺す気で、睨んで!」
いつものラビとは違う雰囲気が漂う中、僕は言われた通りに睨む。
「くらえ、悪夢の瞳<ナイトメア・アイ>」
その時だ。
男の手が急に震えはじめ、呼吸が荒くなっていった。
次の瞬間、男の持っているナイフが床に落ちた。
これが、、、能力を「使う」ということなのか・・・。
「来夢、よくやったね。言うの遅くなったけど、これミッションだよ!
初ミッション!!」
「は?今言うことじゃなくない?てか、これからどうしたら!」
「大丈夫。僕に任せて!」
ラビがふわりと男の元へ。
「君、僕のこと見えてるでしょ?」
「へ?うわあ!なに!見えるけど」
「教えてよ。君を利用してるやつのこと。」
「え。」
「教えないと君殺すよ?」
「え、ちょっと、それだけは!」
「あ。来た!」
その時、警察が来てくれて事なきを得た。
「はぁ~...怖かったねぇ~。来夢、大丈夫だった?」
「怖いのはラビだよ。いきなり初ミッションとか言うし、強盗の方に向かうし、
あと、いつの間に警察に電話したの?」
「あ、ごめーんw 来夢、緊張しちゃうかもって思って言ってなかったんだ!
あと、警察は奥の方にいた店員さんが電話してたの聞こえちゃったから、
ちょっと時間でもつぶして現行犯逮捕できるように、ね?」
「こわ。」
ラビはいつもの調子で答えた。
「でも、来夢上出来だったよ!
ちゃんと監視・追跡して強盗を見つけた。
そして、躊躇なく能力を使った。すごいよ!」
確かに能力は使った。
でも、最初は効かなかった。
ラビの言う通りにしたら効いた。
やっぱり僕はまだまだだ。
「ラビ。やっぱりまだ怖いんだ。
人を殺せてしまうという事実が。
また、母さんみたいに人を殺してしまうんじゃないかって。」
僕は下を向いて言う。
「それはしょうがないよ。
でもね、今の君は人を殺せない。
だって、あの時みたいな感情は湧き上がってこないでしょ?
君の能力は怒りが重要なんだ。
本気で殺す、死ねばいいのに、って思わないと、
なかなか人は殺せないよ?
一つ、問題点を挙げるのだとすれば、
その怖いという感情がある限り、能力の効果は現れない、というとこかな。
ま、とりあえず解決したし、アジトに戻ろうか!
ゼルのゲームの相手しなくちゃだし!」
「そうだね!」
僕はラビに微笑む。
そうか。
怖がっていちゃダメなんだ。
母さんの時は、ただ純粋に反抗しただけだった。
能力とか何も知らずに自分の感情に素直になっただけだった。
怖がっていちゃ、この能力は使えない。中途半端な覚悟じゃ、ダメなんだ。
僕は勝たなくちゃ。
この能力への恐怖心から。
___その時、アジトでは。
「チーノちゃんチーノちゃん!あのね!新しい能力者の女の子、お話だけ聞いてくれるって!」
ヒツジの妖精・メイリーがチンチラの妖精・チーノに嬉しそうに話す。
「メイリー、やるじゃない!これでちょっとは来夢たちも楽になるかもしれないわね!
私のところももうちょっとなんだけどねぇ~」
「そっかー、チーノちゃんなら大丈夫だよ!
私よりもお話上手だもん!」
「ありがと!とにかく、ラビと来夢の帰りを待ちましょうか!」
「うん!」




