第1章-8
ラジールの女性族長、マイハロイが紹介を終え着座すると礼装を思わせる男性が腰を上げる。
「カーメリーに所属する名をマイルズ・カーメリー・アセテートと申す。今回の場でもうちの侯爵にかわってカーメリー代表で参加する」
二本の曲がった角を持ち、腰にレイピアを下げたまま礼をする。
「我らの国では爵位という位で表すが、大公はいまだ不在。侯爵も隠遁生活を送っていることから子爵を賜る私が毎々参加している。右は子爵のセブンス・カーメリー・デュアルチャコール、左は男爵のメビウス・カーメリー・スティックと名乗る者だ」
マイルド及び背後に立つ2名は軽く会釈をする。「やれやれ毎度のことよのう」とつぶやくのは隣の席の直毛の白髪と白髭に覆われた老人である。
「バカラ殿はまたもや不参加かのう。わしらが魔大陸の種族で最古参であるのに嘆かわしいことだのう」
カーメリー代表とはデーモンが束ねる国の代表であるのだが、本来はバカラ-バカラ・カーメリー・シガールソット侯爵-が代表するはずなのだが、彼は隠遁生活を頑として貫き、初代魔王以降の魔大陸においてカーメリー代表はマイルズが務めている。
「エルフの長よ、常々申し訳なく思っている」
「よいよい。お主も古参の一員が故に2代目以降代表となっとるのであろう。とはいえやはり参加を期待することは本音であり、残酷なことやもしれぬなあ」
マイルズとエルフの長のやり取りの内容に気付くのは一握りの者たちだけのようで、この場の年長者-マイルズ、セブンス、エルフの長、ドワーフの最長老及び長老2名-以外は得心がいかない面持ちであった。
「すまぬすまぬ。いらぬ茶々をいれてしもうたのう。わしはジプターの国の長老やっとるエルフのブロッサムじゃ。連れは若い者で男の方はチョウイ、女の方はサイリンガと名乗る者じゃ」
若いとするエルフの両名は150歳を超えており、長命種とするエルフの中でも長老のブロッサムは平均的な寿命を遥かに上回るため、若いの基準が難しいところである。
「エルフの、デーモンの。息災のようで何より。儂らも年をとったもんじゃ」
背はやや低いが、荘厳な雰囲気を醸し出し、その身は筋肉で引き締まったドワーフの男性はそう話を切り出す。
「バカラの奴もいい加減出てこぬと、マイルズのに侯爵を取られちまうぞ」
「最長老もご健在で何より。若輩ながら子爵位を賜ることができていることで満足しておりますよ」
「儂と100しか違わんのに若いもなかろうよ」
デーモンとドワーフの年長者は井戸会議のようなやり取りをしているが、ため息を漏らしたエルフの長老は声を上げる。
「これこれバルトネル殿。わしらはよいが、他の代表が面食らっておるようじゃ。わしらの代表は年寄りばかりでじゃなかろうから、ドネスご息女がこまっとろう」
「すまぬすまぬ。年寄りの話は長いと言われとるんだがのう…。儂はアーシールのドワーフ、バルトネルじゃ。年ばっかり食っちまって最長老やらされとる。あとは長老の二人を連れて来とるが、右がルーガー、左がロキサイじゃ」
胸を張るポーズをドワーフの三名は示す。ドワーフ族の礼のようで『胸中を明かすほど信頼し尊敬の意を表す』とのことだ。
8か国の代表8名、付き人16名の計24名の紹介を終え、ドネス国の長アプリコットは周りを見渡し目配せする。
「ご紹介いただき感謝する。では早速議題である『勇者の誕生』についての魔大陸での対応について議論致すこととする」
初投稿となります。
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