第1章-9
---------------
―カーメリー、バカラ侯爵執務室―
この世界では魔法が使えるとのことであった。4元素-火、水、風、土-をベースに、それぞれの種族の特徴や文化を基に、妖術や幻術と呼称されるものも存在するようで、魔大陸の種族の力や術を総称して魔法と呼称しているとバカラから聞き取る。
「バカラやわたしが氷を出せたのはつまり、『4元素の水の温度を変化させて氷を創った』ということでよかったんですよね?」
リトはイメージした具体的な内容を確認する。
「仰る通りです。ただし魔法は主に4元素を用いておりますが、妖術や幻術などの4元素以外の要素が混ざることもあり、詳細がそれぞれの種族の秘匿となっていることも現状としてございます」
ふむふむと頷くリトは説明を吟味する。
「つまりは分かっていないことも多いってことですよね」
「年ばかり取ってしまってはおりますが…、まだまだ未知の事象は数多でございます。これは魔法に限らず、今回のリト様のことにも重なりますが、改めて時間を頂きながら調査致しますので…」
「ああ、いや、ごめんなさい。責めているつもりはないんです」
リトは両手を振りながらバカラに声をかける。自分でも何故ここにいるか、どのようにしてきたかは疑問となっているが、そもそもどのようにして意識を失う事態になったのかすら思い出せないのだ。生前の記憶-死んでしまったと仮定して-その動機や記憶がすっぽり抜け落ちている。この件についても話した方がよいのかを悩んでいたが、ふとバカラ声を掛けられ中断する。
「大変失礼なことを申し上げるのですが…。もしやリト様は生前光を失っていらっしゃったのでしょうか?」
彼女はバカラの方を向くが、魔法の練習から目は開けていない。
「バカラの言う通りです。以前のわたしは目で見ることができず、残されている感覚を頼りに生きていました」
そう告げゆっくりと目を開ける。目の前の自分より背の高い、心地よいテノールの主を見つめ話す。
「正直見えることに戸惑っているのが本音です。しばらくは見ることと、この体に慣れることから始めていきたいなと思ってます」
「畏まりました。私の調査も少々時間を頂きますので、その間ゆっくりと館にてお過ごしください。侍従のピアニッシモと執事が数名いるので、ご要望あればお申し出ください」
リトはふわりと笑顔を向けるバカラを見ながら目を閉じる。
「でしたら、早速で申し訳ないんですけど。欲しいものがあります」
「手配させましょう。湯浴みでしょうか、食事でしょうか。お召し物も準備せねば。」
「いえいえ!実は棒が欲しいんです。私のこれ位の長さの」
疑問符を浮かべたまま執務室の主は首を傾げるのであった。
初投稿となります。
誤字、脱字、慣用句の間違った使い方、矛盾点などのご指摘やご意見、ご感想を頂けましたら幸いでございます。




