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ハオトの魔王  作者: 月
26/38

第2章-11

 マシロは何から語ったらいいものかと考えていた。自分のことを他人に畏まって語るのは気恥ずかしさもあり、そもそも話すのが得意という訳でもなかった。そんな彼が語ったのは生まれて物心つく頃からに遡る。

 

 ユーラス国の領土はかなりの広さを誇り、すべてを手中に収めているわけではないとしても、その広さは魔大陸の8か国の内4~5か国を併せたくらいの広さになる。そんなユーラス国領土の首都ワトシーンから北東に位置する都市ウェイスタコタ。この都市は北東に位置する村々からとれる穀物や絹を基に、食料や衣類の加工を手掛けて各都市や首都に輸出することで発展した歴史のある都市である。10数ある村の中で最もマハーマ山脈に近く、寒さも厳しい村-イリオワ村-でマシロは生まれ育った。

 

 生まれ育った村での生活は裕福ではないものの、悪くはなかったと思う。畑で穀物を育て、空いた時間で父親から剣を学ぶ。魔物の出現が多いその村ではその身を守る術が必要だからだ。ユーラスには星霊術と6大戦術と呼ばれる戦闘方法が体系化されている。星霊術はなにやら星から力を借りて使う方法だそうだ。原理はおろかマシロ自身使えないのでよくわかっていない。一方6大戦術とは武器を使った戦闘方法だ。剣術、槍術、棒術、盾術、斧術、縄術。これらの戦い方を極め、或いは組み合わせることで戦闘を有利にする。マシロの父親はその中でも剣術に優れており、少なくとも北東に存在する村々の中で父親以上の強さの者はいなかった。


 そんな父親に教えられてか、はたまた遺伝的な素養か。マシロが12歳の頃3回に1回は父親に勝てるようになり、15歳を数えるころには負けなしまでの力量に達した。その頃になると、イリオワ村だけでなく周辺の村々の安全のために父親と護衛をして回るようになったのだが、マシロの剣術の才能を見てか親バカもあるのか、マシロの父はマシロにこう告げてきた。


「ようマシロ。今度ユーラスで大会があるそうだ。なんのって?武闘大会だよ。剣でも、槍でもハンマーでもなんでもあり。優勝者には賞金が支払われるそうだ。マシロ、お前の剣術は強い。こんな小さな村だけで過ごすのはもったいないレベルだ。あとなんだ、せっかくだ。見聞広めるためにも参加してこい。なーにその間は父さんが守っていくさ。別に優勝しなくても得るものはあるもんだ。旅行気分で行ってこい」


 急に振られたそんな話題で、断ることもできずユーラス国武闘大会に参加する羽目になる。村を出てから首都オイコットに入るころにはマシロは16歳を迎えていた。そしてどうにか間に合った武闘大会。どうにかこうにか勝利に勝利を重ね、決勝では剣術を使う相手-両手に短剣を持ち高速での戦闘術が繰り出されてきた-を退け、優勝をもぎ取った。

 

 喜びもつかの間。王の間にて謁見を急に設けられ、賞金は確かにもらえたのだが、何故か勇者に任命され魔王を倒して来いとか。「は?え?」と戸惑いながら王の間の入り口まで連れてこられ、歩きながらイカついフルメイルの男が「良いか。粗相のないようにな。受け答えは『有難き幸せ。必ずやこの手で魔王を討ち果たしてご覧に入れます』とだけ言う様に。あと返事ははいじゃなく『は!』だ」と脅してきた時には生きた心地がしなかった…。そのフルメイルのおっさんも相当な手練れだもんだから、戦って疲労困憊の自分はここで殺されるんじゃ…と冷や冷やしていたのを思い出す。

 

 そうして勇者として任命されて、故郷の両親には何も告げることができず旅にでてから今日に至る。自分が勇者となったことは喧伝されているだろうから、両親は自分がどうなったか知っているだろうが、挨拶だけでもしたかったなあと死にかけた今だからこそマシロは思う。


初投稿となります。

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