第2章-1
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-カーメリ―王の間-
玉座には第11第目ユーラス国国王、レイン・ユーラスが座している。王の右側には武官でもある右大臣のグレッド・バレンティン、左側には左大臣が控えており、王の謁見を請うてきた法衣をきた男性が玉座前の階段の下に頭を垂れて控えている。
「ユーラス国王に置かれましてはますますご健勝のことと」
「ふむ。挨拶は良いが謁見の目的は例の勇者であろう」
法衣の男性の口上にユーラス国王は分かり切った様子で返す。
「流石の御慧眼でございます」
「これ程分かりやすいことはないがな。して左大臣。勇者は現在どの辺りで、今回の魔王との闘いはどれくらいで達する見込みか?」
王の言葉に左大臣と呼ばれた白髪眼鏡の男性は、眼鏡を正しながら答える。
「王国首都オイコットから出立して3か月弱ですが、ミサカニの森に入ったとの情報を右大臣配下より聞き及んでおります。魔大陸側もこちらの動向は確認しているようですので、勇者の動向も見ていることでしょう。ただし魔王の確認はされておりませんので、現状では最短でも半年は必要かと予想しております」
「とのことだが、他に何か情報は必要か?」
頭を上げ満足げな表情を浮かべた法衣の男は「いえいえ十分でございます」と返す。
「ではこれにて謁見は終了とする」
ユーラス国王の言葉を最後に、法衣の男性は一礼の後に踵を返し、王の間を後にする。
「教会は相変わらず、勇者と魔王の動向が気になるようだな」
「我輩には彼奴らの存在は薄気味悪く映りますなあ」
重低音の言葉に王はちらりと右側を見やる。
「ユーラス国の民や兵士たちが、右大臣のように忠義を示しておるのも事実ではあるが、どうにもできぬことに対して、時に目に見えぬ何かにすがろうとするのは悪とは言い切れぬ。確かに紅月教会の教義は見たこともない赤き鳥がユーラスを繁栄に導くとするものであるが、見えぬからこそそれが尊く感じられ、その尊さに追いすがろうとする者は少なくないのだよ」
「ユーラス国全体の国民は約2500万人、領土内の村々を併せても2550万人程度でしょうか。その内3割程度が赤月教に入信しております。彼らは病気や、老い、貧困といった苦痛をやらわげるために、教義を信じていますが、何より教会側もそれに手を差し伸べることで民の信頼得ている部分は大きいでしょう。悩みが解決せずとも、そこに安寧をもたらしてくれる存在は心のよりどころとなるものです」
ユーラス国王は苦言を呈す右大臣に言い聞かせるようにゆっくりとした口調で話し、左大臣も補足するように説く。両名の話に返す言葉のないグレッド・バレンティン右大臣は、その大きな体躯上下に動かし溜息をつく。
「教会の歴史はこの国より長い。一筋縄ではいかないその内部については、こちらも慎重に動向を探っておる。彼らの教義は真に正しいものなのかどうか、余の代で解明するかは分からぬが、少なくとも民に危害を与えない限りは静観するつもりでおる」
王の言葉にピクリと反応する左大臣は、誤魔化すように眼鏡を正し、法衣の男の去っていった扉を再度見つめ直す。
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