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初めての街ハーミット

大変お待たせいたしました。

拙い文章ですが最後まだ読んでいただければ幸いでございます。


 度重なる魔物の襲撃を全て返り討ちにしながら歩くこと2時間と少し、ハーミットまで残り10kmの所で立ち止まったシグルズは、エレインとゼスを呼び戻すために念話を使った。


『エレイン、ゼス、そろそろ戻ってきてー』


『分かった』『はーい』


 エレイン達が返事をしてから10分も経たない内に、シグルズが開いていたマップ上に2つの青い点が表示され、徐々にシグルズの元へと近づいてくるのが分かった。シグルズの位置は精霊契約を結んでいるゼスが常に把握しているため、別々に行動していても、こうして無事に合流できるのだ。


「ただいまー」「ただいま」


 戻ってきたゼスは、飛ぶ速度を緩めてからシグルズの元まで飛んでいくと、彼の定位置となっているシグルズの肩に座り、エレインは素っ気ない挨拶ながらも、シグルズの左隣に並び、自分の頭をシグルズに擦り付けていた。


「うん、お帰り。どうだった?」


 シグルズは両腕で抱きかかえていたバルドを右腕だけで抱きなおすと、左手でエレインの頭を撫でてやった。


「収穫は上々だったよー。エレインもそれなりに動けてたしね」


「うむ、私は満足だ」


 シグルズの撫でる手に、尻尾をフリフリと左右に動かしながら目を細めるエレインは、とても満足そうに頷いた。


「そっか、じゃあ素材出してくれるかな。アイテムボックスに移すから」


「はーい、一気に全部出しちゃっていいの?」


「うん、いいよ。ここで解体するからね」


「分かったー」


 素材と言ってもゼスは魔物の解体が出来ないため、ゼスの異空間に保管されている物は、全て魔物の死体そのものなのだ。その為シグルズが全て解体しなければならないのだが、完全解体の「自身が狩猟した」という条件は、精霊契約を結んでいるゼスや、眷属であるエレインとバルドが倒したものでも、シグルズが狩猟したと見なされるので、死体の数がどれだけあっても、このスキルのお陰で全く手間にならないのだった。本来ならこのスキルは一体ずつにしか発動できない物だったのだが、努力家のシグルズが試行錯誤の末に、ある程度纏まった範囲にあればまとめて解体できるようになったので、更に手間が掛からなくなったのは言うまでもないだろう。


「はい、これで全部だよー」


「これはまた、随分と狩ったなー」


 ゼスが異空間から魔物の死体を出し終えると、シグルズの目の前には大小様々な魔物が積み重ねられた大きな山が、幾つも出来ていた。


「あ、狩り過ぎの心配はないから大丈夫だよ。この辺りの魔物だとつまらないってエレインが言うから、森の近くまで戻って狩ってたんだ」


「森の近くには冒険者でもあまり近づかないからな、その分魔物の質もいいだろうと思ったのだ」


(確かに魔の森周辺の魔物なら問題ないか)


 魔物の死体を見る限り、魔の森の周囲10km以内にいるような強さの物ばかりだったので、ハーミットの冒険者が魔物を狩るのは最大でも魔の森から30kmは離れた所まで、ということをボールスから聞いていたシグルズは一安心した。


「うん、それならいいかな。じゃあ早速解体しますか」


「「はーい」」


 シグルズは死体の山に近づいていくと、メニューでアイテムボックス内の一覧表を開きながら完全解体を発動させ、解体してはしまう作業を淡々と繰り返していった。この時、使えない魔物の臓器や血などの不要なものは、全て物質変換によってミスリルやアダマンタイト等の鉱石に変えられ、無駄がないどころか途方もない利益を生み出していたのだが、シグルズ達にとっては何年も前からやっている事なので、エレインやゼスもこの事にとやかく言うことはなかった。


「よっし、終わったー」


 解体を続けること5分、あれだけあった魔物の死体は綺麗に無くなっていた。シグルズは一覧表に表示された素材を一通り見直すと、その数と種類に若干苦笑を浮かべながら、エレインと共にハーミットへと歩みを進めた。






「さて、もう街に着くわけだけど、ルールは覚えてるね?エレイン」


 他愛もない話をしながら歩き続け、土魔法で作られただろう高さ15m・厚さ5mの灰色の外壁に見合う鋼鉄製の門が見え始めたところで、シグルズは予め決めていたルールをエレインに確認をとった。


「他人の前で話すときは念話、姿は今のままだったな。主殿に危険がない限りは守るさ」


 話すことが出来る魔物は、高い知力を持った高ランクのものでも極めて少数なので、見つかったら大騒ぎになるのは間違いない。精霊を見る、または声を聞く事が出来るのは、精霊魔法を使えるものでもごく少数なので、普通に生活していればゼスの存在に気付く者はいないし、バルドも基本的にシグルズに抱かれて眠っているため、この二人は特に問題ないのだが、エレインは普通に喋るので、一応ルールとして作ったのだ。姿については他者を怖がらせないためと、単純に生活するときの大きさの問題からだ。


「うん、俺が傷つくことはまずないと思うけどね。その時は頼むよ」


「ああ、分かっている」


 当たり前のことだが、エレインやバルドは本来の姿の方が力を発揮できるので、危険な場合は姿を変える事を許可している。


 そうこうしているうちに門までたどり着いたシグルズ達は、幸いなことに並んでいるのが数人しかいなかったためなかったため、すぐに身元確認の順番が回ってきた。今は丁度13時を過ぎた辺りなので、この門を使う冒険者のほとんどが仕事に出ていることが理由だった。


「次の人、どうぞー」


 30歳位の金属鎧を着た茶髪の男性兵士が声を掛けてくる。


「こんにちはー」


「はい、こんにちは。身分証はありますか?」


 身分証は各種ギルドのギルドカードや、役所で発行してもらえる国民証の事なのだが、森で過ごしてきたシグルズが持っている筈がないので、当然首を横に振る。


「いいえ、持ってません」


「あらら、そうですか。身分証がないと銀貨5枚を頂くことになります。それから犯罪歴を確認するので、この水晶に手をかざしてくださいね」


「分かりました」


 シグルズはローブ内でアイテムボックスから銀貨を取り出し兵士に渡した後、兵士の横に置かれた机の上の水晶に手をかざした。


「はい、何もないですね。それじゃあ最後に、街に来た目的を教えてください」


 兵士が確認を終えたようなので、水晶から手を放したシグルズは簡単に答える。


「はい、ここ街には冒険者になるために来ました」


「冒険者ですか、ここは冒険者の街と言われる位の街ですから競争相手は多いですよ?」


 シグルズはフードを被ったままだったため、顔が見えていなかったのだが、兵士はシグルズの事を身長と声から少女だと思っていたので、冒険者と聞いて少しだけ心配していた。


「ええ、私には心強い仲間がいますから」


 そう言うとシグルズはエレインの頭を撫でて、エレインもシグルズに体を寄せていた。


「確かに、賢いお仲間がいるようですね」


 シグルズが身元確認を受けている間、ずっと大人しかったエレインを頭の良い犬だと思った兵士はシグルズ達を見て表情を和ませた後、一枚の紙を手渡した。


「これで、確認は終わりです。仮の身分証を渡しておきますので、冒険者ギルドで登録したらここ以外の門でもいいので返しに来てくださいね。今日から3日以内なら銀貨を2枚返金できますので」


「分かりました、ありがとうございます」


「はい、ではようこそハーミットへ。冒険者ギルドはこの先の通りをまっすぐ行ったところにありますので、頑張ってくださいね」


 兵士は笑顔でシグルズを通すと次に並んでいた者の対応に移った。


 門を通過したシグルズの目に映った物は、馬車が三台は余裕で通れる整備された石畳の道と、それに沿うように石造りや木造の家が立ち並んだ様子だった。道の端には露店が並んでいたり、幾つかの家の壁には武器や薬をあしらった店の看板がぶら下がっていて、武器を装備した冒険者らしき人達が多く出入りしているのが分かった。道を歩く人は獣人やエルフ、魔族と様々な種族がおり、その数も道の先が見えない程に多いので賑やかなことこの上ない。


「ふわー、凄いな。本物のエルフやらケモミミがたくさんいるよ……」


 冒険者ギルドを目指して道を歩くシグルズはフードの中できょろきょろと周囲を見回しながら一人感動に浸っていた。


『シグ、前見てないとぶつかっちゃうよー』


 ゼスが若干呆れた声で注意してやっと冷静になったシグルズは、ちゃんと前を見て歩くのだった。









最後まで読んでいただきありがとうございます。

次回 冒険者ギルド

ブクマありがとうございます。

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